リーダーシップの開発は、若手社員から始めたほうが良い理由

リーダーシップ開発を、キャリアのどの段階で行うべきか。この点に関して、企業様ごとに考え方は異なるようです。

ある人事部長は「リーダーシップの発揮に役職は関係ない。若手社員であっても、集団で何かを行う際は周囲を巻き込む必要があるから、リーダーシップはどの階層の社員にも必要だ。であれば、早いほうが良い。」と言います。

ある営業部長は「リーダーシップは誰にでもあったほうが良いが、若手社員にはより実務に直結する知識やスキルを磨いて欲しい。リーダーシップ開発は、管理職になる手前ぐらいから始めれば良いのではないか。」と言います。

どちらの言い分にも理があり悩ましいところですが、実際にはどのように考えれば良いでしょうか。

そこで今回は、「リーダーシップ開発は、若手社員から始めたほうが良い理由」について書いてみたいと思います。

1.リーダーシップの有無は何で判断するか

どのようなスキル開発であっても、それが身に付いたかどうかの効果検証が必要ですが、リーダーシップの有無は何で判断すれば良いのでしょうか。

リーダーシップの定義は色々とありますが、簡単に言ってしまえば、

ビジョンを示し、そのビジョンに対してフォロワーを自発的に動かす影響力のこと

となります。リーダーシップとは、周囲に対する影響力のことです。

ですから、リーダーシップの有無は、リーダーが後ろを振り返ったときに、「自発的なフォロワーが何人存在するか」で判断することが可能です。

リーダーシップの要素には「素晴らしい人間性」、「すごい実績」、「ワクワクするようなビジョン」など色々ありますが、どの要素によるリーダーシップであれ、フォロワーが沢山いれば優秀なリーダーですし、フォロワーがいなければ「すごい実績」があっても、その人はリーダーではありません。

 

2.リーダーシップとヘッドシップ

周囲を突き動かす影響力が、リーダーシップだけであれば、話が単純ですが、実際にはリーダーシップと対極の力である「権限」でも、人は動きます。

権限による影響力を、「ヘッドシップ」と呼びます。

組織であれば、指示命令系統や権限・責任の所在をはっきりさせる必要がありますから、多くの組織にはヘッドシップを発揮する人が存在します。

ヘッドシップを悪く言う人もいますが、必ずしも悪いものとは言えません。民主的に話し合っても結論が出ないときには、スピード優先で、トップが権限を行使して意思決定する場面も必要でしょう。多人数の意見が正しいとは限りませんから、皆が反対するような意思決定を行う場面もあるでしょう。

実際の現場では、リーダーシップとヘッドシップが混在しており、その両方でフォロワーが動いていることが多いです。

 

3.権限を持っていないときのほうが、リーダーシップの有無がわかりやすい

管理職になると、権限を持つため、リーダーシップもヘッドシップも発揮できる状態になります。そのため、その管理職の部下が、権限によって動いているのか、リーダーシップによって動いているのかを見極めることが難しいです。

強いて言うなら、部下が嫌々ついてきていれば、それはヘッドシップによるものであると推測できますが、感情を顔に出さないある意味「大人」の部下が多いと、その見極めも難しいと言わざるを得ません。

ですから、リーダーシップの開発は、権限がない段階で行ったほうが、その有無を見極めやすいのです。

組織ごとに様々な事情があるとは思いますが、本気でリーダーを育てようと考えるのであれば、ある程度早い段階から行うほうが良いのではないでしょうか。

 

4.まとめ

権限を持つと、リーダーシップの有無が判別できなくなると書きましたが、実は例外があります。

それは、権限を持った人が別の部署に異動するか、部下が異動したときです。異動した瞬間に、その部下との人間関係が希薄になってしまった。その場合は、ヘッドシップ先行で組織を動かしていたことが証明されたことになるでしょう。

逆に、組織が変わっても、何かあればフォローしてくれるフォロワーがいる。それが本当のリーダーシップというものでしょう。

権限が及ばなくなったことで、自身のリーダーシップのなさに気づくのも、1つの体験としては良いかもしれません。実際に私も体験がしたことがありますが、なかなか寂しいものです。

こうした経験はリーダーシップ開発の糧になりますが、いつも都合よく人事異動があるわけではありませんし、私のように管理職になって数年後に気づくようでは少し遅いです。

できれば、若手のうちから、色々な経験を積ませ、リーダーシップ開発につなげてはいかがでしょうか。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
 
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