人事評価の目標設定とは?職種別の例文付きで注意点やポイントを解説

人事評価ー目標設定

人事評価の目標設定は、成果を評価対象とする成果評価を実践するために行われるもので、社員本人が自分の目標を設定することが基本です。

適切な目標設定をすれば、モチベーションの向上や会社全体の目標達成率の上昇など、さまざまな効果が見込めます。

しかしながら、「目標設定のやり方がわからない」「職種によって目標を数値化できない」といったつまずきが多く、目標設定が機能している企業は少ないのが実態です。

そこで本記事では、人事評価の目標設定について基礎知識から具体的な設定の流れ、注意点まで解説します。

本記事のポイント
  • 人事評価の目標設定が基本から理解できる
  • 具体的にどうやるのか流れを解説
  • 職種別の目標設定の例文や注意点まで網羅
 
「人事評価の目標設定について知りたい」「組織にとって有益な良い目標設定をしたい」…という方におすすめの内容となっています。

この解説を最後までお読みいただければ、単に目標設定のやり方がわかるだけでなく、「会社の業績向上につなげるための目標設定はどうすれば良いか」が見えてくるはずです。

人事評価において機能する目標設定ができれば、会社全体の目標達成が容易になっていきます。

さっそく解説を始めましょう。

1. 人事評価の目標設定とは?基礎知識

人事評価ー目標設定1

まずは人事評価における目標設定とは何なのか、基礎知識から見ていきましょう。

1-1. 成果評価と目標管理制度

目標設定について知るために先に押さえておきたいのが「成果評価」「目標管理制度」です。

人事評価の基準のうち、「成果」を評価対象とするのが成果評価であり、成果評価を運用する仕組みとして用いられるのが「目標管理制度」です。

成果評価とは?

成果評価とは、人事評価を行う手法のひとつで「社員の実績」を評価対象として定量的に行われる人事評価です。

▼ 成果評価の対象例

営業職新規顧客の成約数
マーケティング職売上高と利益率
技術職開発件数
製造職不良率

成果評価以外の評価方法としては、社員のスキルや知識を評価する能力評価や、意欲や勤務態度を評価する情意評価があります。

基準が曖昧になりがちな能力評価や情意評価と比較して、成果評価は数値化した明確な基準で人事評価できるメリットがあります。

加えて成果そのものが評価につながるため、会社としての成果も出しやすくなる評価手法です。

目標管理制度とは?

目標管理制度とは、前述の成果評価を運用するための制度です。

目標管理制度では、評価期間に入る前(期初)に目標を設定します。

これが、人事評価における目標設定です。

評価期間中は設定した目標の達成を目指して職務にあたり、期末に達成度合いによって人事評価を行います。

1-2. 目標管理制度では目標設定を本人が行う

目標管理制度における目標設定のポイントは、「目標設定は社員本人が行う」ことです。

上司からトップダウンで目標を与えられるのではなく、上司と社員本人が面談を通じてコミュニケーションを取りながら、社員自らがコミットした目標設定することがポイントとなります。

このような目標設定にはどんなメリット・効果があるのか、次章で詳しく見ていきましょう。

2. 人事評価で目標設定を行うメリット・効果

人事評価ー目標設定2

人事評価で目標設定を行うメリットは、3つあります。

  • 社員のモチベーションが向上する
  • 組織全体の目標を効率的に達成できる
  • 人事評価への不満が発生しにくくなる

それぞれ見ていきましょう。

2-1. 社員のモチベーションが向上する

1つめのメリットは「社員のモチベーションが向上する」ことです。

なぜなら、自分で主体性を持って目標を設定すると、当事者意識が芽生えます。

「与えられた目標」ではなく「自分が達成したい目標」として自分ごと化できるためモチベーションが高まるのです。

モチベーションが向上すると生産性が上がり、組織全体に良い影響が循環していきます。

2-2. 組織全体の目標を効率的に達成できる

2つめのメリットは「組織全体の目標を効率的に達成できる」ことです。

社員が自ら目標を設定するといっても、完全フリーで自由に設定するわけではありません。

上司との面談を通じて、部署・チームとして達成したい目標と、その中で果たすべき個人の役割のバランスを取りながら、最終的な設定は社員本人が納得したうえで行うという意味になります。

会社として達成したい目標を、会社→部署→チーム→個人と細分化して目標設定できるため、会社全体としての達成スピード・達成率が向上する効果が期待できます。

2-3. 人事評価への不満が発生しにくくなる

3つめのメリットは「人事評価への不満が発生しにくくなる」ことです。

人事評価への不満で最も多いのは、「評価の基準が不明確」という不満です。
参考:『人事評価の不満を可視化して人材流出や組織の生産性低下を防ぐ方法』

社員本人が納得したうえで設定した目標の達成状況が評価基準であれば、基準は極めて明確です。

人事への不満が発生しにくくなります。

人事評価の基準を透明化し、やりがいをもって働ける環境づくりの一環として、目標設定は有益です。

3. 人事評価の目標設定をする際の基本の流れ 3ステップ

人事評価ー目標設定3

次に、人事評価の目標設定をする際の基本の流れを3ステップでご紹介しましょう。

  • ステップ1:期初に経営陣とマネジャーが部門目標を設定する
  • ステップ2:マネジャーが部下に業務目標の設定を指示する
  • ステップ3:マネジャー(上司)と部下で面談して業務目標を決定する

3-1. ステップ1:期初に経営陣とマネジャーが部門目標を設定する

1つめのステップは「期初に経営陣とマネジャーが部門目標を設定する」です。

人事評価の目標設定は、1年間(または半年間)を1サイクルとして、期初に部門目標を設定するところから始まります。

部門目標とは、会社としての全体の目標を、各部門のレベルにブレイクダウンしたものです。

例えば「営業部としての目標は売上高●●千円」「カスタマーサービス部としての目標はCS前年比120%」——といった具合に、部門別に目標を設定します。

部門目標の定め方は、企業によって異なります。

トップダウンで経営陣から各マネジャーへ指示されるケースもあれば、マネジャーが主体的に設定して経営陣の承諾を得るケースもあります。

どのやり方でも重要なポイントは、部門目標を達成すると会社全体としての目標が達成される状態になっていることです。

部門目標とは言い換えれば、会社全体の目標を達成する実行戦略となります。

3-2. ステップ2:マネジャーが部下に業務目標の設定を指示する

2つめのステップは「マネジャーが部下に業務目標の設定を指示する」です。

ここでの重要点は、マネジャーは経営陣との間で合意した部門目標を部下に示し、部門目標を踏まえたうえで個人の業務目標を設定させることです。

「自分が所属するチームが達成すべき部門目標に対し、自分は何をすべきか?」——と思考したうえで、自分の個人目標を設定する流れになります。

部門目標を示さずに、ただ個人目標の設定だけを指示するのでは、人事評価の目標設定として機能しにくいので注意が必要です。

単なる個人プレーの目標にしかならず、組織としての成果につながりにくくなるためです。

部下自身も、何も手がかりがないまま目標設定を命じられては、目標設定自体が難しくなります。

3-3. ステップ3:マネジャー(上司)と部下で面談して業務目標を決定する

3つめのステップは「マネジャー(上司)と部下で面談して業務目標を決定する」です。

部下自身が考えてきた業務目標をもとに、マネジャー(上司)と部下とで面談を行い、目標値の調整などを行います。

部下がうまく目標設定ができずにいる場合には、上司としてアドバイスをして、再考を手助けしましょう。

あくまで目標を設定するのは部下自身ですが、いくつかの具体例を挙げながら、部門目標の達成に必要な個人目標の設定へ導くことも、目標設定プロセスにおける上司の重要な務めとなります。

4. 職種別の目標設定の例文

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ここで具体的な目標設定の例文を職種別にご紹介しましょう。

よく「目標の数値化が難しい」といわれる事務職の例からご紹介します。

4-1. 事務職

▼ 事務職の目標設定例

  • 業務効率化を図り月間残業時間を20時間削減する。
  • 備品の購入コストを30%削減する。
  • 作業の正確性を向上しミス・エラーの発生件数を1件/月以下に押さえる。
  • 新規管理ツールの導入を6月末までに完了する。

事務職では、作業の効率性や正確性・コスト削減を焦点にして目標を立てると、数値化がしやすくなります。

それ以外に、決まったプロジェクト(新規ツールの導入など)がある場合には、その進捗を数値化するのもおすすめです。

4-2. 接客・顧客応対

▼ 接客・顧客応対の目標設定例

  • お客様満足度95%以上を達成する。
  • 年間クレーム件数を5件以下にする。

店舗の接客スタッフやコールセンターのオペレーターなど、接客・顧客応対の職種の場合は、顧客の評価を数値化しておくことがポイントです。

対応後に顧客アンケートを実施し、社員別に顧客満足度を計測できるようにしましょう。

顧客満足度のほか、クレーム・苦情につながる件数を減らすことも、目標設定として適しています。

4-3. マーケティング・営業

▼ マーケティング・営業

  • 個人の新規顧客成約数を前年比120%増とする。
  • ●●プロジェクトで獲得した既存顧客のリピート率20%を達成する。

成果が数値となって見えやすいマーケティング・営業の場合は、目標設定の表現で迷うことは少ないでしょう。

それよりも、個人目標として「どの範囲」の業績を扱うかを明確にしておくことを意識しましょう。

同じチームの他メンバーの成果の影響を受けずに、その社員個人の成果を正しく測定できるようにしておきます。

例えば、個人の過去実績と比較したり、その社員が主力となって取り組むプロジェクトの指標と絡めたりするのがおすすめです。

5. 人事評価で目標設定を行う際の注意点

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最後に、人事評価で目標設定を行う際に注意したいポイントをお伝えします。

  • 「自分で目標設定」が形骸化しないようにする
  • 個人の目標達成が組織の目標達成につながるか確認する
  • 努力が必要だが達成可能な難易度を見極める

以下で詳しく見ていきましょう。

5-1. 「自分で目標設定」が形骸化しないようにする

1つめの注意点は「“自分で目標設定”が形骸化しないようにする」ことです。

目標設定をモチベーション向上につなげるためには、「自分で目標を設定する」ことが重要ポイントとなりますが、実際には上司が部下に目標を押しつけているケースが散見されます。

本当の意味で、「自分でコミットした目標である」という納得感がなければ、達成へのモチベーションは高まりません。

納得感を醸成するために必要なのは、上司と部下とのコミュニケーションです。

部下にとって納得できない部分はどこなのか丁寧にヒアリングし、部下自身がコミットできる目標ラインを一緒に探っていくプロセスが大切です。

5-2. 個人の目標達成が組織の目標達成につながるか確認する

2つめの注意点は「個人の目標達成が組織の目標達成につながるか確認する」ことです。

先にも述べた通り、個人の業務目標は、部門目標、ひいては会社全体の目標をブレイクダウンした目標という関係性である必要があります。

この視点を見失うと、例えば、「営業部の社員全員が個人の業務目標を達したにもかかわらず、営業部の部門目標は未達」——といった失態が発生します。

マネジャーは、個人の目標達成が、組織の目標達成につながっているか、俯瞰して全体をチェックしなければなりません。

5-3. 努力が必要だが達成可能な難易度を見極める

3つめの注意点は「努力が必要だが達成可能な難易度を見極める」ことです。

努力しなくても簡単に達成できるような数値では、目標に向かって成長する余地が生まれません。

しかし、現実的に達成不可能な難易度の目標は、努力する意欲を削ぐためにまた機能しません。

目標の難易度をどこに定めるかは重要です。

努力して現在よりも成長しなければ達成できないが、現実的に達成可能な絶妙なラインが、最も機能する目標です。

具体的な目安としては、現状から110〜120%程度のラインが妥当といえます。

上司は面談を通して、部下にとって最適な難易度を見極めることが大切です。

6. まとめ

人事評価の目標設定は、成果評価を運用するための目標管理制度の一環として行われます。

目標設定は、社員本人が行うのが原則です。

人事評価で目標設定を行うメリットとして、以下が挙げられます。

  • 社員のモチベーションが向上する
  • 組織全体の目標を効率的に達成できる
  • 人事評価への不満が発生しにくくなる

人事評価の目標設定をする際の基本の流れを3ステップでご紹介しました。

  • ステップ1:期初に経営陣とマネジャーが部門目標を設定する
  • ステップ2:マネジャーが部下に業務目標の設定を指示する
  • ステップ3:マネジャー(上司)と部下で面談して業務目標を決定する

人事評価で目標設定を行う際の注意点は次の通りです。

  • “自分で目標設定”が形骸化しないようにする
  • 個人の目標達成が組織の目標達成につながるか確認する
  • 努力が必要だが達成可能な難易度を見極める

適切な目標設定は、会社全体の業績向上に直結します。

改めて基本を押さえ、より機能する目標設定を実践していきましょう。