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上司との付き合い方を、ゲーム感覚で攻略している若手社員がいた

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ある企業の若手社員研修を担当する機会があった。

その企業では、ゼネラリストを育てるという方針のもと、若手社員に短期間で様々な部署を経験させることを徹底している。1年で異動する社員も多く、他社と比較すれば、少し極端なジョブローテーション制だ。

ローテーションが奏功し、その企業にセクショナリズムは皆無であり、社員が全体最適を意識できる風土を形成している。

しかしデメリットもあり、それは異動する度に、若手社員たちは「新しい上司との付き合い方」を再構築しなければいけないということだった。

上司との関係構築で悩んでいる若手が多い中で、一際、仕事や会社を楽しんでいるように見える若手がいた。

その若手社員に興味を持った私は、研修後に話しかけてみた。

「異動が多くて大変じゃないですか?」と私。

「最初は戸惑いましたよ。ようやく上司とコミュニケーションが上手くとれるようになったと思ったら、すぐに異動になって、また新しい上司と付き合わないといけません。上司にも色々なタイプがいるので、報連相一つとってもやり方を考え直さないといけません。」

若手社員が続ける。

「先日も同期社員が1人退職しました。表向きの理由は、『親の体調がすぐれないので、実家の家業を手伝うために故郷に戻る』というものでしたが、実際は上司との人間関係が上手くいかず、それを助けてくれない会社にも嫌気がさしたから辞めたんです。」

家業を手伝うために止む無く退社する、は退職理由の方便としてよく使われる手だ。

「それは残念でしたね。」

「仲が良い同期社員だったので、ちょっとショックでした。私自身も人事異動でストレスがあったので、心が揺れました。」

一見楽しそうに見えた若手にも、迷った時期はあるようだ。

「最初は私も同じように悩んでいました。ただ、真剣に悩むと本当に疲れるので、最近はゲーム感覚で考えるようにしています。」

「ゲーム感覚ですか?」

「そうです。ゲームって、ステージとか、敵ごとに攻略パターンがありますよね。上司にも何かしらのパターンみたいなものがあって、パターンごとに攻略の仕方があるのでは?と考えるようになったんです。」

少し不謹慎かな、と感じでないでもなかったが、興味が湧いたのでそのまま話を促す。

「面白いですね。どんなパターンと攻略方法がありましたか?」

 

1.行き当たりばったり上司

「最初についた上司は、とにかく計画性がない人でした。期限ギリギリになってから仕事をふってくることが多く、仕事をやる側のこちらとしてはいつも時間に余裕がない状態でした。」

段取りが悪い上司は部下から嫌煙されやすい。

「あと困ったのは、言っていることがコロコロ変わることでした。こちらとしても上司の方針を尊重したいのですが、朝令暮改なのでどうして良いかわからず、困り果てることもよくありました。」

一貫性がない上司もまた、嫌煙される。

「その上司のことを怒りを込めて、【行き当たりばったり上司】と名付けましたね。ネーミングすると怒りがちょっと収まった気がして、そこから冷静にパターン攻略を考え始めました。」

「どんな風に攻略したのですか?」

「待っていても指示は来ないので、こちらから仕事を計画して、上司に提案するようにしました。とにかく先回りしてしまおうと。

でしゃばり過ぎは良くないのかな、と恐る恐るやってみたという感じでしたが、やってみたら案外上手くいきました。

上司に振り回されることもなくなりましたし、それどころか、上司に褒められたりすることもありました。色々な仕事を任されるようになって、これはいけるな、と。」

「攻略の仕方がわかったのですね。」

「はい。でも一番の収穫は攻略方法がわかったことではなく、攻略を繰り返すことで、上司との関係が良くなったことです。それに関係が深まるにつれて、上司の良いところが見えるようになったのは自分でも新鮮な発見でした。

計画性がないと言えばその通りなのですが、逆から見れば、柔軟な考えの持ち主で、ギリギリまで新しいアイデアを考えたいという思考の持ち主でもあったのです。

また、良いアイデアであれば年齢やキャリアに関係なく採用することにも気づきました。」

「まさにゲームみたいにレベルアップした感じですね。」

「そうなんです。失礼な言い方かもしれませんが、ゲームで言えば、最初は敵だったモンスターが、倒した後に味方になってくれるみたいな感じです。」

「上司はモンスターなんですね(笑)」

「今は心強い味方ですけど(笑)ゲームならばレベルアップがありますが、この上司を攻略して得た経験値は、『時間軸は人によって違う』ということと、『人には良い面と悪い面の両方がある』ということです。」

「ある程度コツをつかんでしまったら、他の上司にも適用できそうですね。」

「それが、そうでもなかったんですよ。次の上司は全く違うタイプで、全く違う攻略が必要でした。」

 

2.昔かたぎの職人上司

「2人目の上司は【昔かたぎの職人上司】でした。」

「何だか昭和の匂いがしますね。」

「行き当たりばったり上司のときは、私からの提案がどんどん通る状態だったので、同じようにしたのですが、見事にダメ出しをもらいました。何を提案しても、

『仕事がわかっていない』、『もっとよく考えろ』と言われるだけなんです。」

「成功体験が通用しなかったんですね。」

「そうなんです。最初は戸惑いましたが、ゲーム感覚で考えてみれば、同じ方法が通用しないのは理解できなくもないです。肉体派のモンスターには魔法でダメージを与えることはできても、魔法使い系には魔法が効かない、そんな感じで考えるようにしています。」

「職人上司の攻略パターンは?」

「とにかく『品質が大事』という考えの持ち主なので、そこに攻略の糸口があるという仮説でいきました。

とは言え、こちらも新しい部署に異動してきているので、仕事は覚えたての内容ばかりです。とにかく、一つひとつの仕事について質問して理解しようとしたのですが、これも駄目でした。

上司は、『自分で考えろ』、『仕事は見て覚えろ』と同じ台詞を繰り返すだけでした。」

「自分たちの時代は、教えてもらうのではなく、上司の背中を見て仕事を覚えたぞ!という、よくある話ですね。」

「そうなんです。前の上司は質問すれば、何かしら回答してくれたのですが、今度は違う。

言われた通り、見様見真似で吸収しようとしました。これで、ある程度は仕事を覚えることができたのですが、限界もありました。」

「と言うと?」

「いつも横で仕事を見ていられるわけではありませんから、アウトプットに形がないもの、例えば業者さんとのコミュニケーションの取り方とか、目に見えないものは直接見ないと、覚えることができない。でも口頭で教えてはくれない。」

「困りましたね。」

「攻略パターンとして、酒の席で武勇伝を聞いてみるとか、とにかくおだててみるとか、ノウハウを引き出そうとしましたが、なかなかうまくいかない。

最後に行きついたのは、その上司の『仕事上のこだわりを聞く』と、『仕事をやった結果に対する意見を聞く』でした。自慢話をするのは嫌いでも、こだわりは話してくれることがわかったんです。

パターンをつかんだら、あとは簡単でしたよ。職人だけに、こだわりを持って仕事をする相手には敬意を持つ傾向にあります。とにかく品質にこだわるようにしたら、次第に認めてもらえるようになりました。」

「なるほど。ここで得た経験値はどのようなものだったのですか?」

「そうですね。まず、『上司によって攻略パターンは違う』ですかね。(笑) 考えてみれば、当たり前のことなんですが。

他には、『人によってこだわるポイントが違う』とか、『仲間として認めてもらうためには、何かしらの通過儀礼みたいなものがある』といったことでしょうか。」

「なるほど。どんどん使える武器が増えてきましたね!」

「大分コツがわかったつもりでいたのですが、3人目は3人目で、それまでの2人と違う攻略が必要でした。

というのも、最初の2人はあくまで仕事や、仕事の進め方に攻略の糸口がありましたが、3人目はもっと根本的な部分、人間関係のあり方に大きな特徴がある上司でした。」

 

3.とにかくコミュニケーション上司

「3人目の上司は、とにかく部下である私との距離を近づけたがる、ちょっと面倒な上司でした。」

「距離を詰めるのは悪いことなんですか?」

「そうではないのですが…

とにかく毎日のように食事に誘う上司で、これはちょっと嫌でした。私だって、お互いのことを知るのは良いことだと思いますよ。でも、プライベートも大切なので、毎日のように夜まで上司と一緒いるのは本当にストレスでした。」

「毎日はちょっと極端ですね。」

「ですよね!上司がおごってくれるのですが、正直ありがたいとは思わなかったです。

最初は仕事があるとか、私用があるとか、色々な理由でかわしていたのですが、困ったことに断れば断るほど、しつこく誘われるような日々が続きました。

攻略方法を変える必要に迫られたので、落ち着いて考えてみることにしました。

冷静に考えてみれば、その上司はあまりお酒が強くないんですよね。ということは、飲み会に行きたいのではなく、私と深い関係を築くことが大切なのかなと。

そこで、飲み会にはいくけど、1回の飲み会で深い話をするようにしました。私としては、プライベートの時間が確保できれば良かったので、1回の密度を濃くして回数を減らす、という発想です。

あとは、上司に安心してもらうために、ことあるごとに、『上司は私のことを良く理解してくれている』、『本当に人間力のある上司だ』と、意識的に口に出すようにしました。

少しあざといかもしれませんが、こちらもプライベートを確保するのに、それなりに必死でした。とにかく魔法を唱え続けるみたいな感じで。

徐々に結果は出ました。食事に誘われる機会も減りましたし、深い話を結構しましたから、実際に関係は深まったように感じています。」

「距離感のとり方は人によって違いますよね。ちょうど良いところに収まって良かったですね。」

「本当にそうですよね。3人目の上司との付き合い方では、『距離感のとり方』、『相手の行動に惑わされず、相手の意図に焦点を当てる重要性』、そういった点でレベルアップしたと思います。

3人目は苦戦しましたが、意外なことに、4人目以降は対応に困らなくなりました。」

「それはどうしてですか?」

「基本的な攻略パターンが把握できたからです。それは、

  • 上司も完璧ではないから、こちらからも積極的な働きかけが必要である
  • 上司にも個性があり、それなりに尊重した上で働きかける必要がある
  • 上手くいかないときは色々試してみて良かったものを残す

といった感じです。

並べてみれば、普通のことだったんです。基本がわかれば、後は同じ作業の繰り返しですよね。」

「そのゲーム全体の攻略パターンが掴めたということですね。」

 

4.まとめ

実際の会話はもう少し続いたが、その若手によると他にも様々なタイプの上司がいたようだ。

  • 唯我独尊のアウトロー上司
  • 会社が全ての官僚型上司
  • とにかくヒステリック上司
  • 波間に漂う無気力上司

上司たちが少し気の毒だが、それにしても面白いネーミングを考えるものだ。

上司との人間関係に悩む若手社員は多い。なぜなら、若手社員にとってみれば、上司≒会社であり、その存在は決して無視できるものではないからだ。

深刻に考えるのも良いが、ときにはゲーム感覚で上司との付き合い方を考えてみても良いのかもしれない。

 
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/wataru.nakagawa.18(フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)

 

この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
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