人事評価における「評価面談」とは、期末に人事評価を行った後、上司と部下が1対1で面談を行うものです。
評価結果を伝達するとともに、評価に対する部下の納得度を高め、来期に向けての成長を促す重要なイベントが評価面談といえるでしょう。
しかしながら、自分が経営者や上司の立場になり評価者(評価する人)として評価面談を行うとなると、「評価面談って、具体的にどうすれば良いの?」と戸惑う人が多いようです。
そこで本記事では、評価面談の基礎知識からその目的、進め方、NG行動まで詳しく解説します。
- 評価面談の基本が身につく
- 具体的な面談の進め方を詳しく解説
- NG行動や効果を高めるコツまで網羅
「初めて上司として評価面談をすることになった」「より良い評価面談をできるようになりたい」…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、“評価面談とは何なのか”はもちろん、具体的な段取りから注意点まで、基礎知識を網羅的にインプットできます。
では、さっそく解説を始めましょう。
ー 目次 ー
1. 人事評価の「評価面談」とは?基礎知識
まずは人事評価における「評価面談」とは何なのか、基礎知識から解説します。
1-1. 評価面談の概要
評価面談は、年に1回または半年に1回、その期における人事評価を伝達し、期中の業務を振り返って、来期の成長に活かすために行われます。
人事評価を行っている会社であれば、基本的にすべての会社で行うべき面談が、評価面談です。
1-2. 評価面談の対象者
評価面談では、被評価者(評価される人、部下)と、評価者(評価する人、上司)が、1対1で行うのが基本です。
ただし、会社によっては直属の上司ではなく、全社員と社長が面談を行ったり、直属の上司よりも上の部門責任者と面談を行うケースもあります。
被評価者に対して、評価内容を伝達できる立場にある人が行うのが評価面談の特徴です。
1-3. 評価面談を行うタイミング
評価面談を行うタイミングは、評価対象期間の終わりの時期で、当該期間の評価をした後になります。
例えば3月決算の会社で、4月1日〜9月30日(上半期)・10月1日〜3月31日(下半期)の2回、人事評価を実施している企業であれば、9月下旬と3月下旬に行われるケースが多いでしょう。
ただし、評価面談はあくまでも各会社の方針に従って行われるもので、法的な強制などがあるわけではありません。
会社によっては上記の原則とは異なったタイミングを採用しているケースもあります。
2. 人事評価面談を行う目的
評価面談を行ううえで、きちんと押さえておきたいのは「評価面談を行う目的」です。
大きく分けて3つの目的があります。
- 評価の結果を伝達する
- 評価に対する納得度を高める
- 来期により良い成果を出せるようにする
以下で詳しく見ていきましょう。
2-1. 評価の結果を伝達する
1つめの目的は「評価の結果を伝達する」ことです。
人事評価の結果は、会社にとっても社員本人にとっても大変重要です。
評価内容次第で、昇進・昇格などの処遇や給与額が変わるためです。
「最終的に良い評価を得るために、評価期間中を懸命に努力してきた」という社員も多いでしょう。
そのように重要な意味を持つ人事評価ですから、例えば紙1枚を渡して簡単に終了するのでは不十分です。
社員からすれば、自分が軽んじられているように感じてしまいます。
改まった「評価面談」という場を設けて、一人ひとり対面で人事評価の内容を伝達していきます。
2-2. 評価に対する納得度を高める
2つめの目的は「評価に対する納得度を高める」ことです。
面談の形式で評価内容を伝達するメリットとして、一方通行の伝達にならず、評価者と被評価者(上司と部下)が「対話」できることが挙げられます。
評価面談を通して、「評価結果だけを提示するのではなく根拠もあわせて説明する」「社員からの疑問に回答する」「認識の異なる部分があれば話し合う」…といったプロセスを経ることで、評価に対する納得感が高まります。
納得感を高めるプロセスは、従業員のモチベーションを維持・向上させるために重要です。
人事評価に対する不満は、社員の意欲低下や離職意向に直結しやすいためです。
2-3. 来期により良い成果を出せるようにする
3つめの目的は「来期により良い成果を出せるようにする」ことです。
人事評価が行われた直後のタイミングは、期中を振り返ってのフィードバックに最適といえます。
なぜなら、フィードバックは情報鮮度が高いタイミングほど効果的だからです。
今期の業務に対して適切なフィードバックを行い、来期により良い成果を出せるように導くことは、面談における上司の重要な役割でもあります。
具体的なフィードバックとして、以下が挙げられます。
- 実績や良かった行動を承認してモチベーションを高める
- 望ましくない行動の気付きを促し軌道修正する
- 目標の達成度合いを確認し来期の課題を共有する
評価面談を「過去となる今期」の話で終始するのではなく、いかに「未来(来期)」に活かしていくかという視点が大切です。
3. 人事評価面談の進め方
次に、実際の「評価面談の進め方」を見ていきましょう。
評価面談は、以下の流れで行います。
- (事前準備)評価面談に適した個室を準備する
- (事前準備)スケジュール調整し部下に自己評価をしておくよう伝える
- (事前準備)評価内容を再確認し想定される質問の答えを準備する
- 当日は簡単な雑談から入り場の空気を和ませる
- 部下の自己評価を傾聴する
- 評価の内容と根拠をあわせて伝える
- 部下からの質問に答える
- 来期に向けての課題や注力点を一緒に考える
- モチベーションを高め面談を終了する
以下で、それぞれ詳しく解説します。
3-1. (事前準備)評価面談に適した個室を準備する
まず事前準備として、評価面談に適した「個室」を準備します。
評価面談は、他のメンバーに内容が漏れ聞こえるリスクのない場所で行う必要があります。
なぜなら、人事に関する情報は社員の個人情報であり、会社としては機密情報として厳重に扱わなければならないからです。
加えて、騒々しい場所や他のメンバーの声が聞こえる場所も適しません。
落ち着いてじっくりと話ができる静かな個室を確保しましょう。
3-2. (事前準備)スケジュール調整し部下に自己評価をしておくよう伝える
個室の確保とともに、面談する上司・部下のスケジュールを調整し、面談日時を設定します。
その際、部下には評価面談の準備として自己評価をしておくように伝えましょう。
部下の自己評価は、評価面談の最初に傾聴します。
詳しくはこの後に解説しますので、続けてご覧ください。
3-3. (事前準備)評価内容を再確認し想定される質問の答えを準備する
評価面談の期日が近づいてきたら、人事評価の内容を再確認しておきます(ここでは、すでに評価は行われた前提で解説しています)。
特に、部下が不満を抱きそうな項目や反論されそうな箇所など、面談がスムーズに進まない可能性がある部分をチェックします。
部下からどんな疑問・質問が想定されるかシミュレーションし、説得力のある回答を準備しておきましょう。
3-4. 当日は簡単な雑談から入り場の空気を和ませる
ここからは面談当日の流れになります。
上司・部下が個室に入り着席したら、いきなり単刀直入に人事評価の話からするのはおすすめできません。
部下によっては、上司との1対1の面談に緊張して萎縮していたり、あるいは不満を抱えている部下であれば不機嫌にけんか腰のケースもあります。
緊張感や不穏な雰囲気のまま評価面談を始めてしまうと、面談内容も良くない空気に引っ張られ、良い結果が得られません。
まずは上司も部下もリラックスして、相手の言うことに聞く耳を持てる体勢づくりが重要です。
本題に入る前に簡単に雑談をして、場の空気を和ませてから評価面談に入りましょう。
3-5. 部下の自己評価を傾聴する
場の空気が和んだところで、本題に入っていきます。段取りとしては、部下が準備してきた自己評価を最初に傾聴します。
聞きながら「それは違う」と感じる部分があったとしても、上司は口を挟みません。最後まで静かに傾聴しましょう。
傾聴しながら、人事評価の結果と自己評価が一致している部分はどこか、逆に一致しておらずギャップがある部分はどこかをチェックしておきます。
この次のステップで人事評価の結果を部下に伝えますが、自己評価と一致している部分はスムーズに理解しやすいですし、ギャップがある部分は丁寧な説明が必要だからです。
また、部下の自己評価を踏まえて、どんなフィードバックが必要なのかについても、考えながら聞いていきます。
3-6. 評価内容と根拠をあわせて伝える
部下の自己評価を聞き終わったら、人事評価の具体的な内容とその根拠をあわせて伝えていきます。
ただ評価結果を伝えるだけでなく、「なぜ、この評価結果になったのか?」という評価の根拠を具体的に伝えることで、部下の納得度が高まります。
特に自己評価と人事評価にギャップがある部分は、なぜ評価が食い違っているのか認識の相違点を探しながら、より丁寧に評価の根拠を説明していきましょう。
3-7. 部下からの質問に答える
一通り評価内容の伝達が終わったら、部下に質問を促します。
特に、自己評価よりも人事評価の結果の方が低かった場合、部下は少なからず不満や疑問を抱いているはずです。
不満や疑問をそのまま放置してしまえば、後にモチベーション低下の原因となり、最悪なケースでは離職してしまうこともあります。
部下が遠慮なく疑問点を質問し、少しでも不満を解消できるよう工夫しなければなりません。
部下の納得度を高めるために、評価の根拠を客観的な事実に基づいて、論理的に説明しましょう。
言葉足らずに陥らないよう注意し、部下の理解度を見極めながら、よくわかるように丁寧に説明を尽くします。
仮に部下が感情的に不満をぶつけてきたとしても、冷静に毅然とした態度で説明することが、説得力につながります。
3-8. 来期に向けての課題や注力点を一緒に考える
部下からの質問に答え終わったら、来期に向けての課題や注力点を、部下と一緒に考えていきます。
来期の目標設定は、評価面談では行わずに後日改めて面談しますが、評価面談では、次の目標設定のステップに向けた方向性を明らかにしておくことが大切です。
次の目標設定はどうするか、今期の目標が未達だった場合にはどうすれば達成できるようになるか、部下自身の考えを引き出しながら、必要なアドバイスをしていきます。
3-9. モチベーションを高め面談を終了する
来期に向けての方向性まで共有できたら、面談は終了です。
評価面談を終了するときに重要なことは、どのような内容であれ、最後はポジティブに終わることです。
ネガティブな雰囲気なまま終えてしまうと、部下のモチベーションが長期的に下がるリスクがあるため、注意してください。
今期の人事評価で良かったポイント(高評価だった項目や成長があった部分)を、最後にもう一度伝えましょう。
加えて、部下に対する期待、チームメンバーとしての思い、いつも頑張ってくれていることへの感謝など、上司としての思いや熱意を伝えるのも良い方法です。
部下のモチベーションが高まった状態で面談を終了します。
4. 人事評価の面談でやってはいけない6つのNG行動
評価面談の具体的な流れをご紹介しましたが、あわせて押さえておきたいのが「やってはいけないNG行動」です。
具体的な6つの行動をご紹介します。
- 人事評価の話しかしない
- 責めたり叱責したりする
- 強い語調・高圧的な態度で話す
- 人事評価の根拠として主観的な意見を言う
- 周囲に聞こえる場所・声で話す
- 感情的になる
4-1. 人事評価の話しかしない
1つめのNG行動は「人事評価の話しかしない」です。
「評価面談なのだから、人事評価の結果を伝えればそれで良い」と捉えている人もいますが、評価結果しか伝えないのは、結論だけ乱暴に伝えて何のアフターフォローもしないのと同じことです。
人事評価の話だけで短く面談が終了した場合、部下にとっては「会社や上司から自分が大切にされていない、ないがしろにされている」という印象を受けやすくなります。
先に解説した通り、評価内容と評価の根拠、部下の質問回答、来期に向けての課題共有は、評価面談とセットで必ず一緒に行ってください。
もちろん、さらに追加で部下の今後のキャリアについて相談したり、部下の悩みに耳を傾けたりすることも有益です。
人事評価が良かったにせよ悪かったにせよ、上司として部下を全力でサポートしていく姿勢を、評価面談を通して見せてください。
4-2. 責めたり叱責したりする
2つめのNG行動は「責めたり叱責したりする」です。
評価面談は、あくまでも評価結果を伝えるのが目的であり、社員の目標未達や失敗を責めたり叱責したりする目的ではありません。
ここをはき違えて、評価面談の場を借りて部下を問い詰めたりすることは、NG行動です。
不必要に部下を萎縮させ、やる気をそいでしまいます。
業務上必要な指導がある場合には、評価面談とは別に時間を取って指導を行うべきです。
評価面談と指導の場を一緒にしないよう注意しましょう。
4-3. 強い語調・高圧的な態度で話す
3つめのNG行動は「強い語調・高圧的な態度で話す」です。
たとえ話している内容が叱責や問い詰めではなく、単に事実を話しているだけだとしても、強い語調・高圧的な態度で話すことはNG行動です。
評価面談は、評価者・被評価者という立場の違いが明確にある者同士の面談であることを認識しましょう。
強い立場にある評価者(上司)の伝え方次第では、部下が精神的に傷ついたりパワハラと受け取られたりするリスクがあります。
特にネガティブなフィードバックをする際には、言い方がきつくならないよう、柔らかな物言いを心掛けてください。
4-4. 人事評価の根拠として主観的な意見を言う
4つめのNG行動は「人事評価の根拠として主観的な意見を言う」です。
部下から「なぜこの評価なのですか?」と質問されたとき、主観で答えると部下の不満は増大します。
例えば「●●と感じたからこの評価にしました」ではなく、実績データや過去との比較情報などを根拠として、客観的な根拠を述べるように意識しましょう。
そのためには、そもそもの人事評価が客観的な根拠に基づいて行われている必要があります。
少々大きな話になりますが、人事評価の根拠として主観の意見しか伝えられないようであれば、会社の人事評価制度そのものに欠陥があるかもしれません。
4-5. 周囲に聞こえる場所・声で話す
5つめのNG行動は「周囲に聞こえる場所・声で話す」です。
前述のとおり、評価面談は個室を準備して行いますが、オフィスが広くない中小企業では場所の確保自体が難しいケースがあるかもしれません。
例えば、隣の会議室に他のスタッフがいるとき、誰かが通りかかったときなど、周囲に面談の声が聞こえないよう配慮が必要です。
もともと声が大きな人の場合、個室を確保していても、隣のフロアに会話が丸聞こえというケースもあります。
評価面談で話される内容は社員の個人情報であり機密事項であるという意識をしっかり持って、漏洩が起きないよう工夫してください。
4-6. 感情的になる
6つめのNG行動は「感情的になる」です。
評価面談の場では、部下も日常の会議や打ち合わせとは異なり、かなり踏み込んだ主張をしてくることがあります。
例えば、上司や会社に対する不満を厳しい言葉で伝えてくる、評価結果を聞きながら思わず泣き出してしまう、日頃の悩みを打ち明けながら止まらなくなる——など、部下側が感情的になるケースは多く見受けられます。
上司の立場としては、「部下が感情的になるのは織り込み済み」の心構えで臨み、部下がどんなに感情的になったとしても自分の冷静さは保つことが大切です。
部下のペースに乗せられて、自分まで感情的になることはNG行動です。
5. 人事評価面談の効果を高めるコツ
最後に、人事評価面談の効果を高め、組織の成長に役立つようにする3つのコツをご紹介します。
- 目標設定の質を高める
- 日頃から部下をよく観察する
- 評価者としてのスキルを高める
以下で詳しく見ていきましょう。
5-1. 目標設定の質を高める
1つめのコツは「目標設定の質を高める」です。
良い評価面談ができるかどうか、根本的な要因として挙げられるのが「人事評価のベースとなる目標設定」の部分です。
期初に部下本人がコミットした適切な目標設定ができていれば、期末の評価面談では、設定した目標の達成状況の振り返りをすれば良いので、評価面談はスムーズになりますし上司と部下との間の認識の相違も発生しにくくなります。
評価面談の後に不満を抱える社員が多い企業や、評価面談がスムーズにできず長時間化しがちな企業では、そもそもの目標設定の質を高めるところから見直してみましょう。
5-2. 日頃から部下をよく観察する
2つめのコツは「日頃から部下をよく観察する」です。
評価面談の内容を部下が素直に受け止めるかどうかは、上司と部下との信頼関係による部分も大きいものです。
部下から信頼されるためには、人事評価の時期だけでなく日頃から部下をよく観察して、部下の行動を深く把握しておくことです。
部下を深く知っていれば、その分、正しい評価が可能になります。
部下からすれば「これだけ私を見てくれている上司の評価だから信頼できる」という納得感につながるのです。
5-3. 評価者としてのスキルを高める
3つめのコツは「評価者としてのスキルを高める」です。
「人事評価を行う」という業務は、実は高度な知識とスキルが必要な業務といえます。
にもかかわらず、多くの会社では自己流で人事評価が行われているという実態があります。
より良い人事評価、評価面談を目指すのであれば、「評価者研修」を実施して上司が評価者としてのスキルを高めることが有益です。
6. まとめ
人事評価の「評価面談」は、以下の目的で行われます。
- 評価の結果を伝達する
- 評価に対する納得度を高める
- 来期により良い成果を出せるようにする
人事評価面談の進め方を以下の流れでご紹介しました。
- (事前準備)評価面談に適した個室を準備する
- (事前準備)スケジュール調整し部下に自己評価をしておくよう伝える
- (事前準備)評価内容を再確認し想定される質問の答えを準備する
- 当日は簡単な雑談から入り場の空気を和ませる
- 部下の自己評価を傾聴する
- 評価内容と根拠をあわせて伝える
- 部下からの質問に答える
- 来期に向けての課題や注力点を一緒に考える
- モチベーションを高め面談を終了する
人事評価の面談でやってはいけない6つのNG行動はこちらです。
- 人事評価の話しかしない
- 責めたり叱責したりする
- 強い語調・高圧的な態度で話す
- 人事評価の根拠として主観的な意見を言う
- 周囲に聞こえる場所・声で話す
- 感情的になる
人事評価面談の効果を高めるコツとして、以下を意識してみましょう。
- 目標設定の質を高める
- 日頃から部下をよく観察する
- 評価者としてのスキルを高める
評価面談を通して社員の成長を促せば、組織としての成長につながります。
より効果的な評価面談を目指して取り組みを進めましょう。