「評価制度は作ったが、上手く運用できていない」というお悩みの声を伺うことがあります。
評価制度で決まっていることをスケジュール通り運用することは、細やかな管理やリマインドが必要です。そのうえ、評価制度を人材育成や業績向上につなげるためには、会社全体で運用に取り組む必要があります。
しかし、中小企業では運用の取りまとめ役となる担当者が不在というケースも多くあります。そういった場合、普段は経理や総務を行っている社員が、兼任で評価制度運用の担当者になることも多いでしょう。
この記事をお読みになっている読者にも、「人事制度の運用について担当者になったものの、何から取り組めばいいのかわからない」という方もいるはずです。
そこで、本記事では評価制度運用を任された担当者に向けて、起こりがちなトラブルについてまず紹介し、その原因と対策方法についてお伝えします。
人を育て、会社の成長につながる評価制度運用のために、ぜひお役立てください。
評価制度運用で起きるトラブル5選
トラブル1:目標管理制度において目標が決まらない
現在、多くの会社が目標管理制度を導入しています。
個人目標は部門目標や全社目標に基づいて設定するため、全社目標や部門目標が決まっていなかったり、決まるのが遅かったりすると、個人目標もなかなか決まりません。
すると、そもそも評価制度の運用を始められないということが起こります。
トラブル2:異動や兼任、中途入社に対応できていない
異動や兼任といった組織の変更があると、「誰が誰を評価するのか」という関係性が変わります。
関係性の変化に対応できず、誰が誰を面談するのかが曖昧になり、気づけば面談がされないまま、評価の時期を迎えてしまうこともあります。
異動によって変わるのは関係性だけではありません。職種を越えた異動の場合、評価項目・評価基準も変わります。
例えば、営業から総務へ異動した場合、営業で高い評価を得ていた社員が異動先の総務でも同じように高い評価を得られるかはわかりません。
異動によって評価が影響を受ける部分について対応を曖昧にしていると、異動した社員や部門を兼任している社員から評価に対して不満が出るでしょう。
他にも、中途入社の社員への制度説明や目標設定が忘れられてしまい、中途社員の参加が遅れ、エンゲージメントや定着スピードにも影響します。
トラブル3:評価シートなどの提出物が予定どおりに出ない
保存場所>~~~~
提出場所>~~~~
上記のように、事前に期限も方法も連絡しているのに、期限がすぎても評価シートがでてこないというトラブルが起こります。
トラブル4:面談をしていない
評価制度の運用において、面談は重要な役割を果たします。面談を通じて「目標設定」「成長に向けた課題の共有」「アドバイス」「評価結果の伝達と納得感の醸成」を行います。面談こそ、評価制度の運用そのものであると言えます。
担当者となったあなたは、今後、決められたスケジュールに沿って、「●月×日までに振り返り面談を実施してください」とアナウンスをすることになるでしょう。
しかし、多くの面談が予定通りに実施されません。
面談が行われないと運用が滞るだけでなく、「会社への不信」といった悪影響をもたらします。
トラブル5:面談をしているのに不満がでる
面談をしているのに不満がでることもあります。具体的には次のような不満です。
評価の基準が曖昧
人事制度についてアンケートを行ったとき、不満のトップとして常に挙がるのが「評価基準の曖昧さ」です。
「自己評価では4点なのに、上司の評価は2点だった」というような評価者と被評価者の間での評価の「ものさし」にズレが生じていると、面談をしていても不満は解消しません。
参考 「人事評価制度」に関する意識調査Adecco Group評価者ばかりが話している
一方的に評価者が話しているだけの面談は、被評価者の頭の整理が進みません。
結果として納得感が低くなり、助言やアドバイスを行っても、実行されません。
ダメ出しばかりで褒めがない
あなたならダメ出しや、課題しか伝えられない面談でやる気になるでしょうか。
それがどんなに的を射た指摘だとしても、多くの人は面談の場に苦手意識をもつでしょう。
普段の報連相と変わらない
「あの件はどうなった?」、「あの提案資料はいつまでにできるの?」と通常業務における報連相の延長になってしまう面談があります。
被評価者にとっては、いつもの報連相と何が違うのか分からず、何のための時間だったのかと不満につながります。
面談内容を覚えていない
「前も全く同じ話をしたな・・・」、「前といっていることが全然違う」という不満です。これは、評価者側、被評価者側ともに起こりえます。
面談内容を覚えていないため、課題を踏まえた行動計画も曖昧となることが多く、育成という観点でも効率が悪いです。
面談の意図がわからない
忙しいなか時間を設けたにも関わらず、雑談ばかりで何のための面談かわからない。面談中も他の業務のことで頭がいっぱいで、集中していないという状態です。
面談に臨む当事者がこういった状態では、評価者も被評価者も面談に価値を見出せません。特に被評価者からは、「忙しいのだからこの面談の時間も、仕事に当てたかった」と不満がでます。
人によって面談にムラがある
「みんなは面談に30分かかるのに、私はいつも5分で終わる。」
「私は毎回2時間も面談に取られる」
「あの評価者は評価理由も伝えているらしいが、私の評価者は評価結果しか教えない」
このように、評価者や被評価者によって面談にかける時間や内容にムラがあります。
評価理由といった伝えるべき事柄や、面談に費やす時間に個人差があると、評価者への不満や不信感につながります。
評価制度運用を妨げる4つの原因
このようなトラブルや不満が発生する根本的な原因は次の4つにあります。
1.目的やゴールに対する理解不足
「制度について知らないからできない」という状態です。
評価制度の目的やゴール、評価項目や評価基準について知らない。または知る必要性を感じていないことで、理解に不足があると、運用は十分に行われません。
制度が浸透していない、「絵に描いた餅」になっている状態と言えるでしょう。
2.スケジュールに対する理解不足
「制度については知っているが忘れてしまう」という状態です。
制度の内容について理解していても、様々な業務に忙殺されて、面談や評価のスケジュールを忘れてしまい、行うべきことが後回しになることで、運用が滞ってしまいます。
3.評価や面談に対するノウハウ不足
「行っているのに、上手くいかない」という状態です。
面談も評価も行っているのに、人材育成や成果に繋がっていないという場合はノウハウ不足が原因です。
ノウハウが不足していると、面談が効果的に行えないため、被評価者が面談の価値を感じづらくなります。
また、評価者側も面談へ苦手意識をもってしまい、つい「忙しいから」と他の業務を優先してしまうこともあるでしょう。
4.当事者意識の不足
「他がやらないので、自分もやらない」あるいは、「他がやるから、自分はやらなくてもいいだろう」と人任せになっている状態です。
これが原因として最も深刻です。
評価制度は、本来、全社員が当事者ですが、当事者意識が不足し、担当者頼みの運用になれば、制度についても、スケジュールについても理解は進まず、ノウハウも向上せず、運用は上手くいきません。
特に、経営陣が当事者として、面談や評価を行うことは大きな意味をもちます。
経営陣が率先して行うことは、管理職に対する実施リマインドになり、管理職が被評価者として面談を受けた経験が、評価者となった際の面談ノウハウにもなるからです。
マニュアルのレイアウトと全体像
評価制度を妨げる原因を解消するために、本記事では評価制度運用マニュアルの作成と活用を提案します。
マニュアルを活用すれば、誰であっても一定の水準で適切に面談や評価に対応できるようになるからです。
ただし、マニュアルは使われなければ意味がなく、作って渡すだけでは、読んでもらえません。
また、読み合わせの場で、本当に「読むだけ」であればすぐに内容を忘れてしまうでしょう。
学習と同様で、いかに能動的に取り組めるかが重要です。
「目的とスケジュールへの理解不足」、「ノウハウ不足」、「当事者意識不足」といった原因を解消するには、次の4点を意識する必要があります。
項目ごとに目的とゴールを載せる
まず、「目的やゴールへの理解不足」を解消するためには、それぞれの項目で「実施する目的」や、「このページを読むことで何を理解して行動してほしいのか」を示すことが重要です。
目的を理解することが、自発的な行動への動機づけになります。一方で、もしも目的が明確に示せないような実施事項があるなら、本当にその項目が必要なのかどうかを再検討することも必要でしょう。
実施スケジュールとリマインド時期を載せる
次に、「スケジュールに対する理解不足」を解消するために、実施に対する年間スケジュールを記載するだけでなく、リマインド時期や該当ページについても記載しましょう。
「いつごろ実施事項についてリマインドを行うのか」、「その項目はマニュアルの何ページに記載されているのか」を合わせて記載することで、復習すべき項目と時期について可視化することができ、属人化することなくリマインドができます。
具体的なノウハウを載せる
「ノウハウ不足」の解消のためには、スケジュールや実施事項といった、手順説明だけのマニュアルは避けましょう。
どうしたら効果的な評価や面談ができるかといったノウハウとして、例えばヒアリングの仕方や、評価エラーについての基礎知識についても記載します。
また、各ページにメモ用のスペースを十分に用意します。面談や評価における自分自身の傾向や対策、他者の経験談やノウハウを書き込めるようにすることで、「使う人が完成させるマニュアル」になります。
使用者が考える要素を作る
「当事者意識不足」を解消するためには、マニュアルを読み合わせる時点から、能動的な参加を促す必要があります。
そのために、テキストの重要な部分を穴埋めにしたり、ディスカッションを行うような演習問題を取り入れたりすることがおすすめです。
それが、「読むだけ、聞くだけ」ではなく、「考えて、学ぶ」ことにつながります。
トラブルを避ける評価制度運用マニュアル例
ここからは、マニュアルを例として示しながら、紹介した5つのトラブルを回避するためのポイントを解説します。
以下は、評価制度運用マニュアルの基本的な目次構成です。会社によっても制度の内容は異なりますが、最低限載せるべき項目の参考としてください。
なお、会社全体に制度が浸透していくためには、最終的に被評価者側のマニュアルも作成すべきですが、まずは評価者側の意識や行動を変えることが重要です。
そのため、本記事では評価者を対象としたマニュアルについて解説します。
対策1:目標管理制度において目標が決まらない
目標を設定する目的は、会社の成果につながる育成をすることにあり、目標が決まらないために運用が始まらないということは避けなければなりません。
滞りなく運用をスタートするために、遅延による運用全体への影響を示し、目標の検討を始める時期についても決めておきましょう。
マーケットが急激に冷え込むなど外部環境の変化などで、目標を決めきれないときもあります。やむを得ず目標が決まらなかった場合のイレギュラー運用については、会社ごとに検討し対応を決めるようにしましょう。
- 決まっている会社の方針や方向性に合わせて部分的に始める
- 前年度の個人目標の振り返りから、取り組むべき課題を目標として暫定的に設定する
- 毎年目標にあがっているテーマからとりあえず始める
例えば、上記のような対応も可能でしょう。
最も避けるべきは、運用が始まらず、「どこに向かえばいいのか、何をすればいいのかわからない」という空白の状態が生まれることです。
対策2:異動や兼任、中途入社への対応
目標設定と同様、異動や兼任、中途入社があった場合の確認事項や対応方法も前もって定め、マニュアルに載せるようにしましょう。
評価者と被評価者の関係性については、特に兼任が発生したときに曖昧になります。
部長が課長を兼任しているというような縦の兼任であれば、部長が係長以下の評価者であるとリマインドしましょう。
また、A営業課とB営業課の2つの課長を兼任しているというような、横の兼任であれば、A営業課の評価者を課長が、B営業課の評価者は部長とすることも、A・Bともに課長が評価者になることも考えられます。
会社の規模や部下の人数などに応じて各社で対応を決めるべきでしょう。
異動で評価者の変更がある場合、異動前と異動後の評価者が引継ぎを行うことで、評価者のスムーズな移行が可能になります。被評価者の課題や強み、関係構築に必要な注意点などを共有しておきましょう。
異動による評価の変動についても前もって決めます。
異動すると、新しい仕事に慣れないためパフォーマンスが上がらず、結果的に人事評価が悪くなることがよくあります。
この問題を放置すると、異動を嫌がる社員が増えてしまい組織が硬直するため、対応が必須です。
例えば、「異動後1年は、実際の評価をしたうえで、その評価が異動前に比べて下がる場合は異動前の評価で据えおく」とすれば、安心して職種を越えた異動にもチャレンジできます。
中途入社についても同様に、人事制度説明会や目標設定の時期について決めておくと、取りこぼすことなく、目標設定や面談を進められ、会社理解やエンゲージメントの向上につながります。
対策3:評価シートが提出されない
十分にリマインドをしているのに評価シートなどの提出物がでないという場合、その原因は、「記入方法がわからない」、「資料の保管場所や提出方法がわからない」といったノウハウ不足です。
最近は様々なシステムやツールを同時に導入している会社も多く、どこに何のデータが保管されているのかがわからなかったり、何かしらのトラブルで保管場所にログインができなかったりして、評価シートなどが提出ができていないことがあります。
特に年功の会社では社長や役員などの幹部や管理職のITリテラシーが低く、システムの使い方がわからないということもあるでしょう。
そのため、マニュアルには記入例と資料保管場所、提出方法を載せるようにしましょう。その際、システムの使い方や操作方法について、図を用いるほうがわかりやすいマニュアルになります。
提出物や実施事項についてアナウンスを行うときも、フォーマットと記入例を添付し、提出の目的や遅延した場合の影響についても伝えましょう。
1年の評価を決める時期になりました。●月△日に評価会議を行います。
事前に1次評価結果を集計したうえで、ディスカッションを行います。
評価の決定が遅れると昇格者への内示も遅延します。
そのため、必ず●月×日までに1次評価者は評価シートを提出してください。
提出用のファイルと記入例を添付します。
ファイル名:[部署]_[課]_[名前]_1次評価シート
対策4:面談していない
面談を確実に実施するために、評価制度の目的や面談・評価の必要性を、丁寧に示しましょう。
社員を評価する目的は、人を育てて成果を出し、会社の業績向上につなげることにあります。評価は目的ではなく、成果を出すための手段です。
心理学に「ジョハリの窓」という対人関係における気づきを表にしたものがあります。
これは、1955年にアメリカの心理学者のジョセフ・ルフト氏とハリ・インガム氏が発表した、「自分からみた自分」と「他人から見た自分」について、対人関係における気づきを表にしたものです。
- 「秘密の窓」:自分が知っていても他人は知らない領域
- 「盲目の窓」:他人は知っていても自分は知らない領域
- 「未知の窓」:自分も相手もしらない領域
- 「開放の窓」:自分も相手もよく知っている領域
対人関係には上記の4つの領域があり、自覚している自分の強みや課題と、他者から見えている強みと課題は必ずしも一致しないということがわかります。
なかでも、「開放の窓」を広げていくことは、良好な人間関係や、仕事における強みや課題の整理につながります。「開放の窓」を広げるために、客観的な評価を知ることのできる人事評価や面談が必要なのです。
目標設定や振り返り面談、評価、フィードバック面談がそれぞれ独立して存在するのではなく、PDCAの要素として連動していることを理解しましょう。
そのうえで、「目的はわかっていても、やり方がわからない」というノウハウ不足を解消することも忘れてはなりません。各面談についてフローだけでなく会話例も用意し、演習問題をディスカッションすることで、評価者のスキル向上を図りましょう。
対策5:面談しているのに不満がでる
「評価基準の擦り合わせ」と「面談の望ましい進め方」という2つのアプローチが必要です。
評価基準の擦り合わせ
「評価基準が曖昧」という不満は、「評価者が評価理由を伝えていないこと」と、「評価者と被評価者で評価のものさしが共有できていないこと」が原因です。
評価者は、自社の評価項目について、その内容と「どのような状態・言動が何点なのか」という会社としての期待値を理解しなければなりません。
また、評価者同士で認識にズレがあると評価の甘辛につながります。評価項目や評価基準のマニュアルを定期的に読み合わせ、評価者間でも「ものさし」の擦り合わせを行いましょう。
読み合わせを行い面談に臨むことで、会社として求める基準を被評価者に具体的に提示しながら評価理由を伝えることができます。例えば、以下のような指導なら、どうでしょうか。
上司:今期、Aさんは報連相について自己評価で4点をつけていたね。Aさんとしては、報連相が4点の状態、つまり、周囲の見本になっている状態はどんなイメージをしている?
部下:そうですね…結論から簡潔な報告ができていれば、4点ではないかと思います。
上司:確かに結論から簡潔な報告をすることは重要だね。だが会社として、それはまだ3点の状態なんだ。
部下:そうだったんですね。
上司:4点の報告だと、例えば「自分の意見や提案を添えて報告する」というようなことを期待しているよ。Aさんなら来期はここに向かっていけると思うから頑張ろう。
このように面談で伝えられれば、被評価者は、少なくとも「報連相」に関して3点である理由や、会社が求めているレベルを理解でき、「評価基準が曖昧」といった不満は軽減されます。
面談の望ましい進め方
「面談の望ましい進め方」というアプローチも欠かせません。
「話を聴いてくれていない」「何のための面談かわからない」というような不満は、事前準備や進め方の工夫、スキルによって解消が可能です。
まず、「何のための面談かわからない」という不満を防ぐために、面談を始めるときに面談実施の目的や今日の面談のゴールは何かということを評価者と被評価者双方で確認して進めましょう。
そして、どのような面談であっても共通して「実施すべきこと」、「実施してはならないこと」があります。
例えば、「アポを事前に取る」、」「場所を用意する」、「面談内容を記録する」というようなことは、どの面談であっても実施すべきことです。
反対に、「一方的に評価者が話す」、「頭ごなしに否定する」、「評価項目に沿っていない」というような面談はNGです。
こういった注意事項をマニュアルにし、周知すれば、評価者によるムラなく、満足度の高い面談にしていくことができます。
マニュアル使用時のポイント
最後に、マニュアルを活用するためのポイントについてまとめておきます。
面談実績や提出物の回収状況は担当者がチェックする
面談が行いやすいように、提出がしやすいようにと、いくら工夫をしても、面談の実施にムラがある人や提出物を遅れて出す人は残念ながらいます。
そのため、担当者となったあなたには、面談実績や提出物の回収状況をチェックする仕事があります。チェックした実施状況や回収状況を評価者全体にアナウンスし、当事者としての意識を喚起しましょう。
当事者意識が希薄な評価者が浮き彫りにすることで、リマインドを重点的に行うこともできます。
一年に一回はマニュアルを更新する
更新のないマニュアルは、いずれ使われなくなってしまいます。そのため、必ず年1回は、評価制度運用を行う中での変更点や、追加で記載すべきポイントがないか見直しを行ってください。
ある会社では、人事制度について、年1回見直しを必ず行い、内容に変更がなくても前年の取り組みについてどんなところが良かったか、どんな課題があるのかといった振り返りを人事制度の資料に載せています。
振り返りをすることも素晴らしいですが、「必ず何か更新する」という意味合いとしても素晴らしい取り組みだと思います。
必要な時期に、必要な項目を読み合わせる
月例会議などの定期的に実施されている会議のなかで時間をとり、時期に合わせて必要な項目の読み合わせを実施します。
定期的に読み合わせを行うことが、スケジュールや行うべきことのリマインドになります。
特に評価項目や評価基準については、読み合わせをすることで、会社として何を評価しているのがリマインドでき、評価項目に沿った面談・指導が行えるだけでなく、評価者間での評価のズレを軽減することにもつながります。
能動的な読み合わせの場をデザインする
単にマニュアルに書かれていることを順番に読んでいくのではなく、能動的な学びや理解を深める場として読み合わせの時間をデザインしましょう。
- 穴埋めの解答者を指名する。
- 面談や評価についての悩みや気づきについて意見交換やディスカッションを行う
- それぞれの体験や事例を織り交ぜながら、マニュアルについて説明をしてもらう
上記のような工夫をしながら、能動的に考え、マニュアルを深く理解できるようにすることで、効果的な運用になります。
社長や役員も読み合わせに参加する
「上がやらないので下もやらない状況」を作り出さないためには、社長や役員が評価者・被評価者の当事者であるということを理解する必要があります。
「これは全社で取り組むことだ」という姿勢を担当者が毅然と示し、経営陣がマニュアルで定めスケジュールで評価や面談を率先垂範すれば、評価制度運用が重要な施策であるということが全社に伝わり、会社の空気は変わります。
まとめ
今回は、評価制度運用で起こるトラブルと原因について解説し、マニュアルを用いた解決策を紹介しました。
トラブルの原因は4つありますが、なかでも、「当事者意識不足」は根幹的な原因であり、最も解消すべき原因です。
今回紹介した「当事者として考え、完成させ、使うためのマニュアル」を作ることが、この根本原因の解消に役立ちます。
担当者がリーダーシップを発揮しながらも、担当者頼りにならず、現場の社員を当事者として巻き込んだ運用ができるかどうか。
特に、社長や役員が率先して参加するかどうかが「人が育ち、会社の成果につながる評価制度運用」の要だということを忘れずに、運用を成功させましょう。