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ベテランのモチベーション低下に手を打つ

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こんにちは。株式会社PISのブログからお届けしています。

若くしてチームリーダーや管理職に昇進すると必ず出てくるテーマが、年上の部下であるベテラン社員との付き合い方です。

「自分よりも年上なのに、セルフモチベーションもできない。」
「あまり動いてくれないのに、自分の方針には口を出してくる。」

若くしてベテラン社員のマネジメントを託された方の中には、このような感想を持ったことがある方も多いのではないでしょうか。

役職と年齢の逆転現象。

一昔前までは、こうした経験ができるのは昇進スピードが速い若手社員だけであり、ある意味贅沢な悩みでした。

しかし今日、少子高齢化が加速したことや、不景気だった時代に採用を絞ったことが原因で、単純に人材の層が薄く結果的に昇進スピードが速くなってしまうことがあります。

今後ますますこの傾向は顕著になることが想定され、若いチームリーダー・管理職がどのようにベテランに対応していくかというのは大きなテーマになっていくでしょう。新任管理職研修で、このテーマを扱うときのウェイトも既に変化してきているように感じています。

そこで今回は、ベテラン社員のモチベーションをどのように維持向上していくかという点について考えてみます。

かく言う私も、組織事情により能力は高くなかったものの、若くして多くのベテラン社員を任される立場になったことがあります。その時は失敗の連続でした。いや、失敗しかなかった。自戒の念を込めて。

ベテラン社員に対する基本スタンス

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長幼の序を心得、尊敬の念を示す

「役割の上下が人間の上下ではない。」

新任管理職研修でよく紹介している言葉です。

仕事上の役割は上かもしれないが、それが人間の優越を決めるものではないので、勘違いをせずに謙虚な気持ちを持って部下と仕事をしましょう、という意味です。

この考え方は仮に、部下であるベテラン社員より能力面で優秀であったとしても大切な考え方です。仕事はほどほどであったとしても、プライベートでは地域に多大な貢献をしているかもしれませんし、家庭では素晴らしい親かもしれません。仕事における能力だけで人間の優劣を決めて、ベテラン社員に上から目線で物を言うのは恥ずかしいことです。

労働における価値観も多様化しています。仕事ができたとしても昇進を望まないベテラン社員もいるでしょう。仕事上の能力すらベテラン社員よりも優れていない若手が昇進してしまうことがあり得ます。

長幼の序。失われつつある価値観ですが、反比例する形で、今後ますます必要になってくるでしょう。

 

ベテランに対して安易に成長を促さない

若手管理職から見たときに、全くモチベーションのないベテラン社員や、成長が止まってしまっているベテラン社員もいるかもしれません。

「自分より歳上なのに何だ!」と不満に思うこともあるでしょう。

私自身、人間力が低いのか、自分より経験豊富な先輩社員がだらしない言動をしていると、許せない気持ちを持ってしまうことがあります。立てて欲しいのであれば、それだけの理由を作って欲しいと。

だからといって上司風を吹かせて、安易にベテラン社員に対して成長を促したりしてはいけません。

何事も想像力が大切です。自分よりも10歳の20歳も離れた若い人間から、「モチベーション上げろ!もっと成長しろ!」と言われてやる気になる人間がどれだけいるでしょうか。

先日ある研修で参加者から頂いた質問です。

その参加者の方は、65歳の定年を終えて再雇用で会社に採用されたベテランで、確か67歳だったと思います。

「質問してもいいですか?私はまだ成長しないといけないのでしょうか?」

その方は冗談のつもりで発言されましたので、その場では大きなお笑いが起こりましたが、あながち笑いごとでもないように感じています。

というのも、ベテラン社員としては定年で退職したいと言う意向を持っていたとしても、会社側がそれでは困ると言って引き止めるケースもかなり増えてきているからです。

他にも様々な事情で今のポジションにいるのです。会社のためにと思って頑張っているベテラン社員に対して、モチベーションが低いのはおかしいんじゃないか!等と安易に指摘するとモチベーションが下がってしまうので注意が必要です。

また、この種のコミュニケーションは相手の尊厳を傷つけるため、取り返しがきかないことが多いです。尊厳はモチベーションの大前提にあるものですから、小手先のモチベーション向上テクニックに走る前に、よく考えておきたいところです。

 

そのベテラン社員に合った役割を演じるよう丁寧に依頼する

ミーティングで管理職とベテラン社員の意見が食い違ってしまい、収集がつかなくなる。こうした場面に遭遇したことがある人は多いのではないでしょうか。

ベテラン社員が若手管理職に対して反発をしてしまうのは、自分の居場所を感じることができていないからです。もっと自分の発言に敬意を示して欲しいという気持ちが少なからずあるものです。

一般的に考えて、ベテラン社員は若い社員よりもいろいろな経験をしていますから、自分なりの意見を持っていたとしても何ら不思議ではありません。

多くのベテランは、若手管理職に遠慮して発言を控えるようにしています。たまに、少しおせっかいな気持ちを働かせて良かれと思って発言したところ、議論が変な方向にいってしまう。管理職の邪魔をするつもりはなかったのですが、引っ込みがつかなくなり議論に及んでしまう。

ベテラン社員は、こうした失敗を何ともやりきれない気持ちで振り返ることになります。そして、次のミーティングでは発言をしなくなる。発言をしないから、周囲からモチベーションが低いと言われてしまう。もうふんだりけったりなわけです。

そんなベテラン社員の気持ちも知らず、若手管理職は若さ故にベテラン社員と真っ向から対決してしまいます。

そんなことを何度か繰り返すうちに、お互いの信頼関係が崩れていきます。そしてそれを横目で見ている他のチームメンバーがチームワークを感じることができなくなる。2人の人間関係の問題が、より大きな問題につながっていく。組織ではよく起こることです。

ベテランとの非生産的な議論をしないですむように、常日頃からチーム内でどのような役割を演じて欲しいのか、丁寧に依頼しておくことがポイントです。自分の対して敬意を持っている若手からの依頼は、断りにくいものです。

そのベテランの得意分野や長所を生かすことができるテーマで、何かしらのリーダーシップを発揮するよう依頼するのが良いでしょう。期待役割や管理職の意図に沿った発言であればチームにとって歓迎される内容になるでしょうし、ベテラン社員も自由に発言できるため、モチベーション向上につながるでしょう。

 

ベテラン社員の長所を探す

長所を探すことが大切だ。こうした意見に対して、「それはわかっていますが、そのベテラン社員には短所しかないんですよ。」という方がいます。モチベーションが低いベテランに対して、こうした気持ちを持ってしまうのも致し方ありませんが、一度冷静に考えてみてはどうでしょうか。

影があるのは、光があるからです。どんな物事にも両面がありますから、短所しか存在しないのではなく、短所しか見ようとしてないだけです。長所、短所は裏表の関係で、誰にでも存在する個性の形です。別の角度から見るようにしましょう。

 

より上位者の若手チームリーダー・管理職に対する基本スタンス

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能力以外のことが理由で、役職と年齢の逆転現象が起こることはあります。

しかし、若手管理職のより上位にあたる方、例えば部長や取締役が、「お前はたまたま管理職に抜擢されたんだ!だからあんまり調子に乗るなよ!」と若手管理職に言ってしまうと今度は別の問題に発展します。

部長や取締役としては、ベテランを守るためにした発言かもしれませんが、今度は若手管理職のモチベーションが下がってしまうことになります。

理屈としてはこんな簡単なことですが、実際は案外難しい事のようです。

というのも、部長や取締役が昇進を重ねた時代は人が多かったため、実力で役職をつかみ取ったと言う自負を持っている方が多い。そして、その自負が言葉の端々に出てしまうのです。

自分は実力で今のポジションを勝ち取ったんだ!という自負は大切だと思います。しかし、だからといって若手管理職のモチベーションを下げて良いということにはなりません。

若手管理職のより上位にいる役職者は、自分とベテラン社員とのあいだで、若手管理職が板挟みになってしまっていないか注意する必要があります。

 

能力特性に応じた役割の設定

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モチベーションが低いベテランにも、様々なタイプが存在するため、相手に合った役割をお願いする必要があります。そこで、能力特性でベテランを分類し、それぞれの役割を考えてみましょう。

能力特性は、人間力とスペシャリティー(専門性の高さ)の2軸で見ていきます。

 

休眠タイプ:人間力、スペシャリティーの両方を持っているベテラン社員

モチベーションが低く、自分の部下に甘んじているベテラン社員の中に、そんな優秀な人はいないと思うかもしれませんが、あり得る話です。

業績不振で一時的に降格している、所属していた部署、子会社、プロジェクトが消滅した、プライベートで問題を抱えておりフルパワーで働けない、体調不良など、少し考えただけでも沢山理由があるでしょう。

本来やればできるわけですから、休眠タイプと呼べば良いでしょうか。

ある意味、ゆっくり寝ていて頂ければ良いのかもしれませんが、本来できる人間ですからプライドは高く、若手管理職の指示・命令に納得できないこともしばしば。

休眠タイプを変な起こし方をすると、手ごわい敵になってしまいます。人間力もあり、スペシャリティーもあるわけですから、敵になってしまうとチームが分裂してしまいます。

そのベテラン社員が抱えている事情にもよりますが、できる範囲で思い切って、大きな仕事を任せたほうが良いでしょう。小さな仕事だけお願いするとモチベーションはさらに下がるでしょう。また、人間力もあるため、仕事だけではなく、部下の一部も預けるぐらいの気持ちで丁度良いと思います。

分裂してしまうのではなく、意図的に小さなチームを作ってしまうという感覚です。

休眠タイプがベテラン社員に対して占める比率は小さいですが、今後は少しずつ比率が上がっていくと思います。

 

ご意見番タイプ:人間力はないが、スペシャリティーはあるベテラン社員

このタイプはある程度、ボリュームがあるでしょう。

ご意見番タイプの厄介なところは、人間力がない分、自分のチーム内におけるポジションを気にするというところです。自分の居場所を作るために、スペシャリティーをフル動員してきます。結果的に、ミーティングが長くなったり、仕事が過剰品質になったり、新入社員にくどくど説明したりして、生産性に影響を及ぼします。

それだけならまだ良いのですが、人間力がないのに色々な場面や人に干渉してくるため、チームメンバーが困惑します。頑張って指導的立場をとっているのに、自分から人の気持ちが離れていく様子を感じとり、ますます意固地になる傾向があります。

ご意見番タイプには、まさにチームのご意見番をお願いし、リーダーである若手管理職の参謀をお願いすると良いでしょう。「自分にはスペシャリティーが足りないので、自分に知恵を授けてください。」と頼るのです。部下育成を任せにくいため、自分自身の補佐をしてもらうというところがポイントです。

チーム方針や指示の中に、ご意見番からの助言を盛り込んで、立ち位置を確保してあげると良いでしょう。スペシャリストなだけに、自分の考えが皆に認められるとモチベーションも上がっていくでしょう。

ご意見番タイプは、時間に余裕があると干渉を繰り返すので、工数が余らないようにタイムリーに業務を依頼していきましょう。ただし、無下に大量の業務を渡すと、人間力がないだけに愚痴を言ってくることがありますので、依頼の仕方にはあくまで注意が必要です。

「自分には難しいので、何とかお願いします。」という感じで、常に依頼スタンスを崩さないようにすることが大切です。

 

良い人タイプ:人間力はあって、スペシャリティーがあまりないベテラン社員

良い人タイプも、ある程度ボリュームがあるでしょう。

スペシャリティーがないのは困ったもので、業務をお願いしても品質不足で手戻りが発生するところが悩みのタネ。丁寧に修正を依頼するも、修正頻度が高くなるにつれて、若手管理職がイライラしてしまう。

良い人だけに、若手管理職の暴言ともとれる乱暴な指導にもキレることはありませんが、その様子を横で見ている他のチームメンバーの心境に注意が必要です。

若手管理職:仕事はできるかもしれないが、悪い人。
ベテラン社員:仕事はできないかもしれないが、良い人。

他のチームメンバーの気持ちが自分(若手管理職)から離れていかないように注意しましょう。

良い人タイプなだけに、チームメンバーの気持ちの部分のフォローをお願いすると良いでしょう。管理職になると、部下の気持ちが直接自分の耳には入ってこないようになります。そうしたときに、良い人タイプにパイプ役になってもらい、情報収集や対応をしていくということです。

人間力があるタイプですから、「人に関すること」で頼りにされると、頑張ってくれるでしょう。管理職との関係が良好になってくると、様々な業務を率先してやってくれるようになります。

 

空気タイプ:人間力、スペシャリティーともにないベテラン社員

モチベーションが低くて、人の面倒も見れなければ、専門性もない。辞めて頂くしかないような気もしますが、一度冷静に考えてみましょう。

ある経営者と話していたときのことです。こういう空気みたいな人は辞めて頂くべきではないかと発言したところ、示唆に富んだ例え話をして頂きました。

「並々とお湯が入ったお風呂と、組織は似てるんだよね。お風呂の栓を抜いて、水位が低い部分のお湯を抜いたとしよう。次第に水位が低くなっていき、高い場所からお湯がなくなる。

組織も似ていると思うんだよね。

組織で言うなら、出来の悪い社員に退場してもらうということだね。そうすると、その出来が悪い社員がやっていた仕事を次に出来が悪い社員が担当することになる。それを最後まで繰り返していくと、一番優秀な人は、二番目に優秀な人の仕事をやることになる。一番優秀な人がやっていた仕事は誰がやる?結果的に組織力は下がるんだ。

だから、出来が悪い社員がいたからと言って、安易に退場させたらお風呂の栓と同じことが起こってしまう。

そして面白いことだが、栓を抜いて一番下のお湯がなくなったところで栓をしても、その時点で一番低いところにあるお湯は、残った社員中では一番出来が悪い社員ということになる。そんなことを延々と繰り返して、組織が良くなるとは思えない。

確かに、上から新しいお湯を注ぐという手段はある。毎回新しいお湯を、抜く量より多くすれば水位は下がらないかもしれないけど、そういう考え方をしている会社に、就職したい人ってどれぐらいいるのかな。

であれば、もう一度、その出来が悪い社員の様子をじっと観察する。確かに仕事はできないし、だらしないかもしれないが、ユーモアのセンスがあって、その人がいるだけで組織が明るくなるっていうこともある。組織のトップたるものは、常に人材の長所に目を向けるべきだと思う。」

多種多様な人材をマネジメントできる人が優秀なリーダーです。若手管理職で将来は大きな組織をリードしたいという方は、少し考え直してみると良いかもしれません。

 

「ベテランのモチベーション対策」 まとめ

前半と後半で少し論調を変えてみました。前半は姿勢に関する内容であり、後半はテクニックの話です。両方できるにこしたことはないのですが、あえて選ぶなら姿勢、テクニックのどちらが大切でしょうか。

この文章はカフェで書いているのですが、書いているそばから、隣で若手管理職とその部下であるベテラン社員らしき2人が会話をしています。30代後半の管理職と、50代半ばぐらいのベテラン社員。

「最近の若手に対する指導はなっていないよね!駄目な奴が多くってさー。そう思わない?」

という声が聞こえたので、振り返ってみると、それは若手管理職側の発言でした。丁寧な敬語で応答するベテラン社員の方の気持ちはいくばくか…。

長幼の序。大切にしたいものです。テクニックについて書いた内容、論調は削除、修正したほうが良いかもしれませんね。

最後までお読み頂きありがとうございました。

 

この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。

 

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