管理職に昇進させたが、成果が出せない人をどうすべきか?

「名選手は必ずしも名監督ではない」という言葉がある通り、プレーヤーとして一流でも、管理職としては卓越した働きができない、という方はよくいます。

もちろんこれはプレーヤーと管理職の求められる成果が違うことを原因とするものなのですが、日本では一般的にプレーヤーとしてのトップが管理職に昇進するため、頻繁にこのギャップが存在します。

  • 管理職にもかかわらず、人の育成に無関心
  • 管理職にもかかわらず、成績が良いのは自分だけ
  • 管理職にもかかわらず、全社ではなく自分の部署にしか関心がない

こういった管理職に悩む経営者の方は多いのではないでしょうか。いや、もしかしたら経営者よりも本当に悩んでいるのは部下の方々かもしれません。

そこで今回は、「昇進させたが、成果が出ない人をどうすべきか」についての処方箋を、手順を追って書きたいと思います。

 

STEP1 管理職とプレーヤーの仕事は違う仕事、と認識してもらう

まず最初にその方に認識してもらうべきは、「管理職」と「一般社員」の仕事は大きく違うという認識です。

管理職と一般社員の仕事は別の仕事です。

極端な話、競合他社の同一職位に転職するよりも、同一の会社の管理職のほうが違う仕事をしていると言っていいでしょう。

日本においては一般社員の中で比較的良い成績を収めた方をそのまま管理職に昇進させるケースが多いのですが、この昇進形態が逆に不幸を招いています。有能な一般社員は、その成果を出す力によって昇進したので、更にもっとうまくそれをやろうとするからです。

例えば、
営業のトッププレーヤーは、課長になるとさらに自分が売ることに力を入れます。
技術のトッププレーヤーは、リーダーになるとさらに技術を極めようとします。

これでは残念ながら管理職の役割をはたすことはできません。管理職の仕事の本質は、「自分ではなく、他の人に成果をあげさせること」だからです。

それを認識してもらえたら、次のステップです。

 

STEP2 管理職の仕事は何か、を理解してもらう

他の人に成果をあげさせることが、管理職の役割であると認識してもらったら、次にやるべきことは「そのためにどうするか」です。

それは大きく3つ挙げられます。

 

部下に成果の出る仕事のやり方を教える

部下に「これだけの成果を上げてくれ」というだけで部下が成果をあげることができるのであれば、何も言うことはありません。ですが、通常そんなことはありません。

部下にチャレンジさせるのであれば、適切なインストラクションが必要です。そのために「成果を出せるやり方」を編み出し、彼らにそれを教育する必要があります。

 

部下に一生懸命やってもらう

部下にやり方を教えたら、それをやりきってもらう、実行して貰う必要があります。確実に実行がなされるようにするのは、上司の役割です。

 

部下が成果を出せているかどうかを見て、評価する

部下が仕事を一所懸命やったからといって、成果が出るわけではありません。上司は成果が出ているかどうか、モニタリングを続ける必要があります。

成果が出ていない場合は、やり方を変えたり、部下から良いやり方を引き出したりすることで行動を修正します。そのために必要なのは、自らの柔軟性です。

そして、最も大事なのは「評価」です。一定期間ごとに部下のパフォーマンスを評価し、部下のキャリアにに責任を持つことも管理職の大切な仕事の一つです。

この3つを理解してもらったら、次に大事なことを伝えます。

 

STEP3 管理すべきは人だけではなく、仕組みも管理する必要があることを理解させる

「3つのやるべきこと」を理解してもらえれば、管理職の仕事は明確です。ですが、ここで一つ注意を喚起します。それは、「部下が上司の指示に従わないときにどうするか」ということです。

部下が言われたことを確実に実行できるのであれば問題はないですが、そういった社員も実は少数派です。

「実行してもらう」ために、適切なインセンティブ、例えばほめたり、叱ったり、金銭で報いたり、彼らの悩みを解決したりする必要があります。

「行動・実行しない部下」に対してガミガミ言ったり、脅かしていうことを聞かせようとしたりするのはむしろ逆効果で、一時的に効果があっても、上司が言わなくなれば元に戻ります。

また、業を煮やして部下に箸の上げ下ろしまで細かく指示を出す上司も居ますが、これも適切な行動とはいえません。

ここは、考え方を上司が変える必要があります。つまり「人」に対して働きかけるだけではダメで、「仕組み」を変えることで人の行動を変える、という働きかけが必要になります。

例えば「ナッジ」という考え方があります。

ナッジとは英語で「人をひじで軽く押したりつついたりすること」を意味します。

行動経済学と呼ばれる研究分野から出てきた用語で、選択肢をうまく設計したり、初期設定(デフォルト・ポイント)を変えたりすることで、人々に特定の(望ましい)選択を促すという意味合いがあります。

例えば、スーパーやコンビニで「今週のおすすめ」「人気・売れ筋NO.1」と書く事で、消費者の選択を自然と誘導することも「ナッジ」に含まれます。(参照 神戸大学大学院サイト) 

仕組みを変えれば、人の行動は変わります。KPIをセットしたり、成果を見えるようにしたり、ちょっとしたツールを提供するだけでも大きく行動は変化します。

「どうすれば皆が行動するか?やる気になるか?」を仕組みによって解決するのが、管理職の役割です。

それを理解してもらえたら、次に「ビジョン」の役割を理解してもらいます。

 

STEP4 ビジョナリーであるとはどのようなことか、を理解させる

管理職の方の多くは「自らのビジョン」を語れば人はついてくると考えています。実はそれはとんでもない誤解です。

多くの場合、管理職の持つビジョンに部下たちはほとんど興味がありません。興味が有るのは「自分のキャリアと会社が、どのように関わるか」なのです。

したがって、ビジョンを語ることは、経営者と管理職の夢を語ることではありません。ビジョンを語るとは、会社の行く末と、部下のキャリアを関連付けてあげる行為のことです。

会社がやりたい具体的到達点と、部下がやりたいことの関連を示してあげることが、ビジョンを語る事の本質です。

 

STEP5 改善の見込みが無い場合は、「元のプレーヤーに戻す」という判断をする勇気も必要。

ここまでくれば、管理職も自分の役割が見えてくるはずです。

人によっては「それはできない」という方も居ると思います。また「どうしても管理職の職責を果たせない。」という方もおられるでしょう。

そんな時は思い切って、処遇を変えずにプレーヤーに戻す、という勇気も必要です。

管理職で輝く人、プレーヤーで輝く人は別であることも多々あります。より成果が出せるようになることは、本人のプライド上も管理職に無理してとどまるよりも良いことでしょう。

 

【まとめ】

まとめると、つぎの5ステップが、「成果の出せない管理職」への処方箋となります。

  1. STEP1 管理職とプレーヤーの仕事は違う仕事、と認識してもらう
  2. STEP2 管理職の仕事は何か、を理解してもらう
  3. STEP3 管理すべきは人だけではなく、仕組みも管理する必要があることを理解させる
  4. STEP4 ビジョナリーであるとはどのようなことか、を理解させる
  5. STEP5 改善の見込みが無い場合は、「元のプレーヤーに戻す」という判断をする勇気も必要。

 

この記事を書いた人
安達裕哉
経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。世界4大会計事務所の1つである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事する。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。自身の運営するブログ「Books&Apps」は月間PV数150万以上。
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