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上司と部下が、強固な親子関係で成り立っている会社は危ない

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family organization

長くコンサルティングや研修をしていると、「この会社はこれからも成長しそうだな」とか、「この会社はちょっと危ないな」といったことを感じる場面があります。

厳しい展開が予想される会社のシグナルとして、例えば、「マーケットが縮小しているのに、打開策がない」といったわかりやすいものもあれば、「挨拶がきちんとできない」といったコミュニケーションにまつわる小さなものまで、様々なものがあります。

色々なシグナルがあるのですが、中でもとりわけ問題として認識しにくいものとして、「上司と部下が、強固な親子関係で成り立っている会社は危ない」というものがあります。

今回は、幾度となく見てきた、「人間関係が強すぎるが故に起こる問題」とその「打開策」を書いてみたいと思います。

 

1.親子型の組織とその問題

「上司のために頑張る」という風土が行き渡っている会社があります。単なるトップダウンとはまた違い、上司も「部下を守る」という姿勢を持っている会社です。

上司と部下が強い絆のようなものでつながっていて、強固な親子関係を連想させます。旧来の日本企業によく見られる特徴です。

ある意味において、組織力があるため、会社は力強く成長する傾向があります。

一見素晴らしいことなのですが、お互い「義理」「人情」を重視し過ぎると、他のことに対して盲目的になってしまうことがあります。

簡単な例としては、義理を優先してルールを破ったり、顧客満足よりも部署の評価(≒上司の評価)を優先するといったことが挙げられます。

気づかないうちに、何かの片棒を担いでしまうということが少なくありません。気づいていたとしても、「●●さんのためだ」と、もはや止まることはできなくなります。

こうした組織の場合、多くは、突然の「数字の変調」という形で問題が露見します。

最初はちょっと赤字を隠しただけ、ちょっと売上を前倒ししただけ、問題ないレベルで規制を守っていないだけ。本当にに小さな誤魔化しから始まります。誤魔化している間に頑張って、それを帳消しにするという強い力学が働きます。その源泉は義理、人情です。

実際に、帳消しにできてしまった会社も、世の中には沢山存在するでしょう。表面化していないだけです。

しかし、気合だけでは帳消しにできないところまで問題が大きくなると、「多額投資の失敗」「子会社、関連会社の債務」「多額の引き当て」といった形でいきなり露見します。(世間的にいきなりなだけで、社内では公然の事実であることが多いです)

個人的には義理、人情は好きですが、会社のベクトルが「社員の誰かを守る」ことに、向き過ぎている場合は、危険な兆候と考えるべきです。言うまでもなく、会社の存在価値を決めるのは、本来、マーケットであり、顧客です。

コンプライアンスの徹底は大切ですが、より本質的には、どういう力学で会社がマネジメントされているかに注意を払うべきです。

 

2.義理や人情が厄介な理由

この問題の難しいところは、「顧客や株主よりも○○さんを守る」が、もはや人生観にもとづくものであることです。

根本的には、私たちは、「働くために生きている」のではなく「生きるために働いている」と言えます。したがって、顧客と仲間のどちらを選ぶか、二択で迫られると、長期的には社会重視、顧客重視でないと仲間を守れないことは理解していても、短期的には仲間を守るという選択をとってしまうことがあるのです。

無論、両方を大切にするために、経営なりマネジメントなりがあるわけですが、そのかじ取りが上手くいかないときに、根底にある価値観が問題の引き金となります。

問題の根本が、社員1人ひとりが持つ価値観にもとづくものですから、コンプライアンス勉強会や、経営理念の唱和をしたところで、なかなか変えられるものではありません。価値観を変えることは、何かを変えることの中でもっとも難しいことと言えます。

外部から見ている限り、とても良い社員、良い組織風土を持つ会社が、あるとき突然大きな問題を起こすのは、こうした背景があると考えます。

 

3.解決策

何を誤魔化すかと言えば、それはP/L、B/Sに並ぶ「数字」に他なりません。多くの場合は責任が増せば増すほど、財務諸表に関連する数字で評価を受けることになるため、そこを何とかしたいということになります。

数字を誤魔化さないようにするには、ルールで縛るか、誤魔化す必然性をなくすか、大きくは二択となります。(結果を出せばいいんでしょ、は議論が振り出しに戻るので割愛します)

そして「ルールで縛る」は様々な対策が打たれていますが、昨今の出来事を見る限り、成果を上げているとは言えません。規制強化然り、社外取締役然り、評価制度の「コンプライアンス遵守」という項目然り。

消去法的に考えると、「誤魔化す必然性をなくす」が残ります。

全社視点、外部視点など混在していますが、「誤魔化す必然性をなくす」施策としては、以下が考えられます。

  • 「親子型組織は危ない」、「パートナー型組織を目指すべき」という教育を地道に行う。実事例が豊富にあるとイメージしやすいだろう。コンプライアンス研修の中で、「ルールを破る心理面」を深く掘り下げて取り扱うべき。

  • ジョブローテーションを定期的に行い、親子関係を意図的に壊していく。事業別組織を採用している会社は、特にこの意識が必要。事業部長が「親」の頂点なので、事業部内のローテーションは意味をなさない。

  • 経営陣の評価を、単年度の業績ではなく、複数年度の業績で評価する。例えば、退任後、問題が発覚した場合は退職金を返納する規定にする等。

  • 若手社員であっても「長期的視野に立った行動」を処遇に反映し評価する。誤魔化しは、短期的な思考から始まる。

  • 社内外ともに、会社の評価を、「透明性」で行う。例えば、監査法人は、ルールに基づいてチェックするだけではなく、透明性について加点方式で査定する。

 

4.まとめ

コンプライアンスがこれだけ言われているにも関わらず、次々と起こる不祥事。ルールで縛ることも大切ですが、その根本要因はどこにあるのか。そこに考えを巡らせることが重要であると思います。

「社長が悪いんだ、上司が悪いんだ。」

これは、親子型組織にいる社員の典型的な発言です。子供のできが悪いのは、親のせいであると。

お互いパートナーとして、よりよい会社にするための意識なり、施策なりを検討できる組織にしたいものです。

 
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/wataru.nakagawa.18(フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)

 

この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
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