「課題解決スキル」を身に付けるために必要な訓練とは

「課題解決」と銘打った研修をよく見かける。そして私自身も、前職においては企業へそういったたぐいの研修を企業へ提供していた。

課題解決スキルに対するクライアントの要望は大抵、以下のようなものだった。

「考える力をつけさせたい」
「問題に対処する力をつけてもらいたい」
「論理的な思考力を高めてもらいたい」

誠にまっとうな要望であるし、企業が社員に求める力であることもよく分かる。

だが「課題解決研修」がねらった通りの効果をあげるとは限らない。

例えば営業がこの「課題解決」の研修を受けた後、「売上が不振」という状況に対して、課題解決能力が高まったことで、現状を打開し、売上をあげる力がアップした、ということであれば良いのだが、そんな都合の良いことは通常起きない。

もちろん、研修の満足度としては、カリキュラムを練り上げることで高くすることはできる。

だが、肝心の「問題を解決する力」を身につけることができたのか、といえば、1日、2日、座学の研修をやったところで、効果はたかが知れている。

普通に考えれば、当たり前だ。「1日、2日の研修を受けただけで頭が良くなる」のであれば、誰も苦労はしない。

研修というものは、ほとんどの場合効果が短期的に、直接の成果が目に見えて出るものではない。

効果を求めるならば、隣について、できるまで訓練するしかない。課題解決スキルは「教わる」ものではなく、訓練で「鍛える」ものである。

では、その訓練方法はどのようなものなのか。

「課題解決スキル」は、一般的に想像されるよりも遥かに複雑で、以下のものから構成されている。

①課題設定
②課題解決のリソースを確保
③課題の優先度づけ
④タスクの遂行
⑤課題の解決策の効果検証
⑥解決策の再立案
⑦課題の見直し
⑧①~⑦の繰り返しをするための、当事者のモチベーションの維持

上で示すように、課題解決というものは本質的に「複合スキル」である。

例えれば「課題解決スキルを習得する」という行為は「野球を習得する」とよく似ている。

実践で使える課題解決スキルのレベルは、あたかも野球で試合ができるレベル、つまりボールの扱いから始まり、投球、守備、バッティング、ランニング、そして野球の戦術や戦略に通じるのと同じなのだ。

したがって、課題解決スキルを鍛えるために必要なのは、実際の課題を「正しい標準的な型」、すなわち上の①~⑧の工程を用いて解決してみることだ。

具体的には以下のような訓練プログラムを組むと良い。

 

1.課題設定

「何を課題とみなすか」は、課題解決スキルの中で最も難しい。それは、ある物事が課題なのか、それとも課題でないのかという判断は、客観的な判断基準が存在しないからである。

したがって、課題設定は「政治的な活動」ということができる。この課題はなぜ解決の必要性があるのか、それを上位者に効果的に示し、意思決定をしてもらうことが課題設定の本質である。

訓練プログラム 課題発見、課題プレゼンテーション、論理的思考力向上

 

2.課題解決のリソースを確保

「解決のための資源を予め確保する」のが、リソース確保である。

課題を認識していても解決に動けないのは、大抵がリソースを確保していないためである。

リソースは大きく2つある。1つは人的リソース。専門家の助力が必要であったり、手を動かしてくれる人が必要であったりする時に確保しなければならない。

2つ目は金銭的なリソース。外部の専門家にコンサルティングを依頼したり、必要な資料を購入したりする時に必要だ。

訓練プログラム 課題解決に必要な予算の立案

 

3.課題の優先度づけ

通常、課題は複数の「解決すべきこと」から成り立っているため、「どこから手を付けるか」を判断する必要がある。

これをだれにでもわかりやすい形でアウトプットしたのが、「タスク一覧」とそれから成る「スケジュール表」である。

タスクの一覧とスケジュール表には、誰がどのタスクをいつまでにやらなければならないのかが、明確に記されている。

訓練プログラム タスクの洗い出し、スケジューリング

 

4.タスクの遂行

通常、幾つかのタスクはアイデアを出さなければ遂行できない。

例えば「チラシをつくる」や「人を集める」などの行為がタスクに含まれている場合は特に問題となる。

「タスクが設定された後、実施のアイデアを出す」行為は、解決策を机上の空論で終わらせないために重要なステップである。

訓練プログラム ブレーンストーミング、討論会

 

5.課題の解決策の効果検証

もちろんタスクを遂行した後「やりっぱなし」はダメである。

「実行に移した施策の効果を検証する」事が必要だ。だが、「効果」をどのように判定すればよいのだろうか。

効果測定の方法はいくつかあるが、もっとも重要なのは統計的手法をきちんと学んだ上で、効果を判定可能な形でタスクを遂行することだ。

訓練プログラム 統計的手法

 

6.タスクの再設定と課題の見直し

残念ながら、大抵の場合、初期の施策は間違っている。データを見て再度、アイデアを出し、タスクを再設定するという行為を行わなければ、成果を出すことは難しい。

時には、そもそも、設定された課題自体が的外れだった、ということもよくあるため、場合により課題を再設定することも必要だ。

時に「撤退」や「中止」という判断もあるかもしれないが、それらも含めて訓練プログラムに含めるべきである。

訓練プログラム 撤退の意思決定

 

7.①~⑧の繰り返しをするための、当事者のモチベーションの維持

成果はすぐには出ない。だからリーダーや当事者は「やりつづける」という判断をしなければならないシーンが数多くあるだろう。

その時に重要なのが「自分たちのモチベーションをいかに保つか」だ。つまりモチベーションコントロールの技術を身につける必要がある。

訓練プログラム モチベーションコントロール

 

【まとめ】

課題解決のような複合スキルは、身に付けるために非常に大きな労力と、時間がかかる。

だが、現代の「知識労働」の本質がそこにあることもまた、事実である。

したがって、会社と人を成長させるためにはさけて通れないのが、上で紹介した「課題解決のための訓練」だ。

 

この記事を書いた人
安達裕哉
経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。世界4大会計事務所の1つである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事する。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。自身の運営するブログ「Books&Apps」は月間PV数180万以上。
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