部下のやる気に火をつける「情熱のマネジメント vol.2」

情熱のマネジメント2

少し前に 部下のやる気に火をつける「情熱のマネジメント」 という記事を書いた。前回を入門編と位置づけて、今回は応用編を書いてみたい。

簡単におさらいから。人を情熱で分類すると、5つのタイプに分けることができる。

  • 発燃性の人:他人のやる気に火をつけることができる人
  • 自然性の人:自らやる気を奮い立たせることができる人
  • 可燃性の人:他人から影響を受けてやる気を出せる人
  • 不燃性の人:何をやってもやる気にならない人
  • 消燃性の人:他人のやる気を消してまわる人

前回はたき火に例えて、火をつけるまでのプロセスについて書いた。今回は、火がついた後のプロセスについて考えてみたい。

6.新しい薪を集める

キャンプでやるべきことは、火をつけることだけではない。寝床を作るためにテントを張る。川の水をそのまま飲むわけにもいかないため、井戸を探してポリタンクいっぱいに飲み水を確保する。

井戸から戻ってみると、たき火が消えているという悲惨な経験もよくした。残り火を頼りに、懸命に仰いで再点火を試みるが、時すでに遅し。たき火を長く続けるためには、新しい薪を拾って集めておく必要がある。二度手間にならないよう注意が必要だ。

マネジメントではどういうことが起こるだろうか。

人間は飽きっぽい生き物だ。「マンネリ」は情熱の大敵。やる気に燃えていたはずの部下が、ちょっと目を離した隙に、ボーッとしていたりする。自然性の人であれ、可燃性の人であれ、放置しておけば燃え尽きる。常に新しい刺激が必要になる。

 

(1)新人を採用する

わかりやすい刺激の1つは、新しい人材だろう。新入社員であれ、中途社員であれ、常に新しい薪を投下していくことが必要になる。人事権があろうがあるまいが、人材登用は上司の仕事だ。成果をアピールし、増員を会社に認めさせる。権力がなければ能力を行使するまでだ。

多くの新入社員はセルフモチベートができないため、自燃性ではないかもしれない。ただし、余計なものに染まっていない分、乾いた薪のようによく燃える。火がつきやすい可燃性だ。情熱のマネジメントでは若い力が欠かせない。

新しい人を採用できない場合はどうすれば良いだろうか。

 

(2)外部の人を上手く使う

能力がない上司に限って、「新しい薪なんてないよ。うちの会社は新しい人を雇う余裕がないから。それに、頑張って募集広告を出しても全然人が来ないから」などと無い物ねだりをする。

他部門で辞めたいと言っている社員を引き取ることはできないだろうか。何も新しい人が、新しい薪とは限らない。正社員が駄目ならアルバイトという手もある。大学生アルバイトと接する中で気づくことも沢山ある。

もっと言えば、刺激をくれるのは何も自社の社員とは限らない。取引先と合同ミーティングをしてみてはどうだろうか。自分たちにはない視点を持っているかもしれない。同業他社と合同勉強会を実施してみてはどうだろうか。仕事ができる人ほど、同じ業界内に多数の人脈を持っていたりするから面白い。

新しい薪を用意できる会社と、用意できない会社があるわけではない。新しい薪を探すことができる上司と、新しい薪がないと嘆く上司がいるだけだ。

 

7.濡れた薪を乾かす

同じ場所でキャンプをしていると、手ごろな薪がなくなってしまうことがある。昨日まで乾いていた薪が、朝露によって、濡れた薪に姿を変えることもある。雨が降って濡れることもある。適当な薪がないときはどうするか。遠くまで探しに行くか、今のたき火で乾かすことになる。

マネジメントでも同じことが言える。

やる気のない部下を持つと、愚痴を言いたくなるものだ。気持ちは理解できる。しかし、部下の気持ちも理解してやらなければならない。

本来は可燃性の部下でも、周囲とウマが合わなくて戸惑っているのかもしれない。家庭でトラブルを抱えているかもしれない。仕事のミスで落ち込んでいるかもしれない。人に言えない病気を患っていることもある。

濡れた薪は不燃物だろうか。濡れた可燃物だ。濡れた薪にどうして燃えないんだ!と言うことに意味はない。まずは乾かすことだ。

何かしらの理由でスランプに陥っている部下に対して、どのように接すれば良いだろうか。助言をしてもすぐに乾くことはない。まずやるべきは、気持ちを理解してやることだろう。たき火のそばに、そっと置いておく。

多様な部下をマネジメントしていくには、懐の深さが必要になる。

 

8.不燃性の人を見極める方法

「濡れた可燃物とか言い出したら、どの部下も可燃性の人ということになってしまう。理想はわかるが、現実は厳しい。」そんな声が聞こえてきそうだ。

不燃性の人は確かに存在する。

ボーイスカウトは、小学生や中学生の集団。どこまでいっても、やんちゃ盛りの子供集団だった。勢い良く燃え盛る火をみると、何でも燃やしてみたくなる。手あたり次第、いろいろとたき火に突っ込んでいく。

燃やしてみてわかることは、不燃物にも2種類あるということだ。「単に燃えない物」と、「燃やしてはいけない物」に分かれる。プラスチックや発泡スチロールを燃やすと有毒ガスが出て、咳こみ、目から涙を流すはめになる。

燃えない物に害はない。化学反応がなければガスは出ない。燃えるかどうか、どんどん試してみれば良いだろう。石は燃えないはずだが、焼き石なんてものもある。石焼ビビンバを作るぐらいの使い道はある。

注意しなければいけないのは、燃やしてはいけない物。石油製品だったりすると、良く燃えるが、出てはいけない物が出てくる。

マネジメントで有毒ガスを出す存在とは、どのような人だろうか。どうやって見極めれば良いだろうか。

 

(1)モラルの有無で部下を判断する

それはモラルの有無で判断できる。経費清算で不正を働く部下。都合が悪い事実を隠ぺいする部下。常に約束を破る部下。燃やしてはいけないのは、モラルがない部下である。

こうした部下を放置しておくと、大量の有毒ガスが発生する。特に、「仕事ができて、やる気があって、モラルがない部下」に一番注意すべきだろう。悪い意味での影響力が大きい。最悪の場合、たき火どころではなくなる。

コンサル会社時代、外付けのハードディスクドライブに、クライアントの中期経営計画書(未発表)を入れて、持ち歩いている不届きな部下がいた。そして紛失した。私たちマネージャー陣を待ち受けていたのは、長期に渡る捜索活動、クライアントへの謝罪、始末書の提出、そして減給だった。その間、たき火は放置されていた。

 

(2)モラルの有無を判断する方法とは?

部下の顔を見ただけで、モラルの有無を判断することはできない。それができるのは神様だけだろう。判断するためには一度、燃やしてみるしかない。

上司にできることは、有毒ガスの発生にいち早く気づき、その部下を炎の輪から即座につまみ出すこと。1円でも不正があれば正す。どんな小さな嘘でも流さない。大切なことは、毅然とした態度である。

ルール作りは大切かもしれない。発砲スチロールを持ち込めないようにする。マネジメントならPCを持ち出せないようにするということだろう。情報に対するアクセス権を制限することもあるだろう。

しかしどんなルールがあっても、社員であれば不正や虚偽を犯すことは可能だ。相手が人である以上、モラルのない部下を探し出すのは、結局のところ上司の仕事ということになる。

情熱マネジメントでいう不燃物は、モラルがない部下のことだ。燃えにくい物は、可燃物。濡れていれば乾かす。大きな薪に対しては、薪ではなく、火力のほうを問題とする。部下を分類する能力が低ければどうなるか。大量の不燃ゴミ「らしき」物を出すことになる。

 

9.木炭を作る

普通の薪は派手に燃えるだけに、すぐ燃え尽きる。そして煤(すす)をまき散らすから、調理の火として使うには不向きである。そんなわけで、キャンプ上級者になると木炭を作り始める。木炭は長持ちするし、余計な煤をまき散らしたりしない。木炭の炎は地味だが、すぐに火がつく。

備長炭は素人には作れないが、簡単な木炭なら作成可能だ。たき火に砂をかけて蒸す。固く、年輪を重ねた薪を木炭にすると、良い木炭になる。

マネジメントではどうか。

やる気にも色々ある。

最初は、「会社が楽しい」「上司に褒められて嬉しい」といった理由で仕事を頑張る。自分中心のやる気だ。

成長を重ねると、「貢献できて嬉しい」「目標を達成できて嬉しい」に変わる。目の前の顧客や、チーム中心のやる気だ。

そして最後に、「自分たちはこうあるべきだ」「自分たちの仕事こうあるべきだ」に行きつく。目的自体がやる気だ。

マズローの欲求段階説は人生全体にフォーカスしているので、仕事の欲求段階とは少し違う気がしている。

  1. 「所属欲求」「承認欲求」
  2. 「貢献欲求」「達成欲求」
  3. 「理念実現欲求」「組織存続欲求」

仕事の欲求段階は、こんな感じではなかろうか。

やる気があるとか、ないとかで仕事をしてはいけない。

そんなことを言う人がいる。その人はやる気を否定しているわけではない。言外に「プロとしてのプライドで仕事をして欲しい。理念実現に燃えて欲しい。」そんな気持ちが込められている。

本当に強いチームを作り上げるためには、パチパチと燃える薪だけでは駄目だ。派手さはないかもしれないが、しかし、すぐに火がついて、長く燃える木炭が必要になってくる。美しい備長炭を作りたければ、見た目の情熱だけではなく、情熱の源泉すらマネジメントしていくことが求められる。

 

10.火の始末をする

キャンプを終えるとき、火の後始末をしっかり行う。火が残っていて、山火事になれば大変だ。

マネジメントでも火の始末は必要だろう。

どんなチームにも終わりがある。発展的な解散かもしれないし、撤退に伴う解散かもしれない。いずれにせよ、いつまでも前のチームやプロジェクトに気持ちが残ったままではいけない。気持ちを切り替えて、次に向かわなければならない。

気持ちを切り替える。当たり前のことだ。

しかし、美しい炎を作り上げたという自負が強いチームや人ほど、過去に囚われる。次に再会するまでに、「どのような人間になっていたいのか」お互いの飛躍的な成長を誓って、解散式をするなど、明確な区切りをつける必要があるだろう。

何事も終わりがあるから美しい。

 

11.まとめ

情熱はマネジメントできると思う。そして、マネジメントにレベルがあると思う。

レベルが低ければ不燃物を沢山だし、薪がないと嘆くことになる。レベルが高ければ濡れた薪すら燃やすことができ、木炭すら作ることができる。

情熱のマネジメント。何かしらの参考になれば幸いだ。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
 
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この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。

 

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