チームを率いるようになると、メンバーのヤル気はとても気になることの一つではないでしょうか。
短期的にはヤル気の有無にかかわらず、やり方さえ間違っていなければ成果があがりますが、長期的に見ると、改善や能力アップなどが滞り、成果にも影響が出るようになるからです。
ですが「ヤル気」は電灯のようにON、OFFの分かりやすいものではなく、「なんとなく雰囲気が……」といった微妙なところから変化の兆候が出るものです。
ヤル気が決定的に下がり、「退職します」や「チーム異動を願います」といった事態に発展しないためにもリーダーは早めに手を打たなければなりません。
本稿では、どうもチームの雰囲気が良くない、と感じたリーダーがまず何から手を付けるべきなのか、検討したいと思います。
1.雰囲気が良くないサインとは
まず最初に注意すべきは「サイン」を見逃さないことです。雰囲気の悪さは様々な形をとってチームのメンバーに現れます。
そして特に注意すべきは以下の事項です。
会話の量と内容
会話の量が著しく少なくなったり、その内容にネガティブなもの、例えば「疲れた」、「休みが欲しい」、「やる気が無くなった」などが増えたりした時は要注意です。
これらは分かりやすいサインなので、対応も比較的早く取ることができるでしょう。ただし、現場が遠い、同行が少ないなど、メンバーの会話を聞きづらい上司の方は注意が必要です。
行動の量
ヤル気が減ってくると、行動の量が減ってきます。口ではやる気があると言っていても、行動はあまりウソをつけません。
現場では特に「何を言っているか」ではなく、仕事の量や行動の量を注視することで、そのサインに気づくことができます。
仕事のクオリティ・成果
クオリティに関してすぐに影響が出ることは少ないですが、雰囲気が悪くなると「ちょっとしたミス」が増える傾向にあります。
社労士さんの中にはうつ病の判定にミスの回数などをつかう方もいますが、ちょっとしたミスの回数は注視しておくべきでしょう。
勤怠の状況
最も顕著に出るのが「遅刻の回数」です。遅刻が増えるということは、「朝起きられない」ということですから、ヤル気の減退を表す最も分かりやすい指標の一つです。
2.ヤル気の減退は負荷と孤立から
では、ヤル気減退のサインを幸いにしてとらえた上司はどうすべきでしょう。
まずは現状の確認をすべきです。そして一般的にヤル気減退の大きな理由は二つ、「負荷」と「孤立」です。
負荷の状況をチェック
忙しすぎる期間が長いと、人は未来に対して悲観的な予測をするようになります。「これがずっと続くのか……」や「限界だ……」といった具合です。実際にはずっと続くことはないのですが、疲れから悲観的な予測が表に出やすくなるのです。
また、必ずしも忙しいことがヤル気を失わせるわけではなく、ヒマすぎるのもよろしくありません。暇だと余計なことを考えるものです。「このままでいいんだろうか」や「やりたいことがわからない」などです。
適切な負荷と、適度な忙しさを保つように仕事の量をコントロールするのは、上司の大切な役割の一つです。
孤立が元凶
もう一つ、適切な負荷であっても「職場での孤立」がヤル気の減退を招く場合もあります。人は一人でも耐えられますが、自分だけが一人にされているような状態にはより孤独感を感じるものです。
誰かが孤立していないか、一人で黙々と仕事をするような状況に追いやられていないか、上司は見張る必要があります。
もちろん、一人が好きという方もいるでしょう。それでもなお、皆の中で完全に一人である状態は、被害者感を強めるため、避けるべきです。
3.成果が上がらなければ誰でも落ち込む
負荷や孤立に問題がないとすると、次に検討すべきは「成果があがっているかどうか」です。勘違いされがちですがヤル気があるから成果が上がるのではなく、成果が上がるからヤル気が上がるのです。
したがって、ヤル気を高める最大のカギは当たり前ですが「成果を出せるように指導する」ことです。
ただし最終成果だけではなく、プロセスの数字を検証することも重要です。
最終成果というのは一般的には簡単にあがるものではありません。そうではなく途中途中の行動をやりきったかどうかで満足感をある程度得られるようにしておかなければ、成果が出る前に皆が力尽きてしまいます。
上手なマネジメントと、下手なマネジメントの違いは「プロセスの実行」に対する満足感が適度に得られるかどうかにあることも多いのです。
4.メンバーの相性を観察する
負荷も孤立もなく、成果もそこそこ出ている、という時に次に見るべきは「メンバー同士の相性」です。
これはデリケートな問題なので、できれば触らずに済ませたいのですが、本質的に重要な事も多いため、無視もできません。
これを見るには特に、打ち合わせ、食事の時の会話に配慮して下さい。噂好きのメンバーや、他者の仕事のクオリティに対する苦情が多いメンバーには注意すべきです。
皆の中で公然と他者を批判できる人は、性格に問題があることも多く、たとえ仕事ができたとしても「チームを壊す」メンバーである可能性が高いです。
また、そうだからといって会社や上司への批判をする人間を、皆の目の前で押さえつけることはやめましょう。あなたが権力を濫用しているように見えます。
そのような場合は大抵、相手の話をじっくり聞くだけで解決することも多いのです。その場で説教してはいけません。かえって事態が悪くなります。
5.雰囲気を改善する
以上のような状態が見受けられたとき、上司はどうするべきでしょうか。
実際、雰囲気を作り出しているのは、根本的には上司である「あなた」です。あなたの行動が鍵になります。
まず取り組むべきは会話量を増やすことです。会話と言ってもこちらから無理して話しかけるわけではありません。かえって邪魔に思われます。そうではなく「そばにいる」という感覚を大事にしてください。
「飲みに誘う」という方もいますが、飲み会にあまり頼り過ぎないほうが良いです。本質はオフィスでの付き合い方にあるのです。
飲み会ではなくオフィスで「何かあった時は聞いてくれる」、「そばに居てくれる」、「みててくれる」という感覚こそが、雰囲気を良くするのです。
困っていそうな人のそばに行きましょう。落ち込んでいる人のそばに行って、話を聞きましょう。それだけでもかなりメンバーの心を癒やすことに繋がるはずです。
もちろん、実務的には休息を取らせることも重要です。残業時間を調べましょう。負荷をきちんと知りましょう。これだけでもかなり違うはずです。
また、仕事の配分を気にしましょう。ルーチンワークだけだと退屈し、クリエイティブワークだけだと疲弊します。要するにバランスなのです。
6.まとめ
マネジャーの時間は、8割方、部下のためのものです。ですから「雰囲気が悪い」と感じたマネジャーは部下にもっと多くの時間を割くことを求められています。
ただし、そこであなたは自分自身に問いかけて下さい。あなたにはヤル気があるでしょうか?
自分自身のヤル気のコントロールができない人は、自明の理として他者のヤル気をあげることは出来ません。チームの雰囲気を良くするためには、何より自分の仕事の見直しから入るべきです。