部下の考える力の訓練には、「思ったことを書かせる」が最適

部下の話が今ひとつ論理的でない……という上司は多いのではないかと思う。

そんな時は「思ったことを書かせる」ことが最も良い訓練法の一つだ。

話すのと、書くのとでは頭の使い方が天と地ほど違う。考えをまとめるには、書くことが必要であり、思考力を鍛えるトレーニングの方法として優れている。

ホリエモンのベストセラー「ゼロ」を手掛けるなど、ライターとして多数のベストセラーを生み出した古賀史健氏は、その著書「20歳の自分に受けさせたい文章講義」の中でこう述べる。

なぜ、若いうちに”書く技術”を身につけるべきなのか?答えはひとつ、「書くこととは、考えること」だからである。”書く技術”を身につけることは、そのまま”考える技術”を身につけることにつながるからである。

また10万部を超えるベストセラーとなった「ゼロ秒思考」の著者、マッキンゼー出身の赤羽雄二氏についても、次のように述べる。

それは、頭に浮かぶことを次々とメモに書くだけだ。ただ、ノートやパソコン上ではなく、A4の紙に1件1ページでさっと書く。毎日10ページ書き、フォルダに投げ込んで瞬時に整理する。それだけで、マッキンゼーのプログラムでも十分に教えていない、最も基本的な「考える力」を鍛えられる。

思い返すと、私自身も管理職時代、部下に「書かせること」を通じて思考力を鍛える訓練を幾度となく行った。

部下にセミナーで使うテキストの要約を作らせたり、論理的な思考力の向上をねらい「思ったことをただ書くだけの合宿」をやっていた。実際の体験としても「書かせる」ことはトレーニングの方法として理にかなっている。

そこで今回は「書くこと」による訓練の方法をご紹介する。

 

1.どうやって書かせるか?

トレーニングの方法として、最も簡単なのは「報・連・相」に「書く」という行為をくっつけてしまうことだ。

例えば日報や週報などがある。報告書を書かせている会社が多く、それが昔から受け継がれてきている理由は、実際に訓練の効果が見込めるからだ。

しかし、日報や週報は、テンプレ化しやすく、長い間続けるうちに、機械的に書くだけになりがちだ。これでは考える訓練にならない。

そこで、要点を3つにまとめて書かせて、その後に詳細を書かせる、など、フォーマットに工夫をすることが必要だ。箇条書きを意図的に組み込むと、考えて書かざるを得ないので、力がつく。

例えばある会社で用いていたフォーマットは、以下のようなものだ。

  1. 本日の重要連絡事項(事実を書く)
  2. 重要連絡事項に対する自分の意見(意見を書く)
  3. 今後自分がやるべきことと、その期限

この中でもっとも重要なのが、「意見を書くこと」だ。意見を書くと、頭の中を整理せざるを得ない。

また報告よりも相談に「書く」を加えるという手法もある。

「上司に相談するときには、必ずいちど紙に相談内容を書くこと」というルールを設定している会社もあったが、書いて、まとめて、相談 の流れは教育上、効果的だ。

だが、普段書き慣れていない人に、それをいきなり課してしまうと相談へのハードルが上がってしまう可能性もある。それは望ましくない。

これへの対処として、上司の席に紙とペンを置いておき、相談に来た人物にその場で書かせて説明を求める、というやり方がある。書くのが苦手な人が多い会社ではこちらのほうが良いだろう。

 

2.「考えてから書く」ではなく、「書いてから考える」

前職、「論理的な思考力が弱い」とされている部下たちを合宿させたことがあった。合宿の主眼は「思ったことをそのまま書く」だった。

書くテーマは会社の課題について。(これは、実際には何でもいいと、後から思った)

まずは、A4程度の紙を大量に用意し、合わせてペンを用意する。

また、立ちながらでも、あるいは会議室のどこでも書けるようにするために「画板」を一人一つ用意した。(これは心理的に「書く」のハードルを下げる効果があった)

まずは上司が「テーマ」を発表し、それについて書くように指示をする。

以下は、当時におこなわれた実際の会話の抜粋だ。

「会社の抱える課題について、なんでもいいから書いて欲しい。」
「わかりました。」

(5分経過しても、皆、手が止まっている)

「なんでもいいから書いてよ。」
「はあ、何も思いつかなくて、書けないんです。」
「では、「何も思いつかなくて、書けない」って書いてみて。」
「そんなのでいいんですか?」
「とりあえず思ったことを書く、という訓練だから。「そんなのでいいんですか?」とも書いておいて。」
「わかりました。」

(部下が言われたことを書くが、また手が止まる)

「今なに考えている?」
「考えなくちゃいけないな、と。」
「じゃあ、その下にそのまま書いて。」
「あ、そうですね。」

(部下が書く)

「いま何を考えた?」
「どうやって考えたらいいかな、と。」
「それ書いて。」

(部下の手が動き出す)

“お客様の満足度が低い”
“受注率が低い”

「いいね、なんでそういうふうに考えたかについても、思ったことをどんどん書いて。」

(部下の手が動きつづける)

“なんで受注率が低いんだろう?”
“説明が下手だからかな”
“いつも、きちんと聞けてない、という感覚はある”
……

(30分位で部下の手が止まってくる)

「スイマセン、もう書けません。」
「もう書けません、と書いて下さい。」

“もう書けない”
“疲れた”
“そういえば、営業ってつかれる”
“体調の管理が良くない?”
……

(部下の手がまた動き始める。合計1時間程度書き続けて、休憩)

「どうだった?」
「型にこだわらないと、結構かけちゃいますね。整理してから書かなきゃ、と思うと手が止まりますけど、書いたほうが考えが整理できていいですね!」

「よし、それじゃ、今書き留めたことを、グループ化したり、階層化したりして整理して下さい。」
「わかりました。」

(30分位の作業)

「できました。かなりありますね。」
「12、3項目くらいにまとまって、結構深くまで考察されてるね。」
「こうしてみると、結構書けますね。」
「そう、実際には『考えてから書く』ではなく、『書いてから考える』のほうがずっとアウトプットが早く、質も高い。」
「納得です。」

 

3.まとめ

  • 部下の思考力を高める訓練は、「書かせる」ことが有効
  • 毎日の報連相に、書かせることを組み込む
  • 考えてから書く、ではなく、書いてから考える、を訓練する

 

この記事を書いた人
安達裕哉
経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。世界4大会計事務所の1つである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事する。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。自身の運営するブログ「Books&Apps」は月間PV数150万以上。
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です