「言ってることはわかるけど、お前が言うな!」の末路

あるクライアント先のプロジェクト・ミーティングでの一コマ。

そのプロジェクトは比較的順調に進んでいるものの、大きな成果を出すまでには至っておらず、どこか決め手に欠けるような状態が続いていました。

プロジェクト・リーダーが、メンバーに対して積極的な提案をするよう促します。

しかし、メンバーも普段から知恵を絞っているため、なかなか意見が出ない。会議室に少しだけ重たい雰囲気が漂います。

ある若手社員が意を決して、一つの提案をしたところ、プロジェクト・リーダーからのキツイ一言。

「言っていることはわかるけど、お前が言うな!」と。

他のメンバーも、一喝されてしまった若手社員を嘲笑気味に眺めています。

というのも、その若手社員は普段から問題行動が多く、メンバーからも不満の対象となっていたのです。

例えば、

・期限を守らないことがある
・口は達者だが、行動力がない
・メンバーの意見に批判的なことを言う

といった言動があり、どちらかと言うと、プロジェクトの足を引っ張っている面が否めませんでした。外部である私から見ても、この若手社員の成長は、プロジェクトを成功させるためには必要なことであるように思えました。

言行一致、有言実行。

チームで仕事をするときには、お互いの信頼関係が大切であり、「言行一致」や「有言実行」は多くの人が、美徳とするところです。

また、問題行動がある社員に対して、「お前が言うな!」とはっきり口に出さないまでも、そうした気持ちになる人が多いのは事実です。

 

その後、ミーティングをオブザーブしにきていた役員の方と意見交換をする機会がありました。

「あの若手社員さんにも成長を期待したいですね。そもそもプロジェクトメンバーは5人しかいないので、1人ひとりがしっかりしないと…」

「確かにそうですね…。」

「何か気になることがありましたか?プロジェクト・リーダーの言い方が少しきつかったでしょうか。」

「いや、言い方もそうなんですけど、それよりも『言っていることは正しいけど、あなたは正しくない』という考え方が良くないなと思いまして。」

「どういうことでしょうか。」

「言行一致や有言実行は、適切な考え方だと思いますよ。私自身、あの若手社員にそうした姿勢を期待しています。

ただ、あまりそれを求めすぎると悪いことが起こるのではないでしょうか。

あまり強く言いすぎると、『結果を出している人』や『正しい行いをしている人』しか発言できなくなるような気がするのです。

それだけならまだいいのですが、組織において『結果を出している人』や『正しい行いをしている人』は、昇進スピードも速いため、結果的にそういった社員は管理職や、プロジェクト・リーダーなど何かしらのポジションについていることが多いと思います。

つまり、『ポジションがないと意見が言いにくい』みたいな雰囲気にならないかな、と少し心配だったんです。

実際、うちの会社は若手社員からの提案や発言が少ないのですが、色々と原因を探っているところでして。

『誰が言ったか』より『何を言ったか』を大切にしていきたいなと考えていたところなんです。」

 

「正論」や「美徳」は大切にしたいところですが、一方で、どんなことにも副作用はあるなと感じた一幕でした。

「社員が消極的だな」と感じたら、少しだけ正論のあり方を疑ってみると良いかもしれません。

「言っていることはわかるけど、お前が言うな!」が「偉くなってから言え!」になってしまっていないか。

 
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この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
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