人事評価エラー7つとその対策 — ハロー効果・寛大化傾向・期末誤差 他

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人事評価エラーとは、企業において人事評価を行う際に、評価を行う評価者の心理が影響して、実態とは異なる評価をしてしまうことを指します。

例えば、突出した長所に引っ張られて全体を高評価にしてしまう「ハロー効果」、自分の能力を基準として評価してしまう「対比誤差」、期末の出来事に強く影響されてしまう「期末誤差」などがあります。

本記事では、人事評価を行うなら必ず知っておきたい7つの評価エラーをご紹介します。

  • ハロー効果
  • 中心化傾向
  • 寛大化傾向
  • 逆算化傾向
  • 論理誤差
  • 対比誤差
  • 期末誤差
本記事のポイント
  • 陥りやすい人事評価エラーを具体的に解説
  • どうすればエラーを回避できるのか対策を紹介
  • 知識を身につけて適切な評価ができるようになる
 
「人事評価エラーについて詳しく知りたい」「自社の人事評価のエラーをなくして精度をあげたい」…という方におすすめの内容となっています。

人事評価エラーをなくすためには、エラーの種類を知ることが第一歩です。

一通りこの解説に目を通していただくだけでも、大きく意識が変わるはずです。

さっそく見ていきましょう。

1. 人事評価エラーとは何か?基礎知識

人事評価_エラー_1章

冒頭でも軽く触れましたが、まずは「人事評価エラー」とは何なのか、基礎知識からご紹介します。

1-1. 人事評価エラーとは

人事評価エラーとは、企業の人事評価において、部下を評価する立場の人(評価者)が持つ無意識の偏見・先入観・バイアス・認知のゆがみなどによって、評価を誤ることを指します。

人事評価エラーの特徴は、原因が「無意識」にあることです。

無意識だからこそ、評価者自身では指摘されても誤りに気付きにくく、これがやっかいだといえます。

1-2. 人事評価エラーが引き起こす問題

組織で人事評価エラーが起きると、以下が問題です。

  • 誤った評価結果をもとに、社員の給料や役職、配置を決めてしまう
  • 誤った評価をされた社員が精神的にストレスを抱えたり、会社に不満を抱いたりする

簡単にいえば、会社の人事評価そのものを、誰も信頼できなくなります。

人事評価エラーを放置すると、社員によって不当な利益を得る人・不利益を被る人が出て、公平性で正確な人事評価制度の運用ができなくなります。

人事評価エラーの回避は、あらゆる企業にとって重要な課題です。

2. 人事評価エラーを防ぐためにすべきこと

人事評価_エラー_2章

では人事評価エラーを防ぐために、何をすべきでしょうか。

それは「無意識で起きていることを無意識のままにせず、顕在意識のもとに引き上げて意識化すること」です。

具体的には次の2つがポイントです。

  • 誰もが人事評価エラーに陥ることを知る
  • 人事評価エラーの内容を具体的に認識する

2-1. 誰もが人事評価エラーに陥ると知る

1つめは「誰もが人事評価エラーに陥ると知る」ことです。

私たちは人間である以上、無意識に抱えている思考パターンや感情に左右されず、完璧な評価をすることは不可能です。

「自分はエラーに陥るわけがない」と過信すると、必ず人事評価エラーを起こします。

まずは「意識的に注意しない限り、私たち全員が、必ず人事評価エラーを起こす」という事実を知ることが大切です。

2-2. 人事評価エラーの内容を具体的に認識する

2つめは「人事評価エラーの内容を具体的に認識する」ことです。

無意識に起きる人事評価エラーの存在を認識できたら、次にすべきことはその内容把握です。

私たちが陥りやすい人事評価エラーには一定のパターンがありますので、そのパターンを先に知っておくと、意識的に回避できるようになります。

▼7つの人事評価エラー

  • ハロー効果
  • 中心化傾向
  • 寛大化傾向
  • 逆算化傾向
  • 論理誤差
  • 対比誤差
  • 期末誤差

上記7つについて、次章から解説していきましょう。

3. 人事評価エラー(1)ハロー効果

人事評価_エラー_3章

最初に「ハロー効果」から見ていきましょう。

3-1. ハロー効果とは

ハロー効果とは、ひとつでも突出した良い点があると全体が良く見えてしまうエラー(あるいは悪い点があると全体が悪く見えてしまうエラー)をいいます。

ここの「ハロー」はhallo(こんにちは)ではなく、halo(光輪、後光)であることを押さえると、イメージしやすいはずです。

人事評価_エラー_3章_ハロー

ハロー効果に陥ると、例えば、「一流企業の出身者だから、仕事ができるはず」「過去に大失敗したことがあるから、今回もミスが多い」というように、ひとつの物事を全体に影響させて誤った評価をしてしまいます。

▼ハロー効果の例

  • 一流大学・一流企業の出身者→実態よりも仕事ができると評価する
  • 過去に大きなミスをしている→実態よりもミスが多いと評価する

過去の来歴や強い印象を与える事柄から影響を受け、実態よりも良く(悪く)評価してしまうことがハロー効果のエラーです。

3-2. ハロー効果の対策

ハロー効果の対策としては、2つのポイントが重要です。

1つめは評価項目それぞれを独立させて評価すること、2つめは批評価者の過去と現在を意識的に切り分けて捉えることです。

例えば、評価項目に、

  • リーダーシップ
  • コミュニケーション能力
  • 協調性

の3項目があったとしましょう。

過去に強いリーダーシップを発揮した人物であれば、(評価者が評価エラーを意識しなければ)自然とすべての項目に高評価をつけてしまいます。

そこで「ハロー効果」というリスクがあることを思い出し、評価項目ひとつずつを独立した視点で評価することで、ハロー効果を回避できます。

加えて、いったん「被評価者(部下)の過去」は頭の中から消し去って、「今回の評価の対象期間」の被評価者の行動や成果を、曇りのない目で見つめるようにします。

対策
  • 評価項目ひとつずつを、それぞれ独立させて評価する(相互に影響させない)
  • 被評価者の過去と現在は意識的に切り分けて捉え、対象を評価期間中に限定して評価を行う

4. 人事評価エラー(2)中心化傾向

人事評価_エラー_4章

次にご紹介するのは「中心化傾向」です。

4-1. 中心化傾向とは

中心化傾向とは、評価をする際に真ん中の評価を多く付けやすいエラーのことです。

▼中心化傾向の例

  • 「5・4・3・2・1」の5段階評価で「3」ばかり多くなる
  • 「可もなし不可もなし」の評価をしてしまう

中心化傾向が発生しやすいのは、評価者が事なかれ主義で無難な評価をしたがる性質を持っていたり、部下の評価を適切にできていないためにどう評価して良いかわからなかったりする場合です。

「良い」とも「悪い」とも判断しないので、ある意味では“評価から逃げている”のが中心化傾向です。

4-2. 中心化傾向の対策

中心化傾向の対策としては、まず「評価という業務を、まっとうに行う義務がある」ことを評価者として意識しなければなりません。

きちんと評価せずに無難な評価に逃げていては、評価者として与えられた業務を遂行していないことになります。

一方、「評価に取り組もうとしても、どう判断して良いのかわからずに、結局真ん中の評価をしてしまう」というケースでは、評価者としての評価スキルが不足しています。

自信を持って評価を行うために、評価者研修の受講を検討してみましょう。

対策
  • 無難な評価に逃げずに正しく評価することが自分の業務であると意識を改める
  • 評価者研修の受講などを通じて評価者としてのスキルを高め、自信を持って評価できるようにする

5. 人事評価エラー(3)寛大化傾向

人事評価_エラー_5章

続いて「寛大化傾向」を解説します。

5-1. 寛大化傾向とは

寛大化傾向とは、評価が甘くなり実態よりも良い評価をするエラーをいいます。

▼寛大化傾向の例

  • 仲良しの部下の会社からの評価が下がったらかわいそうなので評価を甘くする
  • 自分が嫌われたらイヤなので厳しい評価はしない
  • 辛い評価をして部下から反論されたら困るので甘めに評価しておく

寛大化傾向は、「かわいい部下のために、できるだけ有利な評価をしてあげたい」という部下を思う心理が働くこともあれば、「厳しい評価をすると、自分が嫌われてしまう」という自己防衛の心理が働くこともあります。

多かれ少なかれ誰もが抱えている心理だからこそやっかいで、多くの人が陥りやすいエラーです。

5-2. 寛大化傾向の対策

寛大化傾向に陥らないためには、「甘い評価は、本当の意味では部下のためにならない」ことを認識する必要があります。

実態にそぐわない甘い評価によって、部下が成長するチャンスを潰していることに気付きましょう。

適切な評価がなければ課題が発見できず、成長の種が生まれないからです。

同時に、自己保身や部下をかばうための甘い評価は、組織に対しての虚偽申告ともいえます。

評価という業務に誠実に向き合い、自分の職務をまっとうすることを心掛けてください。

対策
  • 甘い評価ではなく正しい評価がかわいい部下を成長させることを理解する
  • 実態を正しく評価しないことは虚偽申告であると肝に銘じる

6. 人事評価エラー(4)逆算化傾向

人事評価_エラー_6章

「逆算化傾向」を見てみましょう。

6-1. 逆算化傾向とは

逆算化傾向とは、先に結論となる総合評価があり、その評価から逆算して、つじつまが合うように各評価項目の評価をするエラーをいいます。

例えば、人材配置の都合で「来期はどうしてもマネジャーに昇格させたい」などの意図に必要な総合評価の得点(例:85点)があり、85点をクリアするように各評価項目を評価する、といったケースが逆算化傾向にあたります。

▼逆算化傾向の例

  • 来期はマネジャーに昇格させたいので、昇格要件に合うように評価する
  • 賞与が減額されない範囲で評価点をつける
  • 降格処分になるように評価項目を調整する

本来は、各評価項目の評価を積み上げたうえで導き出すべき総合評価を、評価者の思惑によって意図的にねじ曲げてしまうエラーが逆算化傾向です。

6-2. 逆算化傾向の対策

逆算化傾向を防ぐためには、「総合評価からつじつま合わせで評価項目を逆算で評価するやり方は、やってはいけない」と評価者が十分に認識することです。

ここまでにご紹介したハロー効果や中心化傾向、寛大化傾向といったエラーは無意識にも発生しますが、逆算化傾向は、評価者が意図的にしなければ発生しません。

人事評価では、細かな評価項目の評価を行った後で、それらの評価結果のまとめとして最後に総合評価を出しましょう。

対策
  • 総合評価から逆算して評価項目の評価はしない

7. 人事評価エラー(5)論理誤差

人事評価_エラー_7章

次は「論理誤差」です。

7-1. 論理誤差とは

論理誤差とは、各評価項目の関係性や整合性を、評価者が論理的に考えて評価するエラーをいいます。

各評価項目の評価は、それぞれ被評価者(部下)の成果や行動を観察して行うべきですが、それとは別に、評価者自身が考える論理上の筋が通るように評価してしまうのが論理誤差です。

例えば、“リーダーシップに優れている”と評価した場合に、「リーダシップに優れているのだから、コミュニケーション能力も高いはずだ」「マネジメント力も高い」「能力的にも優れている」——といった具合に、評価者自身の主観による論理で整合性を取った評価をしてしまうのが論理誤差です。

実際に論理上のつながりがあることは多いのですが、だからこそ思い込みで陥りやすいエラーといえます。

7-2. 論理誤差の対策

論理誤差を回避するためには、本当に自分が思い込んでいる論理どおりの評価で良いのか、疑いの目を持って、被評価者(部下)の実態をありのまま評価する意識が大切です。

ときには自分が思う論理とは矛盾する評価になることもありますが、それが自然であると心得ましょう。

各評価項目同士の論理のつながりは考えず、それぞれで要されている評価範囲に限定して評価します。

対策
  • 自分が思う論理は考えず、各評価項目の範囲に絞って被評価者の実態を評価する

8. 人事評価エラー(6)対比誤差

人事評価_エラー_8章

続けて「対比誤差」を見てみましょう。

8-1. 対比誤差とは

対比誤差とは、自分と被評価者(部下)を対比して評価してしまうエラーをいいます。

本来は会社で定められた評価基準に則って評価すべきですが、「自分と比べてどうか」を物差しとしてしまうのが、対比誤差です。

例えば、仕事のスピードが人よりもずば抜けて速い人が評価者の場合、普通のスピードの部下を「仕事が遅い」と厳しく評価してしまいます。

あるいは自分がルーズなタイプの場合、それほど几帳面ではない部下でも、「非常に几帳面でまじめである」と高く評価します。

▼対比誤差の例

  • 自分がルーズなため、ルーズではない部下をそれだけで高く評価する
  • 自分にとって簡単にできることは、部下ができていても評価しない

基準が自分自身になっているため、企業としての評価基準から外れてしまい、正しい評価ができません。

8-2. 対比誤差の対策

対比誤差の対策は2つあり、1つめは会社で定められた評価基準をよく理解して、常に評価基準に則った評価を行うことです。

2つめは、自分自身の長所・短所を理解して、どんな対比誤差に陥りやすいのかをあらかじめ認識することです。

自分の強みは「これくらい、できるはずだろう」と厳しく評価しがちですし、弱みは「自分にできないことができるのはすごい」と高く評価しがちです。

しかし、人事評価に評価者の自意識は一切不要です。自戒して、対比誤差を回避しましょう。

対策
  • 評価基準の理解を深め、評価基準に則って評価する
  • 自分自身を理解し、陥りやすい対比誤差をあらかじめ把握して回避する

9. 人事評価エラー(7)期末誤差

人事評価_エラー_9章

最後に、期末誤差を解説しましょう。

9-1. 期末誤差とは

期末誤差とは、人事評価を行う期末に近い時期に起きた出来事が評価に強く影響するエラーをいいます。

例えば「4月〜翌年3月」の1年間の評価を行う場合、期末の3月に近い時期の成果や行動ほど評価全体に色濃く影響するのが期末誤差です。

▼期末誤差の例

  • 3月の期末直前に大きな契約を決めた部下を高い評価にする
  • 第1四半期(4月〜6月)の成果や行動が期末の評価に反映されない

被評価者(部下)の視点から見ると、期末誤差で評価されるなら、「同じ成果なら、期末に近くなってからあげたほうが得」「上半期にがんばっても、人事評価で報われない」という結果になってしまいます。

9-2. 期末誤差の対策

期末誤差を避けるためには、期初から期末にかけて観察記録をつけて、発生時期によって評価に偏りが出ないようにすることが大切です。

部下のなかには期末の評価をあげるために、期末に向けてインパクトの強い成果や行動で印象付けをしようとする人もいます。

評価する側は流されることなく、対象期間中の部下の成果や行動を、時期によって偏らせることなく評価しましょう。

対策
  • 期初から期末にかけて記録をつけて平等に評価する

10. まとめ

人事評価において、誰もが陥りやすい7つのエラーをご紹介しました。

  • ハロー効果
  • 中心化傾向
  • 寛大化傾向
  • 逆算化傾向
  • 論理誤差
  • 対比誤差
  • 期末誤差

無意識下で起きる人事評価エラーを防ぐためには、以下が鍵です。

  • 誰もが人事評価エラーに陥ると知る
  • 人事評価エラーの内容を具体的に認識する

人事評価エラーを減らせば、人事評価の運用がうまくいくようになり、社員の成長や業績向上など好循環が始まります。

さっそく取り組みを進めましょう。