「部下がもうちょっと深く考えてくれたら…」と悩んでいる管理職の方は多いのではないでしょうか。ロジカルシンキング、いわゆる「論理的思考」は、部下に裁量を与えて働いてもらうときには、ほぼ必須のスキルです。
例えば、以下のような場合、部下に思い切って仕事を任せることを躊躇してしまう上司は多いと思います。
- 行動計画をあまり吟味しない
- 同じ失敗を繰り返す
- 言われたことはそれなりにできるが、考えさせると途端に手が止まる
これらはみな、「論理的思考」の欠如から発生する現象の一つです。
しかし、部下の論理的思考力をどのように鍛えればよいのでしょう。残念ながら、学校ではこの手の話は殆ど教わることはありません。大学のゼミなどでかろうじて体験したことがある、という程度ではないでしょうか。ですから、ほとんどの方は社会人になってから、ある程度の訓練を受けることで身につけるといってもよいでしょう。
ただ、訓練と言っても、セミナーや合宿など大仰な準備はむしろ必要ありません。リーダーシップや礼儀などと同じく、「伝授されるもの」と言うより、「やりながら憶えるもの」だからです。
したがって、ロジカルシンキングは日常の上司との会話の中で十分に訓練することができます。むしろ、日常の訓練をいかに行うかが重要です。では、日常にどのようにロジカルシンキングの訓練を取り入れればよいのでしょう。
おすすめは「3つの質問」を上司と部下の会話に取り入れることです。
質問1 あなたはどう思うか?
論理的思考は、論理を学んでもできるようにはなりません。
セミナーや本というインプットではなく、自ら考えるというアウトプットを行わなければ論理的思考は身につかないのです。したがって、上司が意図的に「考えをアウトプットする状況」を創りだす必要があります。
そこで有効なのが、部下と会議や打ち合わせのときに、必ず1回は「あなたはどう思うか?」と聞くことです。あなたはどう思うか?と聞くことで、部下はアウトプットを強制されます。
質問2 結論から言って下さい。
論理に強くなるためには、結論から考える必要があります。したがって、「あなたはどう思うか?」と聞いたときに、部下にダラダラ答えさせないよう、「結論からどうぞ」と言ってあげて下さい。
部下が意見を述べたら、次に上司は必ず「なぜそう思ったのか?」を続けて聞いて下さい。この「結論」⇒「理由」が、最初に身につけるべきロジカルシンキングの基本形です。
その結果部下は、「結論は◯◯です。何故ならば〜」という会話を意識するようになるでしょう。余談ですが、これは論文と同様の構成です。
質問3 なぜそう思ったの?
トヨタ自動車の課題の原因分析では「なぜを5回問う」という手法が用いられています。なぜなら、表面的な原因ではなく、真の本質的な原因を洞察するために必要な手続きだからです。
もちろん、最初から本質的な原因に到達している部下に行う必要はないですが、深く吟味していない部下の場合、「なぜ、今月の目標は未達だったのか?」と聞いたとき、「結論から言うと、行動量の不足だと思います」など、表面的な理由を答えるでしょう。
行動量の不足を生み出した原因を絶たなければ状況の改善は見込めないですが、さらに「なぜそう思ったのか?」を続けて聞くことで部下に思考を促すことができます。これは論理を意識させる上で非常に有効な訓練です。
まとめ
いかがでしょうか。忠実に行えばたった3つの質問を日常業務に取り入れるだけでかなりの成果が期待できます。ぜひ試してみていただければと思います。
ただし、色々と書きましたが、一点だけ注意があります。
それは「部下がロジカルシンキングできているかどうか」は、上司が論理的思考に長けていなければ判断ができない、ということです。
ですから、可能ならば上の3つは上司の方も意識して部下の方と一緒に実行することをお勧めいたします。