問題解決の事例 「山積みになった書類」

こんにちは。株式会社ピースのブログからお届けしています。

整理整頓。得意な人にとっては何でもないことですが、苦手な人はいつまで経っても上手くなりません。性格がはっきりと出るテーマの一つですよね。

そこで今回は整理整頓をテーマとして問題解決について考えてみたいと思います。少し前に収納術に関する本やセミナーが流行りましたが、それ以外にどのような着眼点があるでしょうか。

1.原因分析のフレームワーク(再掲)

今回も「IPO+制約条件・成立条件」を原因分析のフレームワークとして活用していきます。IPOとは、業務プロセスの根幹となる概念であり、インプット、プロセス、アウトプットの3要素からなるフレームワークを指します。

インプット業務プロセスが開始するきっかけ。

プロセス業務プロセス。5W2Hなどで定義される。

アウトプット業務プロセスが終了したときの状態。

成立条件ある事柄が成立するために必要な条件

制約条件ある事柄を妨げる条件

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2.整理整頓の原因分析

あなたのオフィスには腰の高さぐらいのキャビネットが沢山あります。整理整頓が苦手な社員が多く、キャビネットの上はいつも書類が山積みです。

お客様や内定者がオフィス見学に来ることもあり、社長から綺麗にするよう指示を受けました。書類を収納するスペースが沢山あれば良いのですが、事務所は手狭で、今のところ引っ越しする予定もありません。

あなたなら、どのように問題解決をしますか?普段実施している整理整頓のための解決策を思い出しながら、読み進めてみてください。

IPO+成立条件・成約条件で構造化された原因
インプット 書類をプリントアウトする。
プロセス ①分類する(紙で保管、データ保管、廃棄)。
②ファイリング、スキャニング、廃棄する。
③片づける。
④①~③を指示する。
アウトプット キャビネットの上に書類が山積みになっている。
制約条件 ・事務所が手狭である
・廃棄できない書類がある
成立条件 キャビネットの上が水平である。

このテーマは問題解決研修でよく使う演習問題なのですが、「原因分析のフレームワーク」を伝えずに演習を実施すると、分析対象に偏りが出ます。

一番多い原因分析が「プロセス」に関する分析です。

「書類の分類の仕方がわからないから廃棄できない。だからマニュアルを作ってはどうか。」
「紙で保管する必要がない書類を、マメにスキャナーで読み込んではどうか。」
「業務で忙しくて片づける時間がとれていない。整理整頓タイムをとってはどうか。」
「個々人の意思に任せていてはダメ。指示する人を決めて実行してはどうか。」

次に多いのが、「制約条件」に関する分析です。

「トランクルームを借りて、保管義務があってもすぐに使わない書類を移動してはどうか。」

あまり出ないのが、「インプット」や「成立条件」に関する分析です。経験則でしかありませんが、これらの点に気づけるのは、多くても5人に1人、少ないときには10人に1人ぐらいの割合です。思考が柔軟な若手ほど、網羅的に分析対象をピックアップすることができるというのも一つの傾向です。

自分の頭で考えることは重要ですが、人それぞれ思考に癖や特徴がありますので、どうしても抜け漏れが出てしまいます。何かしらのフレームワークに沿って分析することは、網羅性や客観性を担保するという意味では、有効であると思います。

cleanup

3.原因を検証し、課題を絞り込む

それぞれの原因を、以下の軸で検証していきましょう。

課題を選定する軸

・実行可能性

・費用対効果

・優先順位(重要度 × 緊急度)

インプット

「そもそも書類を沢山プリントアウトするから、書類が山積みになるんだ。」という考え方です。

プライベートで考えても、部屋が汚い人には、欲しいものをあれもこれも買ってしまう浪費家が多いように感じます。そもそも、物が多すぎる。

この点に注目したのか、プリンターにカウンターを設置して、個人・部署ごとにプリントアウトできる紙の量をコントロールしている会社があります。コストダウンも出来て、一石二鳥です。

このように「インプット」をコントロールすることは、問題解決でしばしば有効な解決策になります。

ただし一点注意が必要です。業種や職種によっては、プリントアウト量を制限されると困るケースがあるかもしれません。この解決策は管理系の部署からは嫌がられるでしょう。

プロセス

先ほど挙げたように、以下のような分析が考えられます。

「書類の分類の仕方がわからないから廃棄できない。だからマニュアルを作ってはどうか。」
「紙で保管する必要がない書類を、マメにスキャナーで読み込んではどうか。」
「業務で忙しくて片づける時間がとれていない。整理整頓タイムをとってはどうか。」
「個々人の意思に任せていてはダメ。指示する人を決めて実行してはどうか。」

これらの解決策はどれも人件費以外にはコストがかかりませんから、費用対効果という意味では筋が良さそうです。

一方で、優先順位(重要度×緊急度)の緊急度という意味では、やや弱いかもしれません。整理整頓は、通常業務と比較すると優先順位が低く、だからこそ書類が山積みになってしまったとも考えられます。そのオフィス内で、役職者など実行権限を持つ人間が本気になれば、つまり優先順位を強引に引き上げれば、プロセスをコントロールすることも可能になるでしょう。

少し前のことですが、楽天の社員さんに聞いた話では、楽天では机の上が綺麗かどうかをチェックする係がいるそうです。チェックした結果を三木谷さんに報告することになっているため、常にオフィスが綺麗な状態に保たれているそうです。個人的には恐ろしい仕組みだと思いましたが、会社のトップが本気になればオフィスは綺麗にできるということです。

これからの解決策はどれも人が介在しているため、実行可能性という意味でも疑問符が付きます。1回や2回はプロセスをコントロールすることはできるかもしれませんが、継続的に実行するのは根気がいる作業です。やはり、役職者の本気度が結果を左右するでしょう。

制約条件

「(法律上、)廃棄できない書類がある。」という制約条件はどうでしょうか。例えば契約書などです。法律には直接的に干渉できないため、この制約条件は課題として取り上げることができません。できることは、定期的に保管義務があるか否かをチェックするぐらいでしょう。

もう一方の「事務所が手狭であるため、外部にトランクルームを借りる。」という解決策は、現実的なもので実行可能でしょう。実際にこの対策を導入している会社はあります。

ただし、お金で解決しただけであり費用対効果が良いとは言えませんし、何でもお金で解決すると整理整頓スキルが向上しないでしょう。

成立条件

「キャビネットの上が水平である。」という点に注目してみましょう。「水平で物が置けてしまうことが原因である。」という考え方です。

以前、上部が斜めになっているキャビネットが販売されていました。斜めになっているので、上に書類を置いても落ちてしまいます。美観を意識したユニークな商品でした。(今もあるかもしれません)費用はかかりますが、ほぼ100%の確率でキャビネットの上から書類がなくなるでしょう。

キャビネットの上に花瓶や絵を置いてしまうというやり方もあります。こちらは研修でもときどき出る意見ですが、発想としてとてもユニークですよね。

成立条件に手を加える解決策は非常に戦略的と言えます。費用がかかることも多いですが効果性が高いため、ビジネスの至るところで導入されています。制約条件や成立条件に着目した解決策に気づけるようになると、現場を観察するのがとても楽しくなります。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか。個人的には成立条件を課題とした対策がお気に入りですが、今回のケースではインプットとプロセスに手を入れるぐらいが妥当な解決策かもしれませんね。

着眼点にも個人差がありますので、網羅性、客観性を高めるためにフレームワークを用いて問題解決のトレーニングをしてみてはどうでしょうか。

前回の記事で取り上げた「寝坊」に続き、今回は「整理整頓」というテーマで問題解決を考えてきましたが、「電話のたらい回し」や「残業」など、現場で良くありそうなテーマで問題解決の事例を追加していきたいと考えています。

最後までお読み頂きありがとうございました。