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新入社員研修の内容を覚えている人はどれぐらいいるだろうか

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研修の中でも新入社員研修は特に重視されている。あまり研修をしない会社であっても、新入社員研修だけは存在したりする。

その背景はシンプルで、新人故にビジネス経験がもっとも少ないため、もっとも教育が必要であるからだ。

しかし、社会人になって数年経つと、研修内容、例えば、テキストに書いてあることや、講義内容を思い出せる人は少ない。

研修で最も価値が低いとされるのは、「内容を思い出せない研修」である。つまり、新入社員研修は最も重視されている一方で、最も価値が低い存在になっているのではないだろうか。

知人数名に聞き取り調査をしてみたが、新人研修の内容は覚えていないという回答だった。

覚えているのは、内容ではなく、同期社員との思い出話であり、「寮生活で誰々のいびきがうるさかった」、「夜飲み過ぎて次の日の研修に遅れて怒られた」といったものであった。

毎年いろいろな会社で新入社員研修を担当させて頂いているが、かくいう私自身も覚えているのは研修内容ではなく、ノックするときにスクリューブローにようにノックして笑いを誘った同期社員のこととか、電話応対で、「どちら様ですか?」を「何様ですか?」と言い間違えて、これまた笑いを誘った同期社員のこととか。

そこで今回は、単なる「思い出」にならないようにするために、新入社員研修のあるべき姿について考察してみたい。

1.よくある研修内容と、忘れてしまう理由

(1)よくある新入社員研修の内容

新入社員研修で実施される内容は、

  • マナー
  • ルール理解
  • 会社理解
  • 挨拶などの基本的なコミュニケーションの取り方
  • 仕事の仕方

といった会社が多いだろう。

座学を中心としながら、簡単なロールプレーイングを行う内容も多い。会社によっては上記に加えて、現場で最低限必要となる、専門知識を学習させる場合もある。

これらはビジネスパーソンとして最低限必要なものであり、これらができないと配属後、「駄目な新入社員」というレッテルを貼られることもあるし、あまりに出来が悪いと「うちの人事部は何を教えているんだ」とクレームをもらいかねない。

したがって、人事部としては基礎だけはおさえた上で、部署に送り出したいと考えるのは自然なことである。

ある意味、こうした成果に直結しない内容に時間とお金を割くのは、会社なり人事部なりの愛情であるとさえ言える。

 

(2)内容を忘れる理由

こうした愛情とも言える意図に反して、ほとんどの内容を覚えてさえいないのはなぜか。

それは、配属後に直面する実際の課題と、学習内容が一致していないからだ。

例えば、配属後に、

「マナーができなくて悩んでいる」
「会社のルールがわからないから、転職しようかと悩んでいる」
「会社の組織図がわからないので、どうして良いかわからない」
「挨拶の仕方がわからず、途方にくれている」

といった悩みを抱えている新人の話を聞いたことがない。

つまり、これらの内容はできないと恥をかくことはあっても、大きな課題として認識されることは少ない。

もちろん、マナーやルールは極めて重要である。しかし、上司や先輩視点で見た場合はそれらは「新人の課題」として認識されるが、新人視点では、そうではないことがある。

さらに言えば、これらの内容は新人であってもその気になればすぐに自習可能である。いつでもリカバリーが可能だ。

既存の研修内容は、あまりにもベーシックでありながら、新人自身が認識する課題ではなく、かつ自習が容易であるため、印象が薄く忘れ去られるのではないか。

したがって、新入社員研修を企画する際は、

・配属後に実際に直面する大きな課題を解決するためのもの
・かつ、新人が独力では解決できないもの

を中心に設計すべきであると考える。

一点目の「課題中心に設計する」、はノウルズがアンドラゴジー(成人教育)で説いており、研修企画では基本とされている考え方だが、「本人が認識する課題」を十分考慮する必要がある。

 

2.実際に新入社員が直面する課題

実際に、新入社員の悩みとして多いのは、

(1)上司と人間関係を上手く築けない
(2)部署、会社の雰囲気に上手く馴染めない
(3)入社前にイメージしていた仕事と違う

が上位を独占するのではないかと思う。

大人たちは、「何も甘いことを…」と思うかもしれないが、これらは若手社員の退職理由の上位を占めるものでもある。

したがって、これからを意識した研修コンテンツを盛り込むことをおすすめしたい。次項では、(1)~(3)について補足していく。

 

3.新入社員研修に入れたい内容

(1)上司とはどのようなものかを理解してもらう

ここで教えるべきは、上司とのコミュニケーションの取り方、も大切だが、より根本的なことを理解してもらうことをおすすめしたい。それは、

  • 上司とは何をする存在か
  • 上司も人間であり完璧ではない
  • 上司にも個性がある
  • 上司との関係構築は、もはや仕事であり、役割である

といったことである。

社会人になるまでに、親、友人、先生といった存在は認識しているが、上司は完全に新しい存在である。

アルバイト経験が豊富な新人であれば、その存在は認識しやすいが、そうでなければ、最初は消化しにくい存在であるのだ。ここに戸惑う新人が多い。

上司との関係構築で悩んでしまう新人の傾向として、上司に完璧を求める点がある。これまでに接してきた人間力ある恩人たちと比較してしまう新人も多い。

したがって、上司は単なる役割の一つであり、部下にも関係構築を担う役割があることを教えなければならない。

別の言い方をすれば、上司に対する期待値を下げておきたい。期待することは素晴らしいことだが、全ての上司が部下の期待に応える保証もなければ、期待内容によってはそれに応える義務すらもないことがある。

「上司と上手くやれない」のではなく、「そもそも上司の捉え方に偏りがある」のが新人である。

 

(2)あるべき組織風土を理解してもらう

どの会社も、その会社特有の風土を持っている。そして、組織風土は業態や職種に必要な事柄から派生する。

例えば、建設業や製造業では、「安心・安全」がとても重要になる。一つの事故が顧客や社員の生命に関わるため、基本動作や規律を守ることが強く要求される。

そして、それらは組織風土に直結する。リラックスすることは、ある業態では重要かもしれないが、建設業で工事真最中にリラックスしていては、命が危ない。よって、オン・オフはあるだろうが、職場はある程度厳しさがにじみ出る雰囲気を持つことになる。

新人が、「うちの職場はいつもピリピリしているから、嫌だ」、「うちの上司はやたら厳しい」といった、安易な反発心を持たないで済むように、自社が持つべき組織風土を、業態や職種に求められる要件と紐づけて、教育しておくことが重要である。

「雰囲気に馴染めない」のではなく、経験不足故に、「その会社が追求すべき『らしさ』を理解できていない」のが、新人である。

 

(3)どの仕事にも地道な作業があることを理解してもらう

どの会社であっても、新人が入社前に持っていたイメージと、実際の仕事にはギャップがある。

その背景は、入社前にはその仕事の最終成果や、華々しい側面しか知ることができないからだ。

採用戦線は、激戦の様相を呈しており、それゆえ良いことばかりアピールしがちな会社側にも大きな責任があると思うが、そうでもしなければ採用できない会社もあるだろうから、一概に責めることはできないのかもしれない。

しかし、仮に、人事部が期待値を上げて採用しているのであれば、その期待値を調整した上で、事業部に送り出すのも人事部の仕事ではないだろうか。夢見がちな新人たちを指して、「青い鳥症候群」と揶揄するのは、人事部の仕事ではない。

また、誠実に「実際の仕事」を採用試験中に伝えたとしても、「仕事の多くは、地道な作業の上に成り立っている」ことは、経験しなければ理解が難しい。

ギャップを解消するためには、それぞれの業態なり、職種なりの最終成果が何であるかを考えてもらい、その成果を得るために必要な作業を洗い出してもらうセッションを、研修コンテンツに入れておきたい。

「夢見がち」なのではなく、まっさら故に「大人たちの言っていることに惑わされる」のが、新人である。

 

4.まとめ

新入社員研修は、基本的なことを学習するというニーズがあるため、どうしても当たり障りがないものになりがちだ。

しかし、独自に工夫を凝らし、(1)~(3)のような研修コンテンツを盛り込んでいる会社もある。

「会社や顧客が新人に求める内容」で企画するのも良いが、「新人目線で企画された内容」もあって良いのではないだろうか。

相手の目線で考える、は仕事の基本であり、それを実践する大人たちの背中を見て新人は学ぶ。

最後に、同期社員とのことは良く覚えていることもわかっているため、同期同士、どのような関わり方をしてもらいたいのか、それも忘れずに設計に盛り込んでおきたい。

 
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/wataru.nakagawa.18(フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)

 

この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
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