経営理念を額縁から出す方法

ヴィジョン

こんにちは、株式会社ピースのブログからお届けしています。

「経営理念を浸透させるための研修をして欲しい」というご要望を頂くことがあります。

経営理念を重視している会社では、理念を唱和したり、カードにして携帯させるなど工夫はしているものの、浸透度合いに満足していないケースが多いようです。経営理念は抽象的な概念ですから、社員が理念に沿って判断、行動できるようになるまでには工夫が必要です。

そこで、今回は「経営理念を額縁から出す方法」について考えていきます。

人が「何か」を理解するときのメカニズム

経営理念の「浸透」について考える前に、そもそも経営理念とは何か、自分たちの腹に落としていく必要があります。まず、どうやって経営理念を「深く理解するか」ということについて考えます。

自分のモノサシに当てはめて理解する

人は何かを理解するとき、無意識に「自分のモノサシに当てはめて理解する」という習慣を持っています。

例えば、40歳代の中堅社員が新入社員のことを指導するとき、

自分も新入社員のとき、先輩社員に聞けば良いことでも、聞くのが恥ずかしくて質問できなかったな。こちらから、声をかけてあげたほうがいいな。

といった具合に、自分の体験談と関連付けながら、新入社員の気持ちを理解しようとします。

「自分のモノサシを人に押し付けてはいけない」「モノサシが古くなっている」といったモノサシの精度に関する議論はあるかもしれませんが、自分に引き付けて考えるという理解の仕方は、多くの人にとって簡単な理解の仕方であると思います。

この習慣を使って、経営理念の理解につなげると良いと思うのです。

自分のモノサシがない場合、物事が理解しにくい場合がある

先ほどの40代社員と新入社員の話であれば、40代の社員は自分のモノサシがなくても、新入社員に質問することで、新入社員の心情を理解することが可能です。理解するためには、質問する。当たり前ですね。

ところが、経営理念など抽象的であったり、過去に考えてこなかった物を目の前にすると、理解するための質問が上手く出てこないことがあります。つまり、何がわかっていないのかがわからない。

質問が出てこないとき、何かわらかないことがあるときは、頭の中で自分のモノサシを用意しようと考えます。

経営理念は抽象的であるため、何から考えていけば良いのかわからないというケースも多いと思います。ですから、経営理念を考えさせる前に、それを考えるためのモノサシ作りから始めると良いのではないでしょうか。

「自分理念」を書き出してみる

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経営理念を理解するためのモノサシは、自分自身の理念がわかりやすいです。まずは自分のことから考えてみます。

理念の定義

辞書によれば理念の意味は、

ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え

とあります。噛み砕いて言ってしまえば、自分なりのポリシーのようなものでしょうか。

自分理念を書き出す

●友人関係に関する理念(ポリシー)
●仕事関係に関する理念
●生活全般に関する理念

など、適当なカテゴリーを作って、そのカテゴリーにおける自分なりの理念を思い返していきます。

例えば、友人関係に関して、

困っている友人がいたら、自分が忙しいときでも、必ず手を差し伸べる

といった自分なりの理念を持っている方もいるでしょう。こういう方もいるかもしれません。

一期一会の精神で、これまでに出会った全ての人との関係を大切にする

新入社員であっても20年以上生きてきているわけですから、こだわりの程度や幅に個人差があるものの、何かしら「自分なりの理念」を持っている方がほとんどだと思います。それを思い起こして並べていきます。

自分理念ができた「背景」「気持ち」を思い出す

モノサシの内容をより明確にするために、自分理念ができた背景を思い出します。

例えば、先ほどの事例で「困っている友人がいたら、自分が忙しいときでも、必ず手を差し伸べる」と決意するに至った出来事を思い返していきます。

自分が悩んでいるときに、周囲の友人も色々と大変なときで、なかなか相談できなかったが、友人の1人が自分も大変な状況なのに、親身になって相談にのってくれたため今の自分がある

など、自分理念の背景には、何かしらの体験談があると思います。背景もセットで思い返すことで、「理念」に対する理解を深めていきます。

自分理念に沿ってどう行動しているか整理する

理念の内容、背景に加えて、どのように自分理念を実践しているのか。その行動も整理していきます。例えば先ほどの事例では、

表情が暗い友人がいたら、食事に誘ってみる

という行動をとる人もいるでしょうし、

最近連絡がない友人がいたら、こちらから積極的に連絡する

といった行動をとる方もいるでしょう。自分が普段無意識に行っている「自分理念の実践」について振り返ることで、理念の具現化をイメージしていきます。

自分理念を周囲の人と「共有」してみる

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ここまでくれば、かなり「理念」そのものに対する理解は深まっている状態ですから、経営理念の理解や具現化に進みたくなってしまいます。しかし経営理念というのは自分が考えたものではなく、他人が考えたものですから、きちんと理解するためには、もう1ステップとても重要なステップがあります。

自分理念を周囲と共有し、何が「大切か」肌で感じてみる

周囲の人と自分理念を共有してみます。このときの聞く姿勢ですが、自然と相手の理念に敬意を示し、共感スタイルで聞く方が多くなります。

自分理念は大切で周囲から尊重して欲しいという願望が誰しもあります。よって、他人理念も自然と敬意を持って聞き、共感しようと努力してしまうのです。

このときの感覚をよく覚えておくようにします。

会社の経営理念も敬意を持って、共感しながら理解する

経営理念は他人理念の一つです。創業者や諸先輩方が、色々な背景、気持ちを経て、会社とはこうあるべきだという根本の考えとしてまとめたものです。

それを理解するためには、敬意、共感が必要なのは言うまでもありません。経営理念を額縁から出すためには、会社が持っている思いを深く知ろうという姿勢が不可欠です。

いきなり経営理念を覚えるよう促したり、経営理念に沿って判断、行動するよう促しても、なかなか思うようにいかないのは、この「共感する」ステップが欠落しているからではないでしょうか。

経営理念を共有し、具現化する

ヴィジョン

ここまでくれば、経営理念の共有や具現化が、ある程度簡単にできるようになります。自分理念を検討、共有した流れと同じ流れでやっていくだけです。

うちの経営理念は漠然としていてわかりにくい

と言っていた社員も、自分理念と比較して考えれば、理念とは元々そういうものだということがわかるでしょう。

経営理念の具現化の仕方がわからない

と言っていた社員も、自分理念に沿った行動を考えるプロセスを参考にすれば、具現化できるでしょう。

うちの経営理念はイマイチ共感できない

と言っていた社員も、もう少し考えてから共感という言葉を使うようになるでしょう。

経営理念を額縁から出す方法 | まとめ

いかがでしたでしょうか。大切な「何か」。そういったものは、大体、抽象的な概念であることが多いと思うのです。

経営理念の共有に限らず、何か大切なことを共有したい場合は、相手のモノサシを明確にしてあげることが重要なのではないでしょうか。