ポジショニングで考える「管理職の心得」

中間管理職とはよくいったもので、管理職は会社と部下の中間に立ち、バランサーとしての役割を担う。

例えば、社長の顔色ばかり伺っていると、「あの人は会社人間だ」と部下から揶揄される。逆に、部下との距離が近すぎると、「あいつは部下に迎合し過ぎだ」と会社から駄目だしをされる。

バランスを要求される事柄は、立ち位置だけではなく、教え方など多岐に渡る。

例えば、部下に対する期待値が高すぎる管理職。部下を全く褒めないため、部下の目が死んだ魚の目のようになってしまう。逆に、期待値が低すぎてまったく指摘をしないというのも、業務に支障がでる。

二宮尊徳が語ったように、「5つ教えて、3つ褒めて、2つ叱って良き人とせよ。」ぐらいが、良い加減である。

どちらの側に寄り過ぎても駄目であり、絶妙なポジショニングが求められる。

しかし、ポジショニングはそれなりに難しい。

なぜなら、上から下から、「もっとこっちに寄って欲しい」と迫られ、板挟みになるからだ。また、「絶妙」なポジショニングは、組織で起こる出来事を肌で感じながら探すものであり、これといった正解がない。

ピタリという正解は難しいが、おおよその中間を探る方法はある。上限と下限、つまり極端にバランスを欠いたポジションを知ることが、その手掛かりになる。

そこで今回は、これまでに見聞きしてきた極端なポジショニングの事例を示し、そうした事態を避けるための考え方を、「管理職の心得」としてまとめる。

1.敬意の集め方

自分の腕を見せつけてしまう

管理職は部下に好かれる必要はないが、敬意を集める必要はある。あまり軽く見られると、指示が通らなくなるからだ。

しかし、尊敬されることを意識し過ぎて、部下に自分の腕を見せつけてしまうのも考えものだ。業務で部下を打ち負かし、会議で部下を論破し、飲み会ではいつも自分が話題の中心。「どうだ!見たか!」とやってしまう。

これを繰り返していくと、管理職が主役、部下が脇役となり、部下の目から輝きが消えていく。やり過ぎると部下が自信を失う。ときには部下に負けてやるのも、愛情である。

 

腕が錆びついてしまう

一方で、部下に全ての仕事を任せてしまい、気が付いたときには、自分の腕が錆びついてしまう人がいる。現場のことがわからなくなり、次第に的外れな言動が増えていく。

チーム全体で成果が出ていないときは、最前線に立ち、戦う姿勢を見せるのも管理職の仕事である。ときには、「どうだ!やればできるだろう!」とやって見せなければならない。

 

心得1

部下に負けてみせ、勝ってみせる

 

2.仕事の任せ方

自分1人で成果を出してしまう

管理職の仕事は、チーム成果の最大化を通じて、人を育てることである。みんなわかっているが、これが難しい。

責任感が強い管理職によくあるのが、自分1人で成果を出してしまうというもの。未熟な部下に仕事を任せていると、成果が出ないという焦りから、がむしゃらに先頭を走り、気が付いたときには自分が一杯いっぱいになってしまう。

任せるには、精神的・時間的余裕が必要である。余裕がなくなり、上手く任せられない。任せないから、部下が育たない。育たないから、1人で業務を抱え込んでしまう。そして、ストレスが溜まり飲み屋で部下の愚痴を言うことになる。

好循環を生み出すには、最初に「任せる」がくる。成果は後からついてくると思って任せるのが、管理職の第一歩である。

 

後ろで腕を組んで見ているだけになってしまう

逆に、部下に仕事を丸投げしてしまう人がいる。そのつもりはなくとも、結果的に後ろで腕を組んで見ているだけになってしまう。

自分としては「細い目で部下を見守っている」つもりが、部下からは「あの人寝てる?何しているのかな?」となる。部下の気持ちが離れているのに気づけない。

任せっぱなしにせず、助言し、支援し、ときには一緒にやることが管理職の仕事だ。

 

心得2

仕事は任して、任さず

 

3.部下との接し方

サークルの延長になってしまう

管理職は部下に好かれる必要はないが、嫌われてもいけない。人間関係が壊れるとチームが機能不全に陥る。

嫌われるのが怖くて、部下と友達になってしまう人がいる。あまりにもフランクな関係になると、チームに弛んだ空気が漂い戦えない集団となる。仕事を頼んでも、「えー、それ私の仕事ですか?」などと、軽口を叩かれることになる。

最低限の緊張感を演出することも、管理職の仕事だ。

 

部下を顎で使ってしまう

逆に、部下を兵士のように扱う人がいる。鬼軍曹よろしく、常に特攻を指示してしまう。「~せよ!」「返事はどうした!」といった言葉がフロアに響き渡る。

ひどい場合は、部下を顎で使い始める。雑用を丸投げし、「コピーしといて。」「あれ持ってきて。」など、部下をコマのように扱う。雑用を一緒にやると、会話が弾むことを知らないのである。

役割の上下は人間の上下ではない。

 

心得3

部下にはパートナーとして接する

 

4.指示・命令の仕方

会社のせいにしてしまう

管理職と言えど、会社の方針に納得できないことはある。決定前であれば代替案を出すこともできるが、決定後であれば黙々と実行しなければならない。

自分が納得していないことを、部下に上手く伝えられない人がいる。「自分も納得していないけど、会社の方針だから。」と言ってしまう。

ひどい場合は、会社を敵に回すことで、部下との連帯を深めるという愚行に走る。「駄目な会社だけど、一緒に乗りきっていこう!」といった発言が増える。仮想敵国を持つのは、連帯感醸成の常套手段ではあるが、こうした人は味方と敵の区別がつかなくなっている。

咀嚼、変換を行うために、中間地点に陣取るのが管理職である。それができなければ、もっとフラットな組織にしてしまえば良い。

 

メッセンジャーボーイになってしまう

逆に、常に会社の言いなりという人もいる。しかし、社長、会社も間違いは犯すから、現場の情報をもとに反論することも必要である。

部下と愚痴を言い合ってはいけないが、何の疑問も持たず滅私奉公するような人に、部下はついてこない。会社と命運を共にしながらも、自分の信念は大切にしなければならない。

 

心得4

連帯感の醸成は、前向きなテーマで行う
自分の信念を持ち、自分の言葉で語る

 

5.引き継ぎにおけるスタンス

前任者を否定してしまう

管理職の異動や、それに伴う引き継ぎというのは、何かを変える絶好の機会である。新天地に行く管理職とすれば、心機一転の機会であり、新しい管理職を迎えるチームとしても変革を起こす機会となり得る。

しかし、あまり力んでしまうのも考えものである。ハリキリ過ぎて、前任者のやり方をことごとく否定する人がいる。前任者を否定することで、自分を肯定しようとする。

心機一転、頑張るのは素晴らしいことだが、前任者のやり方を気に入っていた部下、前任者を尊敬している部下がいることも想定しておかなければならない。前任の否定が、部下の否定につながる。

まずは、良い点の確認から始めるのがセオリーだ。

 

前任者のやり方を変えない

逆に、慎重になり過ぎるがあまり、とりあえず現状維持から入る人がいる。

慎重さは、管理職に求められる資質の1つではあるが、何も変えないと部下から「誰がきても、うちのチームは一緒。」と思われてしまう。

人事異動は、組織活性化の手段として、裏目に出るリスクを承知の上で行うもので、打ち手としては大きなものである。絶好の機会を生かすためには、良い点を確認したら、次に改善点を考える。

 

心得5

前例の良い点は踏襲し、悪い点は改善する

 

6.全体のまとめ

ご紹介してきた心得だけを見ると、以下のようになり、並べてみると何てことはない。

  1. 「部下に負けてみせ、勝ってみせる」
  2. 「仕事は任して、任さず」
  3. 「部下にはパートナーとして接する」
  4. 「連帯感の醸成は、前向きなテーマで行う」、「自分の信念を持ち、自分の言葉で語る」
  5. 「前例の良い点は踏襲し、悪い点は改善する」

しかし、最初から「中間点」を示されても、ピンと来ないことがある。両端にある悪い事例を知ることで、中間を探るというのもときには有効である。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。
 
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この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
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