こんにちは。株式会社ピースのブログからお届けしています。
今回は人前で話すことが苦手という方のために、プレゼンのコツを可能な例をもとに解説していきたいと思います。 部下を持っている方で、基本を教えたいという場合も参考になるかもしれません。
プレゼンテーションの語源はプレゼント(贈り物)と言われています。基本をわかりやすく共有していくために、あなたが誰かに対してプレゼントを渡すというシチュエーションで考えていきます。
ー 目次 ー
誰に対して贈るのか(Whom)
あなたは誰かに対して贈り物をする時、一番最初に何を考えるでしょうか?いきなり、プレゼントを渡すときの台詞やラッピングの仕方について考える人は少ないと思います。
おそらくこんな感じで想像を巡らすのではないでしょうか。
まず最初に相手のことをよく知ろうとするのではないでしょうか。
ビジネスでも全く同じことが当てはまります。相手に喜んでもらったり、行動をしてもらうためには、相手のことをよく知った上でプレゼンテーションを行う必要があるのです。
したがって、プレゼンテーションが苦手というあなたが、話し方の本(贈り物を渡すときの台詞)や、パワーポイントの作り方(贈り物のラッピング)に関する本をいくら読んだとしてもプレゼンテーションが格段にうまくなる事はありません。
誰に贈るかも考えずに、ラッピングに凝る人もいるかもしれませんが、それは自己満足に過ぎません。(それはそれで楽しいかもしれませんが)マーケティングでもセールスでも社内の会議でも、何を伝えるべきか迷ったら、とにかく相手の分析から始めることが重要になってきます。
一つ体験談をお伝えします。コネタでしかないため、読み飛ばしてもらっても構いません。
椅子に腰掛けてぼーっとしていた私の耳に、CA達がキャーキャー叫んでいる声が入ってきました。顔を上げてみると、CA達の輪の中心に背の高い少し年老いた黒人の男性が立っています。
当時、海外の映画やテレビドラマにあまり関心がなかった私には、それがどんな有名人か解りませんでしたが、せっかくの機会なのでCAたちに混じってサインをもらっておきました。
その後、そんな事はすっかり忘れていましたが、帰国後授業のレポートを出す時になってそのサインのことを思い出し、ちょっと悪巧み。
当時、ちょっとした落ちこぼれだった私は、レポートの書き方がよくわからなくて困っていました。そこで優秀な友達にレポートを代わりに書いてもらうために、そのサインをプレゼントしました。(もう時効は成立しているでしょうか)
その有名人が誰か全くわからない私にとっては、サインはただの紙切れでしたが、友人はその有名人の大ファンであり、喜びようは大変なものでした。「本当にこんなものをもらってもいいの?!」と念押しされたほどです。
後でいろいろな映画を見て知ったことですが、その有名人はモーガンフリーマンでした。少しもったいないことをしたかもしれません。
贈り物の内容が同じであっても、それを受け取る人によっては価値が全く変わってきてしまうということです。ビジネスでも同じことが起こります。
贈る相手にどうなってもらいたいのか(Goal)
少し卑しい話かもしれませんが、贈り物には何かしらのゴールがあるはずです。
- 相手に喜んでもらいたいだけなのか
- 相手に何か行動を起こして欲しいのか
- そして、授業のレポートを書いて欲しいのか(笑)
ビジネスでも何かしらのゴールをもって行われるべきであり、プレゼンテーションの効果測定はゴールの達成状況でなされるべきです。
誰に対するプレゼントなのか、という事と同じぐらい、プレゼントのゴールは重要になってきます。パワーポイントの色使いを工夫したり、図形の作成に取り掛かる前に、まず相手にどうなってもらいたいのかをよく考えておくことが重要になってきます。
なぜ贈り物をするのか(Why)
誕生日でもない、結婚記念日でもない日に、高価な物、例えば車やダイヤモンドの指輪を渡されたら、あなたはどう思うでしょうか?
「浮気でもしているんじゃないか?」と相手を疑ってしまうかもしれませんね。急に優しくされたりすると少し気持ちが悪いものです。
贈り物をするときには、贈り物を受け取る相手が理解できるわかりやすい理由(Why)が必要になってきます。
ゴールと少し似ていますが、よく考えると全く別物であることが解ります。「ゴール」はプレゼントをする側が達成したい状況であるのに対して、「理由」はプレゼントを受ける側が理解すべきものです。主語が全く違います。
プレゼンテーションの準備をするときは、相手がなぜこのプレゼンテーションを聞かなければいけないのか、その理由を考えるところから始めていきます。
誰からの贈り物か(Who)
大好きな人からもらった贈り物は、中身が何であっても嬉しいものです。ビジネスでも、誰がプレゼンを行うのかという事は極めて重要になってきます。
プレゼンテーションというと、どうしてもテクニック論が先行してしまい、誰が実施するのかということについては見落とされがちです。
簡単な事例で考えてみましょう。
あなたはプレゼンテーションのセミナーを受けようとしています。たまたま仕事の合間を縫って受講できるセミナーが2つありました。それぞれ以下のような内容です。
講師 | 株式会社ピースの代表取締役 中川 |
---|---|
時間(How long) | 2時間 |
対象(Whom) | ・プレゼンテーションが苦手な方 ・参加人数10人まで。一人一人マンツーマンで丁寧に指導します |
テーマ(What/Gaol) | ・苦手な方でもよくわかるプレゼンテーションのノウハウ ・緊張しないで話す方法 ・効果的な練習方法 ・提案書の作り方 |
特典 | パワーポイントのテンプレート10種類 |
講師 | 孫正義 |
---|---|
その他・情報 | 内容、時間、テーマ、特典など詳細は未定 |
わかっている事は以上の情報だけです。さて、あなたはどちらのセミナーに参加したいですか。
孫正義の代わりにあなたが最も尊敬する人物や大好きな人物を入れて考えてみてください。AKBでもスティーブ・ジョブズでもレディーガガでも坂本龍馬でも構いません。
悲しいことですが、株式会社ピースのセミナーに参加する人はいないでしょう。何だったら、自分のセミナーそっちのけで、私も孫さんのセミナーを聞きたいです(笑)
仕事では、目的(Why)や内容(What)、例えば経営理念や経営戦略がとても重要ですが、プレゼンでは誰が(Who)が極めて重要になってきます。
株式会社ピースのセミナーでは、セミナーの対象、ゴール、内容、時間など細かに書いてあったにも関わらず、詳細があまりよく分かっていない孫さんのセミナーにあっさり負けてしまいました。
プレゼンテーションでは、本来重要であるはずの目的や内容を、誰か(Who)が簡単に凌駕してしまうことがあるのです。少し固い話になってしまいますが、プレゼンテーションとはそもそも全人格的なものなのです。
人格とは様々な要素が含まれています。
- 実績
- 知名度
- 希少価値
- 権威
- 人柄
- 教養
- 雰囲気
様々なものが影響します。
話すことは苦手でも、あなたに実績や知名度があれば、プレゼンテーションを有利に進めることができます。
逆に、人格に自信がない場合はどうすれば良いのでしょうか?人格の全てをかけて戦うしかありません。
人生を左右するようなプレゼンテーションを行う場合は、あなたの過去の体験、見せたくない傷、あなたの仕事に対するプライド、あなたの相手に対する熱意、つまりあなたの全人格をかけてプレゼンテーションを行う必要があるのです。
どんなに口下手であっても、人の注意をひきつけることができる、そんな人があなたの周りにもいるはずです。人格を抜きにして、プレゼンテーションを語ることはできないのです。
何を贈るか(What)
贈り物の中身はとても大切ですよね。あなたは大切な相手に何を贈ることができますか。
例えば、モーガンフリーマンの色紙はゲットできますか?
例えば、100カラットのダイヤモンドを贈ることはできますか?
贈り物の内容は普段の地力、知識・見識などが問われるものであり、すぐに変えられません。ビジネスでも同様であり、普段考えていないことや知らない事は伝えることができません。
背伸びをして、にわか仕込みの知識でプレゼンテーションをしてしまった結果、失敗したという経験はありませんか。
贈り物の内容が貧相であるため、ラッピング(資料の見栄え等)でごまかすという方法もあるかもしれませんが、やはり付け焼き刃の方法と言えそうです。
自力に乏しい場合でも、相手の気持ちを動かすプレゼントを贈るためにはどうしたらよいでしょうか?
一つの事例をお伝えします。
10年間在籍したコンサルティング会社を離れる時、長くお世話になった上司が送別会を開いてくれました。宴の最後に上司がプレゼントしてくれたのが、採用試験の時に私が書いた小論文でした。
その小論文を渡しながら、「少し字が汚ないけれども、とても良いことが書いてある。初心をいつまでも忘れずに、新天地に行っても体を大切にして頑張ってくれ。」という言葉を贈ってくださいました。
私の心は動きました。新天地で頑張ろうと。今でもその時のことを鮮明に覚えています。
100カラットのダイヤモンドを買うことはできないかもしれない。
豊富な知識も今すぐには勉強できないかもしれない。
それでも、プレゼントを贈る相手が何に心を動かされるのか。相手のことを考える事はできると思うのです。
私の上司はすばらしい人格者であったと思いますが、仮に人格者でなかったとしても、お金のかかったプレゼントを用意できなかったとしても、相手のことを考えればプレゼントの内容はきっと良いものになるに違いありません。
どこで贈り物を渡すか(Where)
究極のプレゼンテーションの1つにプロポーズがあると思います。人生を左右する極めて重要なものです。
あなたならどこでプロポーズをしますか。もしくはどこでされたいですか。
朝一緒に味噌汁を食べながら「結婚してくれ」と言う人、言われたい人は少ないのではないかと思います。
素敵なレストランでワインでも飲みながら、締めのデザートプレートにプロポーズの言葉を書いて贈るなど、演出を工夫するはずです。とにかく相手に喜んでもらえるようにプレゼントを贈る「場所」もかなり気を使うのではないでしょうか。
ビジネスでも場所は重要な要素になってきます。
- プロジェクターはあるか
- 大きなスクリーンは用意されているか
- ホワイトボードはあるか
- マーカーは準備されているか
- 机や椅子は足りているか
- 落ち着いた静かな空間であるか
- スカイプはきちんとつながっているか
プレゼンテーションが上手な人は、環境設定にもかなり気を遣っているのです。
人前で話すことに対して苦手意識があると、どうしても話し方や資料の準備に気持ちが行きがちです。味噌汁を食べながらプロポーズしてしまっていないかよく考えてみる必要があると思うのです。
いつプレゼントするか(When)
先ほどと同じようにプロポーズの例で考えてみましょう。プロポーズはレストランでご飯を食べた後にしますか。それともいきなりサプライズでプロポーズしますか。
いつプレゼンテーションを行うのかも、戦略上極めて重要な要素です。
上司にプレゼンテーションを行う場合、上司が忙しくて機嫌が悪い時に行うのは果たして効果的でしょうか。
お客様に重要なプレゼンを行う場合、夜の8時お客様が疲れているときに行うことが果たして効果的でしょうか。期の初めに行った方が良いのでしょうか。期末に行った方が良いのでしょうか。
プレゼンの内容ばかりに気を取られてしまうと、こうしたことに気が回らなくなってしまいがちです。
プレゼンに限らず、間の悪い人がいます。
こうした負の感情を抱かれないためには、相手にとって最適なタイミングを見計らう必要があります。
資料作成に没頭し時間がかかってしまい、相手が望むタイミングや効果的なタイミングでプレゼンテーションを行う機会を逃してしまう。そのようなことがないように、いつプレゼントを贈るのかということについても気を配っていきます。
どのぐらいの時間をかけるのか(How long)
プレゼンは「時間」」にかなり大きな制約を受けます。5分しかないのか、2時間あるのか。
せっかく時間をかけて準備したのに、言いたいことが全部言えない状態でタイムアップしてしまったという経験はありませんか。
伝える内容もとても重要なのですが、まず持ち時間がどれぐらいあるかを把握した上で、内容を整理していく必要があります。
また、プレゼンテーターであるあなたがプレゼンの時間枠を決めることができる場合は、気持ち短めの時間を設定すると良いでしょう。例えば、2時間必要だという内容であれば、あえて1時間半ぐらいの時間で設定をします。
そうする理由は、次のプレゼンテーションの機会に期待感を残しておくためです。
ビジネスでは、一回のプレゼンテーションで全てが完結するという事はあまりないと思います。期待感を残しつつ、また話を聞きたいと思わせることが、次の機会につながっていくのです。
どのような手順で贈るのか(Which)
誕生日をお祝いする場面を想定してみましょう。お祝いする相手に喜んでもらうために、どのような手順で贈り物を渡しますか。
まずはクラッカーでびっくりさせて、バースデーケーキを運んできて、みんなでハッピーバースデーを歌う。ろうそくの火を消してもらい、一緒にケーキを食べる。少し落ち着いたところでプレゼントを渡してから、メッセージカードを読みながら渡す。
このように、プレゼントを渡すのにもシナリオがあるはずです。ビジネスでも、どのような手順で進めるのかを考えておくことが大切になるのです。
プレゼンの機会をもらったことに対してお礼を言うところから始め、話の全体像を示し、それから詳細説明に移っていく。区切りの良いところで参加者から質問がないか確認する。最後に要点をもう一度まとめて理解を促す。
プレゼンテーションは、資料や話す内容の事だけではなく、シナリオ全体のことを指すのです。
また、人は全体像が見えないと不安になるため、プレゼンテーションの全体像や構成を示しておくことも大切になってきます。資料にページ数を振るのはもちろんのこと、話す内容や資料についてもいくつかのパートに分けて番号を振っておくことも忘れないようにしたいところです。
プレゼントに添えるメッセージ(How to)
特別な人に贈り物をする場合、メッセージカードを添えることもあるでしょう。そしてメッセージカードには、一番伝えたい気持ちを書くのではないでしょうか。
ビジネスでも、メッセージカード、つまり最も伝えたい言葉を明確にして伝えることが重要になってきます。
プレゼンテーションでは伝えたいことが複数あったり、たくさんの添付資料をつけることもあるでしょう。一番大切なことが埋もれてしまわないように、メッセージカードを作るつもりで、プレゼンテーションのメインメッセージを作るようにしましょう。
見た目に気を配る(How to)
ここでようやく贈り物のラッピングに取り掛かります。プレゼンテーションの本質ではありませんが、やはり相手を思う気持ちが強ければプレゼントをきれいに包装したいところです。
実際のプレゼンテーションでは、資料の見た目やレイアウト等がラッピングに該当します。
デザインの重要性は高まってきていると思いますが、社内におけるプレゼンテーションなどでは、過剰なラッピングをしてしまわないように注意しましょう。あくまでプレゼンテーションの対象、目的、内容等が優先されるべきではないでしょうか。
プレゼンテーターの見た目(How to)
ハロウィンでは仮装するでしょうし、クリスマスでは赤い服を着たひげもじゃのサンタさんがプレゼントを渡してくれます。
そのプレゼントの内容に合った格好をすることが重要になってくることもあります。
昨今のビジネスでは、カジュアルな服装が市民権を獲得していますが、その場に本当にふさわしい格好であるか再考するようにしたいところです。
また、サンタさんが大きな袋を持って煙突から入ってくるのが様になるように、プレゼンテーターがどのような仕草、行動をするのかということもプレゼンテーションでは要素の1つになってきます。
どのような話し方で渡すのか(How to)
誕生日プレゼント渡す時であれば、明るく元気な声で渡すでしょうし、プロポーズをするのであれば少し落ち着いた声でしかし力強く相手にかたりかけるでしょう。
滑舌が良いなど話し方の基本ももちろん大切ですが、より重要な事はそのプレゼントに合った話し方を心がけるべきではないでしょうか。
まとめ
プレゼンテーションを見直すコツについて、7W2H1Gで整理をしてきました。
- Whom:誰が対象なのか
- Goal:プレゼン後、どうなってもらいたいのか
- Why:なぜ行うのか
- Who:誰が行うのか
- What:何をプレゼンするのか
- Where:どこで行うのか
- When:いつ行うのか
- How long:どれぐらいの時間をかけるのか
- Which:どのような手順で行うのか
- How to:どのように行うのか
前半部分がプレゼンテーションの「幹」で、後半が「枝」になります。ネットの普及で情報収集が容易になりましたが、何が重要なのか、常に自らの頭で考えるようにしたいものです。
機会を改めて、1対多人数のプレゼンを行う際のポイントや、相手の巻き込み方など、応用編について書いてみたいと考えています。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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