外部の研修を受けるときの心得について

昔、企業向けに研修を売り歩いていた時代、「研修を使いこなせる人は、本当に少ないのだな」と感じていた。

研修の出席者は大抵、次のいずれかの動機で研修に参加する。

A:上司(会社)に言われて
B:業務で必要に迫られて
C:向学心

そして、B、Cの人はおそらく研修に出て満足し、かつ研修の効果もある。

問題はAの人々だ。そして、残念ではあるが企業向けの研修はAの「上司に言われて」の人が大半を占める。

経営者や教育担当者に「参加する動機が重要なので有志だけでやったほうが良いですよ」とおすすめしても、「不公平だから……」「多分あまり参加者がいないから……」と、結局ほとんどが「上司に言われて参加」となるからだ。

もちろん、そういった状況であることは研修を実施する側も熟知しており、そう言った人々にいかに内容に興味を持ってもらうのかに心を砕く。

だが一方で、やる気のある人に対しては十分な成果を提供しにくくなる。小学生と中学生を同じ教室に入れて授業をしているようなものだからだ。

だれに向かって研修をやるのか、これは悩ましいトレードオフを含んでいる。だから「研修を受ける側」にもある程度のリテラシーは必要とされる。

学校に入学試験があるのは、その学校で「学ぶ能力」があるかどうかを試すためだ。それと同じで企業向けの研修と言えど、「学ぶ能力」のない人には全く無意味である。

外部研修を活かせるかどうかは、受け方一つで大きく変わるのだ。

では、どうすればもっと研修を活かすことができるのだろうか。それを理解するには、研修の本来の役割について知る必要がある。

多くの「上司から行かされている」参加者は、研修に出ると知識や、ノウハウが「もらえる」と思っている。完全に受身の姿勢だ。

もちろんそれは間違いではない。が、それだけをを目的とすると、研修を100%活かすことができない。なぜならば、せいぜい数時間、長くて数日という短い時間で、重要な知識を網羅するのは不可能だからだ。

どの分野も一通りのことを勉強し、かつある程度業務に応用できるくらいの知識を会得しようと思えば、一ヶ月、長ければ数年に渡って学び続ける必要がある。したがって、研修の主目的は、多くの場合知識だけではない。

研修が本当に活かされるのは、次の目的を持った時である。

1.対象について、もっと知りたくなる意欲が起きる
2.考え方、気づきが得られる
3.自分を見直す

 

1.対象について、もっと知りたくなる意欲が起きる

知的好奇心を刺激し、受講者の中にもっと知りたい、もっと学びたいという向学心を引き起こすこと。 これが研修の大きな目的の1つである。

だから、面白さを発見してもらえるよう、こちらも注意する。すなわち「研修をきっかけとして、もっと深く勉強したくなりました」という気持ちを起こすことが、成果である。

 

2.考え方、気づきが得られる

考え方や、気付きが得られることは研修の重要な成果の1つである。

普段、目の前の業務に邁進している時は、大きな枠組や、「なぜこの仕事が必要なのか」について深く考えることはあまりない。

日常を一旦離れ、研修という場で改めて業務を俯瞰することで、メタ知識、つまり自分の知っていることについての知識を得ることができる。

「研修を受けて、自分の仕事の枠組みや、意義などを確認できました」という言葉や、「今まで当たり前だと思っていたことが、実は様々な知識の上に成り立っていたことを知り、嬉しくなりました」などのコメントが、研修の成功を意味する。

 

3.自分を見直す

研修は、ワークショップやグループワークを通じ、改めて「自分の考えているいること」をアウトプットする機会が多い。

そういったことを通じて、「自分の考えていたこと」が改めてはっきりしたり、なんとなく思っていたことが言語化されたりする体験を得られることが、研修の成果の1つである。

人は誰しも、想像する以上に自分のことをよくわかっていないものだ。

「なんとなくモヤモヤしていたことを再認識して、解決することができました」「自分がなにを志向していたのか、はっきりしました」などのコメントが研修の成功を意味する。

 

そもそも研修とは、外形的な知識も目的の1つだが、「内省する良い機会」を提供することも大きな目的の1つである。

したがって、「上司に言われて」参加する場合、内省するマインドが働きづらいこともあり、研修の効果を十分に得られないことがあるのだ。

研修に参加するきっかけは「上司に言われて」で全く構わない。

だが、参加すると決まったら、自分の知識欲や、自分の知っている知識、考えたいこと、などについて一度研修参加前に考えることで、研修の効果は何倍にもなる。

参考

研修堂
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