部下との人事評価面談で一番気を付けたいのは、「沈黙への対応」

管理職の仕事の一つに、部下との評価面談がある。

MBOの浸透に伴い、評価面談は「伝達の場」ではなく、「すり合わせの場」であることを、管理職の多くは知っている。

評価者研修でも判で押したように言われるのが、面談は「評価」のみが目的ではなく、「育成」と紐づけて上司と部下が話し合う場である、ということだ。

しかし、実際の評価面談が、双方向の話し合いになっているケースは少ない。駄目な面談は以下の経過をたどる。

  • 部下に話してもらわないといけないことは理解しているが、その肝心の部下が、沈黙してしまう。
  • 最初は部下が話すのを待つが、そのうち沈黙に耐えられなくなり、コメントを引き出そうとして上司が質問し始める。
  • 最初は質問だけだったが、段々と饒舌になり、気がつけば上司が一方的に話している。
  • かくして、評価面談が上司の考えを一方的に伝える場となってしまう。

部下の沈黙への対応を誤ると、そもそも会話のキャッチボールが成立しない。

会話が成立していないのだから、人事評価のスキル、例えば、「目標の立て方」、「よくある評価エラーと回避策」といったスキルの出る幕はない。

したがって、評価者として最初に身に付けるべきは、面談スキルであり、面談スキルの中でも重要なのが「沈黙への対応」である。

今回の記事では、面談時の沈黙の原因と、その対応策を考察する。

1. 沈黙の原因

原因は以下のように分類される。

1)部下が事前に考えてきていない
2)部下なりに自己分析はしてきたが、考えがまとまっていない
3)普段から上司を信頼していない

 

1)部下が事前に考えてきていない

評価面談で話し合うテーマはそれなりに重たい。

テーマには「自己評価の根拠」や、「評価にもとづいた課題」、「来期の目標」があるが、これらは考えるのに時間を要する。

また、振り返るべき期間も半年~1年間と長い。人事評価は、半年に1回から、1年に1回程度しか発生しないイベントだからだ。

それ故、部下が自己分析をしないで面談に臨むと、考え込んでしまい、結果として沈黙する。

 

2)部下なりに自己分析はしてきたが、考えがまとまっていない

自己分析した上で面談に臨んでもらっても、部下の沈黙は完全にはなくならない。それは、考えが上手く整理できないことがあるからだ。

面談の目的は「評価」だけではないが、面談で「評価」がある程度確定してしまうことも事実で、面談にはそれなりの緊張感や戸惑いが伴う。

例えば、自己評価と上司評価に食い違いがあるときに、どのようにして食い違いを解消すべきかを考えてしまう。自己評価のほうが低ければあまり問題にならないが、高い場合は表現の仕方をあれこれ考えてしまう。

したがって、ある程度考えていたとしても、沈黙は避けられない。

 

3)普段から上司を信頼していない場合

そもそも、この上司から評価されたくない、普段から言っていることに納得できない、など信頼関係が壊れていると、面談そのものが成立しない。

もっとも厳しいケースだ。

こうなると、部下は何をどう突っ込んでいいのかわからず、最悪の場合は無関心となり、面談自体をとにかくやり過ごそうとする。真面目に考えると、イライラしてしまうので、最初から考えない。

沈黙というより、無視に近い。

無理やりほじり返すと、お互い感情的になり、沈黙どころか面談が炎上することもあるため注意が必要だ。

 

2.対応指針

1)部下が事前に考えてきていない場合

事前に考えていないことによる沈黙は、「面談の仕切り」が甘いときに発生する。

対応はシンプルで、以下の3点を伝えれば良い。

・面談の日時
・面談の目的と流れ
・面談の準備内容

この3点は当たり前のことだが、会社によっては定型化されていないことがある。

こうした仕切りをせず、上司の手が空いたときに、「●●さん、ちょっといい?」といって、部下を呼びつけて評価面談を行うのは、筋が良くない。

面談の仕切りをきちんと行ったにもかかわらず、部下が何も考えてこないことがある。その場合は、その場であれこれ質問するよりも、面談そのものを延期してしまったほうが良い。

 

2)部下なりに自己分析はしてきたが、考えがまとまっていない場合

この場合、やるべきことは部下に質問し、回答を待つことである。

この「待つ」が難しい。沈黙が気まずいため、質問に質問を重ねてしまう。そうこうしている間に、いつの間にか助言や訓示へと移行していく。

こうした事態を避けるためには、待つことを宣言してしまうのが効果的だ。「5分間、時間をとるのでゆっくり考えてね」と伝えることで、変なプレッシャーから解放する。

そして5分間、面談とは別のことを考えながら待つ。

これはコーチングのスキルだが、コーチングで一番難しいのは、相手の答えを待ち、自分の考えを押し付けないことだ。最初から待ち時間を決めて、その間は別のことを考えているぐらいが丁度良い。

「部下が答えやすいように質問を工夫せよ」という打開策もあるが、質問を細かくすればするほど、誘導尋問になるケースが多い。

誘導尋問にならないようにしながら細かく質問する、は一定の修練が必要になるため、時間を決めて待つ、をおすすめしたい。

 

3)普段から上司を信頼していない場合

1)2)を十分やった上で面談がスムーズにいかない場合は、3)の可能性が高い。

これはもはや面談スキルの領域ではないが、信頼関係が壊れていても、評価面談をしないというわけにもいかない。

この場合の対応は、関係性が悪い2者で面談するのではなく、上司の上司など、信頼に足る人間を足して3者面談にするというものだ。

無論、とりあえず評価面談をやり過ごしたら、全力で信頼関係を再構築しなければならない。

 

3.まとめ

これまでに書いてきたことを端的に言えば、「評価面談は緊張感を持ってフォーマルな形でやりましょう」ということになる。

評価は極めてフォーマルなものなので、評価面談もフォーマルでなければならない。

 
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/wataru.nakagawa.18(フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)

 

この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です