「女性社員の活性化」を議論して気づいたこと

当初、「ジェンダー」として位置づけられてきた女性の社会進出ですが、のんびりやっている間に、「労働人口」の問題へと発展してきました。

平等、対等についての議論はなかなか奥が深く、手をこまねいていた会社が多いようですが、今では「働き手がいなくなる」といった物理的な問題として捉える会社が増えてきています。

各社制度変更、研修などを実施していますが、まだまだ女性が活躍しているという状態にはほど遠いというのが実情です。

当社で担当する研修でも、管理職研修でお会いする女性参加者は、多い会社でもテーブルに1、2名、少ない会社では参加者全体で1名、ひどい場合は全て男性管理職というケースも珍しくありません。

時代の要請を受け、当社でも女性活躍について研修で扱うよう依頼されるケースが多くなってきました。

当初は、「専門分野ではない」ということで丁重にお断りしてきたのですが、こういった他人事のような姿勢こそ、問題を生み出す一端ではないかと考えるようになり、ご依頼があれば管理職研修、中堅社員研修で部分的に扱うようにしています。

まだまだ学習、経験が必要なテーマではありますが、今回の記事では、研修参加者が女性活性化について議論している様子から気づいたことを書いてみたいと思います。

 

1.制度論だけではなく、自分たちができることも考える

女性活性化の議論が集中しやすいのは、やはり「産休」「育休」「時短」といったテーマです。

「制度がない」、「あっても活用できていない」といった議論が展開されます。出産を機に60%の女性が一旦退職するというデータもあるぐらいですから、制度面に議論が集中するのは当然の成り行きでしょう。何とかしなければいけません。

しかし、これらのテーマは制度変更はもとより、業務効率、利益率、組織編制など、大きなテーマに直結することも多いため、現場だけでは変えることができず、会社による「制度改革が必要だ」というところで、思考が停止しがちです。

「自分たちが何をすべきか」といった個別具体論になかなか行きつきません。

会社は会社で改革すべきなのは100%間違いありませんが、あまり大きな議論に収斂させてしまうと、具体的な変化を起こせないようにも感じます。

研修では、5テーブルあるとすれば、3、4テーブルは、「会社がこう変わるべきだ」という結論を出してお終い!という状況ですが、1、2テーブルは制度論を一通り話し合った後、「では自分たちは何をすべきか」まで進むテーブルが出てきます。

「休むと周囲に迷惑がかかる、という気持ちを何とか軽減できないか」
「長く休むと会社のことがわからなくなる、という不安を解消できないか」

といった気持ち面に焦点を当て、自分たちにできることを考えていきます。

例えば、浦島太郎のようになるのがコワイのであれば、

「産休中の女性社員と定期的に交流を持つようにして、職場の様子、業界トレンドなどを伝えるようにしてはどうか。」
「職場にいるメンバーも、今後の学習を兼ねて、子育ての様子を教えてもらってはどうか。」

といった話し合いです。今であればスカイプなど便利なツールも沢山ありますから、自分たちで取り組める行動案です。

無論、こうした工夫だけで大きな変化を起こせるわけではありませんが、産休を迎えるであろう女性社員にとっては、身近な仲間が真剣に考えてくれることは、心強いのではないでしょうか。

会社に改革を迫りつつ、自分たちも変わる。そうした姿勢があると、会社も動きやすいと思います。

 

2.本質論ではなく、具体論で考える

制度論の次に多いのは、本質論に回帰するような話し合いです。

男性管理職の発言に多いのが、

「ジェンダーとか言っているけど、本質はダイバーシティだろ。」
「要は、男性女性ではなくて、個を尊重すればいいんだろ。」

というものです。

全くその通りですが、もし本質に基づいて、個を尊重した働きかけができていれば、女性管理職が5%しかいないという状況にならないはずです。

女性活躍は、ダイバーシティの一部であると考えることもできますが、部分的に解決できていない問題を、さらに広げて大きな問題として考える、という論理展開は筋が悪いと思います。むしろ全然論理的じゃない。

本質は大切ですが、本質を確認するだけの話し合いになっていないか振り返ることも大切ではないでしょうか。

 

3.原理原則を状況に合わせて考える

多くの参加者が、制度論や本質論でワイワイやりとりする中、かなり具体的な行動について考えるテーブルもあります。

中でも面白いな、と思ったのが

「お茶くみは誰がやるべきか」
「コピー機のトナーは誰が代えるべきか」
「外からの電話は、誰がでるべきか」

といった議論です。些末なようで、なかなか奥が深いです。

こうした雑務を業務の一部とする業務職、一般職という区分はなくなりつつありますし、総合職として女性社員を採用しているのであれば、「男性社員も電話に出るべきだ」、と。

全くその通りであり、雑務を押し付けるような男性社員がいるようであれば、「誠にけしからん」ということになります。

一方で、反論のような意見も出てきます。

「雑務に女性男性はないが、役職による違いはあってしかるべしではないか。例えば、部長と一般社員がいたら、やはり一般社員がトナーを代えるべきで、給与・職責に基づいて動くべきだ。」

これも全くその通りです。

よく飲食店の経営者で、出社したら、いの一番にトイレ掃除をするという、現場の鏡のような方がいます。一方で、100店舗も展開するチェーン店の経営者が、朝から晩までトイレ掃除をしていたら、やはり違和感があります。

給与・職責に基づいた業務を行うべきだ、は概ね原理原則としては正しいのですが、女性管理職が5%しかいないという会社に適応して考えてみると、「雑用は概ね女性がやる」という結論に到達することになります。

この状況を端的に表現すると、「管理職じゃないんだから雑用をやれ、でも活躍しろ。」となります。

もはや、ジャイアン級の乱暴さです。

今の状況に大きな偏りがあるわけですから、状況を踏まえずに、原理原則を押し通すのはかなり無理があります。

(原理原則)×(状況)=(結果) であり、結果が間違っていれば、原理原則を唱えることに意味はありません。

多くの男性管理職が、

「トナーのありかを知らない、発注方法を知らない」
「お茶や、お盆がどこにあるか知らない」
「内線のつなぎ方がわからない」

という状況であれば、道のりは険しいかもしれません。

 

4.まとめ

今回のテーマに限らず、何か変化を起こす必要があるときには、「制度改革」「本質」「原理原則」といったキーワードが出てくることがあります。

しかし、実際に変化を起こしていくためには、「自分事」として考え、「具体的」、「状況」に合わせることが大切になってくると感じています。

まだまだですが、一つずつ自分の行動を疑うところから、学びを深めていきたいと思います。

 
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この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
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