PDCAサイクルを具体的に設計する手法

PDCAサイクルは、マネジメントスキルの中でもとりわけメジャーですから、言葉として知らない人はあまりいないでしょう。

あまりにも当たり前過ぎて、研修のメインテーマになる機会は少ないのですが、「ちょっとだけ復習で入れておいてください」というご要望を頂くことがよくあります。

そのとき、参加者の方に

自分でPDCAサイクルを一から設計したことがある人はいますか?

と質問させて頂くと、手が挙がる方がとても少ないことに驚かされます。階層にもよりますが、若手社員~課長ぐらいまでなら、手を挙げる人の割合が1割をきることも多いです。

どのようなスキルであっても、自分で実際に使ってみなければ上手くなることはありませんから、最近はその場でPDCAサイクルを作成してもらうようにしています。

そこで今回の記事では、実際の演習と同じ流れで、内容をご紹介していきたいと思います。

1.PDCAサイクルを具体化する

PDCAはとてもわかりやすい概念ですが、わかりやすくポイントを絞った反面、具体性に乏しいという欠点があります。

ですから、実際に現場で活用するためには、サイクルの各段階で注意すべきポイントや、意識すべきポイントを知っておく必要があります。

 
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演習を行うときには、解答例を示さず、まずは自分たちで考えてもらうようにしています。参加者全員が共通見解が出せるかどうか。それが組織にマネジメント手法が浸透しているかどうかの分かれ目になってきます。

一度、共通見解が出せるかどうか、組織内で試してみてください。そもそもポイントを挙げることができない人がいたり、ポイントを出せたとしてもバラバラになってしまうことがあると思います。

各段階で最低限意識しておきたいことは、以下の通りです。

PLAN:目的・目標・計画の明確化
DO:進捗の報連相、軌道修正、スケジューリング
CHECK:指標の設定、プロセス・結果の評価
ACTION:次を意識した対策、次のPLAN策定時期の明確化

 
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以下、段階別にポイントをみていきます。

 

2.PLAN(計画)段階のポイント

1)目標と計画は違う

PLAN作成の演習では、次のようなアウトプットがよく出てきます。

【PLAN】 
売上1億円の達成!
1Q:2,000万円 2Q:2,500万円 3Q:3,000万円 4Q:2,500万円
Aさん:3,000万円 Bさん:4,000万円 Cさん:3,000万円

このアウトプットは、目標と、目標を細分化したものが並んでいますが、肝心の「計画」が書いてありません。目標と計画は別モノです。

山登りで例えてみると、「目標」と「計画」の違いは明白で、このアウトプットの弱点がよくわかると思います。

目標:3,000mの山に登る
計画:どのルートで登るか、誰と登るか、どのような装備が必要か…

 
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3,000mもある山に登るのに、装備なしはとても危険ですから、具体的な計画が必要になってきますよね。

目標と計画は別モノで、両方必要です。目標だけになっていないか、逆に計画だけになっていないか、チェックしていく必要があります。

 

2)目的と目標も違う

マネジメントで抜けがちなのは、目的です。数字目標ばかりが並んでいて、何のためにその数字をやるのかが抜けてしまう。

目的:何のために行動するのか。理由。英語ならWHY。
目標:行動した結果、何を得たいのか。達成したい状態。英語ならGoal。

3,000mもある山に登るときに、なぜ登らないといけないのか、理由も知らされずに登らせれてはたまったものではありません。「そこに山があるから」では、誰もついてきてくれないでしょう。

自分のアウトプットが、目標や計画の羅列になってしまっていないか、振り返ることが大切です。

 

3)目標は高めに設定する

目標が、「300mの山に登る」という低いものだったとします。その場合、装備やルートを考える必要はありますか?計画は要らないですよね。

目標の高低については様々な意見があると思います。ですが、少なくとも、高い目標だからこそ、具体的な計画を考える必要がありますし、一生懸命に計画を考えるからこそ、自分たちの成長につながるのではないでしょうか。

考えなくても達成できる目標ならば、わざわざPDCAサイクルを考える必要はありませんから、能力開発を意図するのであれば、ある程度高い目標を設定したいところです。

 
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3.DO(実施)段階のポイント

DOの作成演習をすると、研修参加者から必ずと言っていいほど、「DOのところには何を入れたら良いですか?」という質問が出ます。PLANを考えて作成するのはわかるけど、DOは事前に作成できない、という意見です。

ここに大きな落とし穴があると思います。

PLANを作成して、そのままDOに突進してしまう。

ですが、計画をやりきるために、事前検討できることはあるはずです。「やりきるためには何が必要か」と、問いかけてみることが大切であると思います。

 

1)報連相のやり方を設計し、周囲と共有しておく

計画と実績がずれないようにするためには、進捗を把握し、ずれが生じている場合には即座に軌道修正を行う必要があります。

そして、進捗を把握するためには、報連相がとても重要になることは言うまでもありません。ですが、この「報連相」が場当たり的だと、進捗把握が上手くできない。

マネジメントが下手な人ほど、部下や同僚の報連相の仕方を嘆く傾向があります。

「もっと早く報告して欲しい」
「追加で●●についても報告してくれないか」
「その報告はメールじゃなくて、電話だろ!」

一方で、マネジメントが上手な人のやり方を見ていると、報連相のやり方を事前に設計し、周囲と共有していることがわかります。

「もっと早く報告して欲しい」 → 報連相の頻度とタイミングを決めておく
「追加で●●についても報告してくれないか」 → 最低限、報連相して欲しい内容を決めておく
「その報告はメールじゃなくて、電話だろ!」 → 報連相の手段を決めておく

マネジメントが上手な人は、報連相に関する指示を、「事後」ではなく「事前」にしています。後手に回るのが嫌だからです。

目標も計画も決まっているわけですから、それに合わせて、報連相のサイクルを事前に設計することは十分可能なはずです。

 
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2)スケジューリングのやり方を合わせておく

ここで言うスケジューリングとは、PLAN段階で作成するような全体スケジュールのことではなく、個々人の仕事のスケジューリングのことです。

スケジューリングの具体論は割愛しますが、いくら全体スケジュールを完璧に作り込んでも、一緒にPDCAを回す部下や同僚のスケジューリングの仕方が滅茶苦茶だと、必ず遅れが出てきます。

後で、個々人のスケジューリングのまずさを嘆くぐらいなら、最初からスケジューリングの仕方を共有しておけばよい、という考え方です。

同じ会社、同じチームの人であっても、スケジューリングの仕方には、かなり個人差があります。是非、一度手帳、スケジューラーを開きながら、共有してみてください。

 
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4.CHECK(評価)段階のポイント

結果やプロセスを定量的に評価するために、「指標を作成すべし」、ということは知っている人が多いです。

しかし、実際に「PLANと連動した指標を作成してください」と言われると、悩んでしまって手がつかない。指標を作成するのは結構難しいため、会社や上司が要求する指標をそのまま採用している人が多いのが実情ではないでしょうか。

ここでは、改めて指標の作成方法について考えみたいと思います。

 

1)結果指標と行動指標の違いを知る

以下の図は売上を細分化したものになります。指標を作成するためには、図のように目標(売上)を細分化するスキルが要求されます。

 
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指標は「結果指標」と「行動指標」に分類されます。

結果指標に分類されている、「顧客数」「顧客単価」などは、あくまで結果であり直接的にコントロールすることができません。「顧客数」「顧客単価」のように、何かしらの行動の結果としてできあがる数字を、結果指標と呼びます。

一方、行動指標に分類されている「提案数」などは、何かしらの努力は必要ですが直接的にコントロールすることが可能です。このような数字を、行動指標と呼びます。

結果指標は、集計して推移を見守る必要はありますが、実際にマネジメントでコントロールできるのは、行動だけです。「顧客数を増やせ」と言われても何から手をつけていいのか困りますが、「提案数を増やせ」ならできます。

ですから、実際にマネジメントする際には、行動指標についてよく考えておく必要があります。

 

2)4つの行動指標を理解する

行動指標には、①量、②質、③時間、④スピード の4つの種類があります。

先の売上に関する指標であれば、以下のようになります。
 

①量:提案数

単純に提案数を増やしていこう、というものです。
 

②質:決定率

提案が契約に結び付くようにしていこう、というものです。
 

③時間:総労働時間に対して、提案に使うことができた時間

そもそも提案に時間を割くことができているか、時間の使い方を考えていこう、というものです。
 

④スピード:1提案に要する時間

1件提案するのに、2時間かかる人もいれば、30分で完了できる人もいます。コンパクトに提案していこう、というものです。

 

3)指標の中から重要指標を選択し、マネジメントする

様々な指標を集計することは大切なことですが、たくさんあると、どれをCHECKすればいいのか混乱してしまいます。

ですから、細分化した指標の中で重要なものを選び、それを重点的にマネジメントしていきます。具体的には、より目標に強い影響を与えている指標を選ぶということです。

しかし、はじめてPDCAを回す場合、重要指標を絞り込むことはできません。何が目標に影響しているのかがわからないからです。最初は仮説でいくしかないでしょう。

何度も同じPDCAを回しながら、色々な指標を分析することで、重要指標を選ぶことが可能になっていきます。つまり、最初のうちは色々な指標を集計しておき、後々に分析ができるようにしておく必要があります。

会社や上司が、様々な数字を集計するように依頼してくるのは、こうした背景があると知っておくと良いでしょう。意図を持ってサイクルを回してみればわかることですが、目標達成にこだわるほど、色々な数字を分析してみたくなるものです。

 

5.ACTION(対策)段階のポイント

1)本当はPDCAではなく、A→PDCAの順番が正しい

ACTIONの作成演習を行うと、「流石に対策は事後にしか検討できないですよね」と言ってくる人が出てきます。

実際には真逆で、本来はAから検討しなければならないぐらいです。

新規事業でなければ、過去に何かしらのPDCAが回っているはずですから、PLAN段階では過去の反省を盛り込んだ計画を作成することができるはずです。

 
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自分なりにサイクルを設計してみましょう!と言われたら、まずは過去の振り返りを行い、経験をいかしたサイクルを設計することが正しい手順ではないでしょうか。

 

2)対策を検討する日を決めておく

実際のサイクル運用で難しいのは、「次のPLAN」を作成する時期と、「今のPLAN」を達成するための追い込みを行う時期が重複してしまうことです。

サイクルの運用がグダグダにならないように、対策を検討する日を決めておき、時間を確保しておきます。

 
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6.まとめ

いかがでしたか?PDCAは、「知っているけど、使っていないモノ」の代表格ではないでしょうか。

1つひとつのポイントは簡単なものですが、全てのポイントを意識しながら設計していくのはそれなりに大変かもしれません。ですが、本来、マネジメントには正確性が要求されますから、1つひとつ丁寧にやっていきましょう。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。
 
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/wataru.nakagawa.18(フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)
 

この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。

 

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