【経営者向け】 経営理念を社員に浸透させるにはどうしたら良いか?

経営理念を持つ会社は数多くあります。

「理念だけでは食えないが、理念がないと長期にわたって繁栄できない」と言われますが、正解のない「企業経営」に原則が必要であると考えた経営者が、社員の行動の規範や、意思決定の拠り所として使うことが多いでしょう。

しかし、たとえ高邁な思いから出た経営理念であっても、

「社員に浸透しない」
「社員が重要だと思ってくれない」

という悩みを、経営者の方々からよく伺います。

なぜ、社員は経営理念を重視しないのでしょうか。また、経営理念を社員に浸透させるには経営者は何をすべきなのでしょうか。この記事では、それを解説します。

1.経営理念はなぜ浸透しないか

小学校に居たとき、教室の前の黒板の上方に「スローガン」や「訓戒」が掲示されていた記憶のある方はいますでしょうか。誠実や、正直やら、よく学びよく遊べ、といったいわゆる「お説教」のようなことが書かれていたアレです。

何人かの知人に「憶えている?」と聞いたところ、殆どの人が「何かあったことは憶えているけど、内容は覚えていない。そもそも、ほとんど気にしたこともなかった。」と回答しました。

おそらく、経営理念も同じような扱いではないでしょうか。要するに、殆どの人が「見ている、目に入っているが、気にしない」という状態なのです。

書かれている内容がいかに重要で、真理であったとしても、理念は掲げるだけでは浸透しません。したがって浸透に必要なのは、経営理念を浸透させる工夫、利用してもらう工夫といった、いわゆる「社内マーケティング活動」です。

 

2.唱和させて、憶えさせてもあまり意味は無い

それでは工夫とは一体どのようなことを行えばよいのでしょう。

「うちの経営理念は、掲げるだけではなく憶えさせている」という経営者もいます。「浸透させるために、記憶させることから始めている」という方も数多くいらっしゃるでしょう。

しかし、決まってそのような会社においても殆どの場合「実践できていない」と経営者は嘆きます。

私も実際にそのような経験があり、以前に在籍していた会社では「経営理念を暗記しているかどうかのテスト」を行っていました。一言一句記憶しているかどうか、定期的にペーパーテストを受けさせられるのです。

ですが、社員の評判はあまり良くありませんでした。極端ですがある新卒社員は「経営者が自分に酔っているようで気持ち悪い」と評しました。

その社員は仕事はできる方でしたが、「唱和やペーパーテストなんて、何の意味があるのか」と、常に疑問を持っていたようです。

他の会社でも同じようなことがあり、社長の腹心の部下でさえも「まあ大事なのはわかるけど、暗記や唱和は本質ではない」と言う方が多いと思います。

暗記や唱和といった外形的なことだけでは、「社員の血となり肉となる」という状態は実現できないのです。

 

3.経営理念は、使わなければ意味が無いし、憶えない

では、経営理念は、どのようにすれば社員の血となり肉となるように浸透するのでしょう。

本質的には、経営理念は憶えたり掲示したりすれば良いというものではありません。「意思決定につかう」事によって浸透するのです。

例えば、顧客重視、という理念があったとしましょう。そして、難しい意思決定があったとします。値上げするかどうか、チラシを打つかどうか、人員の配置を変えるかどうか、そんな時に「理念に照らし合わせる」を皆で行います。

「これは本当に、顧客重視か?」と問うのです。

値上げ ⇒顧客重視ではない
チラシ ⇒顧客重視ではない
人員の配置変更 ⇒顧客重視である。これに決定。

と言った具合です。

もちろん、経営者であっても皆と同じように従います。経営者の恣意的な判断を入れてはなりません。それは「経営理念の軽視」につながります。そのような行為は皆が「あ、所詮理念なんて社長の判断でコロコロ変わるんだ」と思うことにつながります。

社長すら従う、重要な意思決定に必ず登場する、そこから社員はほんとうに「理念が重要だ」という考え方になります。これはつまり立憲君主制と同じです。憲法は権力者がこれに従うから、権威を持つのです。

 

4.まとめ

経営理念は単なるお題目であるかぎりは社員に浸透することはありません。

 1.意思決定につかう
 2.社長がこれに従う

の2つの条件が揃って初めて、皆がこれを重視するのです。

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