「人事評価への不満」は、会社の成長を止めることもある重大なリスク因子です。
2021年に実施された最新調査によれば、実に45%の社員が人事評価に不満を抱えています(株式会社識学調べ)。
もし社内で人事評価に対する不満が聞かれるようであれば、早急に実態を把握し、手を打つ必要があります。
「人事評価に不満はつきもの」程度の軽い受け止めで放置していると、社員の離職や業績悪化につながるリスクがあります。
そこで本記事では、人事評価の不満についてその実態から、自社の不満を可視化する方法まで解説します。
- 人事評価の不満の実態がデータから把握できる
- 不満を放置するとどうなるか解説
- 自社の不満を可視化する方法がわかる
「自社の人事評価の不満問題を解決して強い組織を作りたい」…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、人事評価の不満について理解が深まり、自社特有の課題がどこにあるのか、考察できるようになります。
人事評価の不満を解決できれば、組織の生産性は高まり業績向上につながります。
それでは、さっそく見ていきましょう。
ー 目次 ー
1. 人事評価に不満を持っている社員は45%(2021年調査結果)
最初に、人事評価に対する不満の実態からご紹介しましょう。
1-1. 半数近くが人事評価に不満を抱えている実態がある
人事評価への不満に関する調査はいくつか存在しますが、最新版として2021年に実施されたデータを見てみましょう。
株式会社識学が2021年8月26日に実施した「人事評価の“モヤモヤ”に関する調査」によると、自社の人事評価に対して、やや不満・不満と答えた人の割合は【45%】でした。
出典:識学のプレスリリース
およそ半数近くの人が、人事評価に不満を抱えていることがわかります。
また「満足」と答えた人は【11.5%】です。“何の不満もない状態の人は1割程度しかいない”という実態も読み取れます。
1-2. 多い不満の内容
では、不満を抱えている人は、具体的に何に対して不満なのでしょうか。
以下が、その回答となります。
出典:識学のプレスリリース
トップ5の不満は、
- 評価の基準が不明確(48.3%)
- 評価結果が報酬に反映されない(30.9%)
- 評価する人によって厳しさに差がある(28.1%)
- 現場を知らない上司が評価する(27.0%)
- 人事評価がどう活用されるのかわからない(25.8%)
…となっています。
なお、他の会社が以前に行った調査でも、順位に若干のズレはありますが、ほぼ同様の結果となっていることがわかります。
参考:アデコによる人事評価制度に関する意識調査
参考:明日のチームによる中小企業の人事に関する調査
この結果から読み取れることは大きく分けて2つです。
1つめは、「なぜ、自分がこの評価なのか」に対して納得できない場合に、不満が大きくなるということです。
基準が不明確である・評価者の評価にバラつきがある・現場を知らない上司に評価される、といった不満の根本原因は、「納得できない評価」にあるといって良いでしょう。
2つめは、「評価されたところで、それが自分にとってのメリットにならない」と不満になるということです。
仮に納得感のある高評価を得たところで、それが給料アップなどの具体的な報酬に反映されなければ、それ自体が不満になります。
むしろ、高評価を得るほど「これだけ評価されているのに、なぜ給料を上げてくれないんだ」と不満が募るケースが多いでしょう。
2. 人事評価への不満を放置してはいけない2つの理由
前述の調査結果を見て、「他社でも約半数の社員が人事評価に不満を持っている。自社の社員が不満を持っていたとしても、しょうがないか、、、。」と考えた方もいるかもしれません。
しかし、人事評価への不満を放置することは、組織にとって大きなリスクです。
その理由を解説します。
- 芋づる式退職で職場崩壊するリスクがある
- 目には見えない生産性低下が組織を蝕む
2-1. 芋づる式退職で職場崩壊するリスクがある
1つめの理由は「芋づる式退職で職場崩壊するリスクがある」です。
“社員が会社に対して抱く不満”にはさまざまな種類がありますが、“人事評価への不満”は「辞めたい」気持ちの連鎖を起こし、優秀な社員が相次いで流出する事態に陥る危険があります。
なぜなら、人事評価に対する不満を抱くタイミングは、全社員で一致するからです。
人事評価に対する不満は、人事評価が行われる時期に全社員一緒にピークを迎えます。
ひとりだけで抱えている不満ならこらえられても、他の社員と共感することで不満が増大していくケースは実際によく見られます。
誰かが辞めていくのを見ると、さらに不満感が増していき「私も辞めたい」と芋づる式に退職者が出るリスクがあります。
人事評価に対する社員の不満を甘く見ていると、組織ごと崩壊することもあると、認識しておきましょう。
2-2. 目には見えない生産性低下が組織を蝕む
2つめの理由は「目には見えない生産性低下が組織を蝕む」です。
人事評価は、社員にとって報酬と直結しています。報酬はモチベーションの源泉です。
ここでいう報酬は、給与などの金銭的報酬だけでなく、役職・地位、他者からの評価・感謝、やりたい仕事をできること、充実感なども含まれます。
「人事評価に不満がある」とは、すなわち「その会社での報酬に不満がある」とも言い換えられ、モチベーションは下がっていきます。
仮に個々の社員の不満は「やや不満」程度だったとしても、その分、モチベーションが下がれば組織全体の生産性低下は大きくなります。
やっかいなのは、モチベーション低下による生産性低下は、目に見えにくい点です。
一気に組織崩壊とは行かなくても、ジリジリと業績が悪化し、気付いたときには手遅れ——という事態にもなりかねません。
3. 人事評価への不満を解消する方法 4ステップ
では人事評価への不満は、具体的にどう解消していけば良いのでしょうか。
ここでは4ステップで解決する流れをご紹介します。
- ステップ1:今ある不満を可視化する
- ステップ2:不満の真因を突きとめる
- ステップ3:真因別に対策を打つ
- ステップ4:対策のプロセスをオープンにする
3-1. ステップ1:今ある不満を可視化する
1つめのステップは「今ある不満を可視化する」です。
まずは、自社内ではどの程度の人が不満を抱えていて、その内容は何なのか、現状把握を行います。
具体的なやり方としては、匿名のアンケート調査を行いましょう。
その際におすすめなのは、既存のアンケート調査と同じ調査票(質問紙)を使うことです。
本記事の冒頭で株式会社識学の調査結果をご紹介しましたが、例えばこの調査のうち自社にも適用できる設問はまったく同じにして社内アンケートを行うのです。
▼ 「人事評価の“モヤモヤ”に関する調査」調査票(一部)
- Q2. あなたは自社の人事評価について満足していますか。
- Q3. あなたが自社の人事評価について不満に思うことをお答えください。
- Q4. あなたは人事評価の結果が給与や待遇にどのように反映されるか知っていますか。
- Q5. あなたの人事評価を行う評価者の評価能力について、1~10点でお答えください。
- Q6. あなたの人事評価を行う評価者の評価能力について不安や不満に思うことをお答えください
出典:識学のプレスリリース
既存のアンケートと同じ調査票を使うメリットは、調査結果の評価がしやすくなることです。
世間一般の平均値と比較して自社が高いのか・低いのか容易に判断できるため、自社の課題を見つけやすくなります。
3-2. ステップ2:不満の真因を突き止める
2つめのステップは「不満の真因を突き止める」です。
ステップ1で現状把握した結果を踏まえ、不満の真因はどこにあるのか、考えていきましょう。
例えば、識学の調査結果では、不満の原因は以下の通りとなっていました。
- 評価の基準が不明確(48.3%)
- 評価結果が報酬に反映されない(30.9%)
- 評価する人によって厳しさに差がある(28.1%)
- 現場を知らない上司が評価する(27.0%)
- 人事評価がどう活用されるのかわからない(25.8%)
出典:識学のプレスリリース
自社の調査結果では、どういった不満が多いのか把握したうえで、さらに深掘りすることが大切です。
例えば「評価の基準が不明確」という不満が多かったのであれば、「なぜ、評価の基準が不明確と感じられているのだろうか?」と深掘りしていくことで、真因(本当の原因)にたどり着けます。
深掘りしていく際には、社員から直接ヒアリングすることが有益です。
対話を通して、アンケート調査だけでは見えなかった実態や意識をより深く理解できるからです。
3-3. ステップ3:真因に対して対策を打つ
3つめのステップは「真因に対して対策を打つ」です。
ステップ2で真因を明らかにできたら、その真因を解決するための策を講じていきましょう。
例えば「評価の基準が不明確」という不満の真因が、「そもそもの評価制度に不備がある」となれば、制度の再構築に取り組みます。
3-4. ステップ4:対策のプロセスをオープンにする
真因に対して対策を打っていくプロセスは、ぜひ社内でオープンにしましょう。
「●●という問題が把握できたため、××の対策を行います」と社員にあえて見せることが、人事評価に対する不満の解消にも役立ちます。
現在は不満があったとしても、「これから良くなっていく、良くなろうとしている」ことさえわかれば、モチベーション維持に繋がるためです。
4. 人事評価への不満には会社を成長させるヒントが詰まっている
そもそも人事評価は何のためにあるのか?といえば、その目的は「成果を出すため」にあります。
しかしながら、多くの企業において人事評価が社員の不満の火種となり、モチベーションを下げ、成果を下げる結果になっているのは、由々しき事態といえるでしょう。
逆にいえば、人事評価への不満を解消して本来の「成果を出す」人事評価制度を構築できたなら、それは企業の成長に直結します。
5. まとめ
2021年に実施された最新調査では、人事評価に不満を持っている社員は45%という結果が出ています。
多い不満の内容は以下の通りです。
- 評価の基準が不明確(48.3%)
- 評価結果が報酬に反映されない(30.9%)
- 評価する人によって厳しさに差がある(28.1%)
- 現場を知らない上司が評価する(27.0%)
- 人事評価がどう活用されるのかわからない(25.8%)
出典:識学のプレスリリース
人事評価への不満を放置してはいけない理由として以下が挙げられます。
- 芋づる式退職で職場崩壊するリスクがある
- 目には見えない生産性低下が組織を蝕む
人事評価への不満を解消する方法を4ステップでご紹介しました。
- ステップ1:今ある不満を可視化する
- ステップ2:不満の真因を突き止める
- ステップ3:真因に対して対策を打つ
- ステップ4:対策のプロセスをオープンにする
人事評価への不満には会社を成長させるヒントが詰まっています。
ぜひこの機会に人事制度を見直して、成長の礎となる組織づくりに取り組んでいきましょう。