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「短期間に問題を解決する素晴らしい改革案」がほとんど失敗する理由

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仕事柄、多くの会社の提案書や企画書を見るが、多くの場合 「短期間に効果が出る素晴らしい改革案」は、あまり成果を期待できない。

例えば提案書の「効果」にはこう書いてある。

「この制度を取り入れると、半年で社員のヤル気が高まり、人が成長し、業績が向上します」
「このシステムを導入すると、営業の機会損失が減って、3ヶ月で営業利益が向上します」
「この制度を取り入れると、1ヶ月後までにリアルタイムで現場で何が起きているかを把握でき、 クレームに対応する速さが50%向上します」

そして後ろのページには「我が社のクライアント事例」に大企業のロゴが並ぶ……という具合だ。

もちろんそれらはウソではない。実際に大きな効果が出た会社もあるのだろう。

しかし、それらを鵜呑みにして、制度やシステムを入れた結果はお世辞にも褒められたものではない。中にはひどい失敗も数多くある。

なぜ制度やシステムが、たとえ中身が良かったとしても「劇的な効果」につながらないのだろうか。その理由はとてもシンプルだ。

問題の真因は「人の意識」にある。

主なものは下の3つだ。

 

1.新しい物が好きな人は少ない

まず新しい制度やシステムへの抵抗は、心理的なものから始まる。人は、多くのものがかかるほど保守的になる。したがって、生活がかかっている仕事は、人が最も保守的になることの一つだ。

多くの人は新しいものが導入されようとしている時にまず思うのが、

「オレにどんな影響があるのか?」
「余計な仕事をさせられるのか?」

といったことだ。

明確な拒否ではない、不安である。そして、殆どの人は

「私に大きなメリットがないならば、とにかく動くな。静観するんだ。」

という心の声に従う。

ピーター・ドラッカーは著作「マネジメント」の中で以下のように述べる。

変化への抵抗の底にあるものは無知である。未知への不安である。しかし、変化は機会とみなすべきものである。変化を機会として捉えたとき、初めて不安は消える。

しかし、どんな組織にも変化を機会と捉える人物が少数派ではあるが存在する。

彼らをまず説得し、しかるのちに「抵抗もせず、変化に加担もしない、静観していた人々」に対して無知を解消すべく、情報提供と対話をできるかぎり行う。

3ヶ月でこれらのことを済ませることは、かなり小規模な会社であっても難しいだろう。

 

2.「得をする人」と「損をする人」、そして「ちょっとだけ得をする人」が争う

さて、多数の人々に変化の内容が伝わったとする。

彼らの多くは「得をする人」の存在と「損をする人」の存在を知る。

「損をする人」は場合により激しい抵抗を見せるだろう。場合によっては派閥抗争に発展することもある。「抵抗勢力」と名付けられ、時として攻撃の対象となる。

だが一般的に「損をする人」の激しい抵抗はそれほど問題にならない。なぜならば「損をする人」は社内での立場が低いことが多いからだ。変化は多くの場合、既存の「怠け者たち」を排除することをその中に含み、彼らは堂々とそれに反論できない。

そうではなく、問題は「ちょっと得をする人」と「大きく得をする人」の争いである。

なぜ得をする人達同士が争うのだろうか。

こんな実験がある。

「心に抱く不公平感と身体の痛み、脳で起きていることは似ている」

神経経済学から生まれた最後通牒ゲームというものがある。

AさんとBさんで1000円を分ける。

先に1000円をAさんに手渡し、どんな配分で分けるかはAさんに委ねる。

Bさんは受け取るか、受け取らないかを決めることができる。

どんな配分であれ、Bさんが受け取れば互いの収入になる。

もしもBさんが受け取りを拒否すれば、1000円は全額没収されてしまう。

理屈上、Aさんが999円を手元に残して、Bさんに1円だけ渡すこともできる。1円だって立派なお金、ゼロより得なはずである。

ところが実際には、ほとんどのBさんは受け取りを拒む。

それどころか実験では、Aさんが300円をBさんに渡すとしても、5割以上のBさんが受け取りを拒む結果になるそうだ。

参照:ハフィントン・ポスト

これは机上や実験室だけでの話ではない。

あるシステムや制度の導入によって「多く得をする人」が出る場合、「ちょっと得をする人」は「これは公平ではない。機会平等に反する」と、それに反発する。

彼らは真面目で、よく仕事もする。それゆえに、その反発は無視できない。彼らは制度ではなく、「不公平」に反発しているのだ。

新しい制度やシステムは、「特定の誰かが大きく得をすることが明らかな状態」では導入しにくいのである。

この調整に更に時間がかかる。

 

3.人は「すぐに効果が出る」と謳うものを信じない

人は「即効性のあるもの」を基本的には疑う。

「また同じようなことになるのではないか」
「魔法はないよね」
「コツコツとやることが大事だよね」

そのような「努力」を抜きに成果が出るという言葉には罠があると多くの人は思う。

例えば、

「飲むだけでみるみる痩せる」
「1週間でお肌がつるつる」

といった謳い文句をどれくらいの人が信じるだろうか?

「キャッチコピーはウソではないにしろ、誇大表現が使われている」

という価値観を持っている人は多い。

人は「努力によって得たもの」には価値を置くが「簡単に得たもの」には重きを置かない。したがって「短期間で劇的な効果」を社内の人に信じさせるほうが、逆に難しい。

「時間がかかり、努力が必要だけどやりましょう」のほうが、かえって話の信憑性が高い。

 

4.まとめ

人の意識にうったえることと、システムや制度の導入を同時に進めるには、次の3点に配慮する必要がある。

  1. 無知を解消すべく、説明と説得を行う
  2. 導入に際しての「不公平」を解消する
  3. 時間をかけてじっくりやりましょう、の方が信用される

「一挙に問題を解決する素晴らしい改革案」がほとんど失敗する理由は、その解決策そのものが問題であるわけではない。

人の心への配慮が不足していることがほとんどなのだ。

 

この記事を書いた人
安達裕哉
経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。世界4大会計事務所の1つである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事する。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。自身の運営するブログ「Books&Apps」は月間PV数150万以上。
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