人事評価の3つの目的と自社にとって意義ある制度を作るための重要視点

人事評価の目的イラストTOP
「人事評価の目的って、そもそも何だろう?」という疑問を抱くことは、人事評価に関わるうえで非常に大切なことといえます。

結論からお伝えすれば、大きく分けて3つあります。

  • 給与・役職などの処遇を決定する
  • 社員の成長をサポートする
  • 組織の目標達成を促進する

総じていえば、人事評価は会社としての成果(業績)を向上させるために欠かせないものです。

そこで本記事では、経営において最重要事項のひとつである「人事評価の目的」について、解説します。

本記事のポイント
  • 人事評価の目的が基礎からわかる
  • 目的に沿わない人事評価になってしまう原因を解説
  • 有意義な人事評価の作り方がわかる

「人事評価の目的とは何なのか知りたい」「自社の人事評価を意義あるものにしたい」…という方におすすめの内容となっています。

この解説を最後までお読みいただければ、なぜ人事評価が必要なのか理解したうえで、会社の成長に役立つ人事評価を設計・運用できるヒントが得られます。

さっそく見ていきましょう。

1. 人事評価の3つの目的

人事評価の目的第1章

冒頭でも触れましたが、人事評価には大きく分けて3つの目的があります。

  • 給与・役職などの処遇を決定する
  • 社員の成長をサポートする
  • 組織の目標達成を促進する

以下で詳しく解説しましょう。

1-1. 給与・役職などの処遇を決定する

1つめの目的は「給与・役職などの処遇を決定する」ことです。

「人事制度」の中身は、「教育・報酬・評価・等級」の4つに分けられます。

評価制度は報酬制度や等級(役職)制度と密接につながっています。

▼ 人事制度の全体像

人事評価の目的第1章の1評価の全体像

人事評価の結果を受けて、役職(部長・課長・係長など)と報酬(毎月の給料やボーナスの金額)などの処遇が決まるのです。

もし人事評価がなければ、客観的で公正な処遇の決定ができません。処遇の決定は、人事評価の重要な目的です。

1-2. 社員の成長をサポートする

2つめの目的は「社員の成長をサポートする」ことです。

人事評価を通して、決められた基準に則って社員を評価すると、社員の強み・弱みが明確になります。

どんな長所を伸ばしていけば良いのか、どんな課題を克服していけば良いのか。

人事評価のタイミングで、定期的・継続的に、具体性のあるフィードバックが可能です。

人事評価を行わなければできない適切なフィードバックにより、社員の成長を強力にサポートできます。

1-3. 組織の目標達成を促進する

3つめの目的は「組織の目標達成を促進する」ことです。

人事評価の基準(どんな成果・どんな行動が評価されるのか)を定めることは、“企業が組織全体として向かっていきたいベクトルを示すこと”でもあります。

つまり、人事評価によって「会社が社員に期待する成果や行動」を明示し、期待する成果や行動を促進できるのです。

組織が目指す大目標を達成するために要する成果や行動を、社員の個人レベルに細分化して落とし込むことで、組織の目標達成を促進できます。

人事評価には、社員個人の処遇決定や成長支援のみならず、会社全体の業績向上や生産性向上といった重要な意義があるのです。

2. 「意味のない」人事評価になってしまう4つの原因と対策

人事評価の目的第2章

組織において重要な人事評価。

しかしながら実際には、「うちの会社の人事評価は意味がない」と社員に思われているケースも多くあります。

あるいは、経営者として、「この人事評価で意味はあるのか?会社の成果につながっているのか?」と疑念を抱いている方もいるでしょう。

人事評価が本来の役割を果たせない原因は、大きく4つあります。

  • 会社の理念や行動指針との一貫性がない
  • 人事評価が処遇に反映されない
  • 人事評価の精度が低い
  • “成果”を軸に評価していない

それぞれ見ていきましょう。

2-1. 会社の理念や行動指針との一貫性がない

1つめの原因は「会社の理念や行動指針との一貫性がない」です。

先にも述べたとおり、人事評価の設計を通じて会社は“会社が社員に期待する成果や行動”を社員に指し示すことができます。

しかしながら、これが別途掲げている企業理念や行動指針(ミッション・ビジョン・バリュー)などと一致していない場合、ダブルバインドとなって従業員を混乱させてしまいます。

ダブルバインド(二重の拘束)とは、矛盾したメッセージや指示によって相手に精神的なストレスを生じさせるコミュニケーション状態のことです。

人事評価によるダブルバインドには、社員が精神的な混乱によって身動きが取れなくなり自信喪失したり、会社との信頼関係を失ったりといったリスクがあります。

会社としての全体像を見つめずに、「人事評価」という点だけを切り取って制度設計をすると、ダブルバインドに陥ってしまいます。

人事評価の制度を設計するうえでは、会社の理念や行動指針といった大方針に立ち返ることを忘れないようにしましょう。

対策
  • 人事評価制度だけをミクロ視点で設計せずに会社組織としての大方針に立ち返りながら設計する

2-2. 人事評価が処遇に反映されない

2つめの原因は「人事評価が処遇に反映されない」です。

なぜ人事評価が処遇に反映されないと人事評価の意味がなくなるかといえば、例えば以下の“社員の不満”が大きくなるためです。

  • 「せっかく高評価を得たのに、給料が上がらない」
  • 「がんばっても、ずっと平社員のままなら、人事評価の意味がない」

評価される側(被評価者)の社員は、評価されたら評価された分だけ、報酬にフィードバックしてほしいという願望を持っています。

その願望にどれだけ応えられるか(応えられない場合には論理的に納得できる説明ができているか)が重要です。

不満を放置すれば、人事評価を実施するたびに社員の不満が募って、パフォーマンス低下や離職率の低下につながります。

対策
  • 人事評価の結果を報酬制度や等級制度と連携させる
  • 評価結果の処遇への反映が社員にとって納得できるようにする(納得できる制度設計あるいは説明)

2-3. 人事評価の精度が低い

3つめの原因は「人事評価の精度が低い」です。

人事評価の制度が適切に設計されていても、適切に運用できていなければ、意義がなくなってしまいます。

「評価する人によって厳しさに差がある」「現場を知らない上司が評価する」といった不満を抱く社員は多いため注意が必要です。

参考:「人事評価の不満を可視化して人材流出や組織の生産性低下を防ぐ方法

人事評価の精度を高めるためには、評価を行う管理職・上司(評価者)の評価スキルを向上させることが大切です。

対策
  • 評価者研修を実施して会社全体で評価スキルの向上を図る

※評価者研修については「評価者研修のプログラム例・ポイント・参加者の感想」にて詳しく解説しています。

あわせてご覧ください。

2-4. “成果”を軸に評価していない

4つめの原因は「“成果”を軸に評価していない」です。

人事評価を通して「処遇」を決定することはもちろん大前提として必要なのですが、実は多い落とし穴が「処遇のことだけ考えて設計された評価制度になっている」という失敗です。

ここで人事評価の3つの目的をおさらいしましょう。

  • (1)給与・役職などの処遇を決定する
  • (2)社員の成長をサポートする
  • (3)組織の目標達成を促進する

多くの企業の人事評価は(1)(2)の目的を果たすために設計されていますが、肝心の(3)が抜けているケースが多いのです。

評価制度の目的が「処遇のための評価」になっていると、成果が出にくくなります。
人事評価の目的第2章の3成果

対策としては「人事評価の重要な目的は、業績向上」という視点を持って制度設計することが必要です。

対策
  • 成果を重視した制度設計をする

※制度設計の詳細については「ピースの人事制度コンサルティング」にて解説しています。

あわせてご覧ください。

3. 目的別に適した人事評価手法

人事評価の目的第3章

ここで具体的な人事評価手法をご紹介しましょう。

主に6種類の手法があります。

種類概要おすすめケース
(1)能力評価業務を行ううえで期待し求められる能力(職能)を評価する
  • 資格によって従事できる業務内容が変わる
  • 社員の知識・技術・資格の習得を促進したい
  • 成果を評価しにくい職務である
(2)情意評価社員の思いや気持ち、仕事に対する姿勢を評価する
  • 社会人として未成熟な社員が多い職場環境である
  • あえて「思い」にウェイトを置いた評価制度を作りたい
(3)成果評価社員の成果を評価する
  • 会社の業績を上げたい
  • 社員の成長を促したい
(4)コンピテンシー評価高業績者の行動特性を調査分析したうえで、それを評価対象とする
  • ある程度すでにコンピテンシーが可視化できている
  • 会社として次世代の人材育成を推進したいフェーズにある
(5)バリュー評価バリューの実践や浸透を評価する
  • 掲げているバリュー(行動規範)の実践度を高めたい
  • 成果評価だけではカバーできない行動を評価したい
(6)360度評価上司・部下・同僚・先輩など複数の評価者が多角的に評価する
  • 上司単独の評価によるエラーを防ぎたい
  • 忌憚なく意見を言い合える風通しの良い組織を作りたい

どんな状況におすすめなのかは、手法によって異なります。

目的に合わせて適切な手法を選び、組み合わせることが大切です。

上表の詳細は「人事評価の種類6つを解説!オーソドックスな手法からトレンドまで網羅」にて解説していますので、あわせてご覧ください。

4. 人事評価は組織の目的達成に不可欠

人事評価の目的第4章

ここまで見てきたとおり、人事評価は組織の目標達成に不可欠です。

業績が向上している強い組織は、必ず強い人事評価システムを持っているといっても過言ではありません。

例えば「人事評価制度の事例をわかりやすく解説!最新の傾向と重要ポイント」では、メルカリやサイボウズの人事評価を紹介しています。

企業名導入制度
ニチレイフーズ
  • コンピテンシー評価
  • 目標管理評価
メルカリ
  • 成果評価
  • 行動評価
DeNA
  • 成果評価
  • 発揮能力評価
サイボウズ
  • 市場価値による給与決定
  • フィードバック面談

出典:「人事評価制度の事例をわかりやすく解説!最新の傾向と重要ポイント」

人事評価を通じて、生産性が高く成果を上げ続ける組織を構築していきましょう。

具体的な取り組みについては、全96ページにわたるPDF資料「無料Ebook|成長企業の人事制度」に公開していますので、ぜひご活用ください。

5. まとめ

人事評価には大きく分けて3つの目的があります。

  • 給与・役職などの処遇を決定する
  • 社員の成長をサポートする
  • 組織の目標達成を促進する

目的を達成できずに「意味のない」人事評価になってしまう4つの原因と対策をご紹介しました。

  • 会社の理念や行動指針との一貫性がない
  • 人事評価が処遇に反映されない
  • 人事評価の精度が低い
  • “成果”を軸に評価していない

人事評価手法としては以下の6つがあります。

  • (1)能力評価
  • (2)情意評価
  • (3)成果評価
  • (4)コンピテンシー評価
  • (5)バリュー評価
  • (6)360度評価

人事評価は組織の目的達成に不可欠です。

会社の成長を下支えする優れた制度設計に取り組んでいきましょう。