PDCAサイクルに合わせて部下のモチベーションを上げる方法

部下のモチベーションをどのように上げるか。管理職にとっては永遠のテーマの一つです。

モチベーションは本来、自分自身でコントロールすべきものですが、部下のモチベーションが低いと組織全体のパフォーマンスに影響が出るため、管理職としては対応せざるを得ません。

多くの管理職にとって関心が強いテーマでもあるため、古くから様々な研究がなされてきました。

古くは動機の源泉を探るものとして、

  • マズローの欲求段階説
  • マクレガーのX理論Y理論
  • ハーズバーグの動機付け・衛生理論 (二要因理論)

といったものや、動機付けの方法論を探るものとして、

  • マクレランドの欲求理論
  • 目標設定理論
  • 公平理論
  • 期待理論

といったものが研究され、現在の人事評価をはじめとした様々な制度の楚となっています。管理職研修で一度は目にしたテーマ群ではないでしょうか。

しかし、どれも理論やテーマ性を重視する余り、管理職が日常的に実践するためには、テーマとして大きすぎるため、咀嚼し自分なりに整理しなければ使えないものが多いです。

例えば、マズローの欲求段階説の第四段階にあたる「自我・尊厳の欲求」。

他人から尊敬されたい、注目されたいという欲求を意味しますが、部下の欲求を満たすためにどうすれば良いか、管理職が改めて考えなければなりません。また、日々の仕事には誰からも注目されない地味な仕事も沢山あるでしょうから、注目を集めよ、と言われても創意工夫が難しい場面もあります。

管理職は日々のマネジメントに追われているため、これらのモチベーション理論を常に意識しながら働くことは至難の業です。

日々の仕事に沿ったモチベーションの上げ方として整理することができれば、理論の実践度も上がるのではないでしょうか。

そこで今回は、マネジメントの基本であるPDCAサイクルに沿った形で、「部下のモチベーションを上げる方法」を書いてきます。様々なモチベーション理論をかいつまんで、時系列に並べ直したもの、と考えてください。

1. PLAN:計画段階の動機付け

この段階で部下が持ち得る欲求を整理すると、以下のようになります。

(全ての部下が、ここに書いた全ての欲求を持つわけではありませんが、想定しておきいつでも対応できるようにしておく必要があります。)

  • 全体像を知りたい
  • 参画して意見を述べたい
  • 意見を認められたい
  • 能力に応じ、重要な役割を担当したい
  • やりがいのある目標に挑戦したい

計画段階の動機付けで難しいのは、目的や目標を逐一部下と話し合うと、コミュニケーションコストがかかるという点です。また、部下の意見に関わらず推し進めなければいけない計画もあるでしょう。

しかし、PLANはマネジメントサイクルの出発点であるため、ここをショートカットすると後工程に影響が出て成果が出にくくなるだけです。どこにコストをかけるか、一考する余地はあると思います。

 

2. DO:実行段階の動機付け

DO段階で持ち得る欲求は以下の通りです。

  • 信じて任せて欲しい
  • 権限を移譲して欲しい
  • 努力を認めて欲しい
  • 困ったときは援助や指導をして欲しい
  • 周囲との競争に勝ちたい
  • 皆で協力して頑張りたい

この段階で難しい点は、上司と部下の欲求が相反することです。

上司は、成果が出るように進捗把握を徹底し、小刻みに軌道修正しなければなりませんが、部下は「細かいことを言われたくない」という欲求を持っています。

さらに言えば、部下は「思い切って任せて欲しい」けど、「困ったときは助けて欲しい」といった、一見矛盾するような欲求を合わせ持っていることが多く、上司としては、やり難い場面に遭遇することになります。

上手く両立させるためには、DO段階の鍵となる報連相を、部下にとって有意義なものにし、楽しくテンポよくマネジメントサイクルを回していくスキルが求められます。

長々とした報連相や、詰めるような報連相では部下に毛嫌いされるため、「テンポの良さ」、「ユーモア」や「多少の寛容さ」が必要とされる場面です。

 

3. CHECK:評価段階の動機付け

この段階で部下が持ち得る欲求は以下の通りです。

  • 成果や評価を知りたい(やりっ放しにしないで欲しい)
  • 過程や努力も重視して欲しい
  • 結果を認めて相応の報酬が欲しい
  • 公平に評価して欲しい

CHECK段階で気をつけなければならないのは、ここを失敗すると上司と部下の信頼関係が壊れてしまい、次のPDCAサイクルにも影響が出るという点です。PLAN段階同様、動機付けの成否がマネジメント全体に影響してきます。

人事評価制度の形骸化を指摘し、スリムに評価制度を運用していく風潮もあるようですが、制度論とは関係なく丁寧に実施しなければなりません。「ツール(制度)が悪いから、あんまり頑張らなくて良い」は、とても乱暴な理屈です。

評価はモチベーションの肝です。どのモチベーション理論にも、何かしら評価に関するエッセンスが入っているのは、偶然ではありません。

 

4. ACTION:対策段階の動機付け

対策段階では、以下の欲求を持つことが想定されます。

  • 成功、失敗の原因を把握したい
  • 効果的な対策を練りたい
  • 自分の評価に関わらず意見が言いたい
  • 上司や会社も反省して欲しい

ここで注意すべきは、「自分の評価に関わらず意見が言いたい」という点です。「結果を出していない人は黙っていろ」という風潮を作ってしまうと、利益至上主義が蔓延し、派閥形成や不正につながります。

自分(部下)も真摯に反省するが、上司や会社も真摯に反省するという風土を形成し、皆で「成果」と「責任」を分かち合う組織づくりをしていくことが大切です。

 

■ まとめ

1つひとつを見ていけば、わかっていることも多いと思いますが、PDCAサイクル全体となると、留意すべき部下の欲求はそれなりに多いことがわかります。

このように、既知のモチベーション理論を自身の業務に組み込むことで、漠然とした理論を具体化し、抜け漏れなく対応していくと良いでしょう。

部下の欲求リストを改めて眺めると、こう思う管理職がいるかもしれません。

「やりがいのある目標に挑戦したい」という部下だったら、マネジメントも楽だが、いつも低い目標を申告してくる。

部下は、欲求リストにあるもの全てを同時に持っているわけではありません。部下の1人ひとりがどの欲求に目覚めているか発見し、そこを伸ばしていく。それがモチベーションのマネジメントではないかと思うのです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。
 

この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
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