OJT教育を計画的に進める方法

「わが社の教育は、OJTが中心です。」と言う経営者は多い。しかし、「では、御社のOJTとはどのようなものですか?」と聞かれて、スラスラ回答できる経営者は少ない。よくある回答は、山本五十六を引き合いに出し、「やってみせ、やらせてみて…」といったものだ。

OJTと言ってはみたものの、その実態は現場の管理職に丸投げ、という会社が多いのではないだろうか。

OJTが教育の中心であるならば、その効果を最大化することが大切だ。そこで本記事では、OJTについて、体系的に整理する。これを読めば、自社独自のOJTを構築することができる。

※OJT:On The Job Trainingの略。

 

 

1.なぜOJTなのか?最大のメリットを確認する

OJTの最大のメリットは、業務をしながら指導できる点だ。研修や自己啓発も重要だが、これらは業務の“ついで”に行うことはできない。

新人育成の例で考えてみよう。

新人が取り組む業務に、商談・議事録の作成がある。これは地味なOJTだが、一石三鳥の効果が見込める。

①上司は、議事録作成を新人に任せて、商談に集中することができる。
②商談相手は、後から商談内容を確認することができる。
③新人は、議事録作成を通じて、商談の流れや専門用語を学ぶことができる。

上司が、話ながら議事録を作成することも可能だが、詳細なメモをとることは難しい。それに清書する時間が勿体ない。上司の手が届かない、痒いところを新人に任せる。

商談相手の役に立つように、わかりやすく議事録を書いてもらう。どんな業務も、誰かにとって価値あるものにする。

一石二鳥、三鳥がOJTの目指すところだ。

OJTのメリット・意義

別の言い方をすれば、議事録作成の価値が、新人育成にしかないとしたら、それは業務とは呼べない。全ての業務は自分以外の誰かに価値を発揮するためにある。業務でなければ、オン・ザ・ジョブ・トレーニングではなく、ただのトレーニングと言うべきだろう。

御社で行っているOJTが、上司や顧客にとって無価値であるとしたら、OJTの意義がきちんと共有されていないと考えてよいだろう。

特に、「部下を育てる時間がない」とぼやく管理職がいる場合は、要注意だ。一石一鳥になっている可能性が高い。

御社のOJTは、ちゃんとOJTになっているだろうか。ただのT、トレーニングになっていないか、今一度確認してみて欲しい。

 

2.OJTの基本的なステップを共有する

振り返りと法則化

あなたなら、議事録の作成を任せた新人に対して、何を期待するだろうか。

  • 議事録の読み合わせをしたときに、抜け漏れに気づく
  • 文章やレイアウトのまずさに気づく
  • 上司や先輩が書いた議事録と、自分のものを比較してみる

など、自ら“振り返り”を行うことで課題を整理し、次に生かして欲しいと考えるに違いない。

そして、“振り返り”を通じて、商談や議事録にまつわる何かしらの“法則性”を見出すことを期待するだろう。

例えば、以下のような法則だ。

  • 文章は結論を意識して書いたほうが良い
  • 商談には決定事項が必要だ
  • 商談のはじめに、アイスブレイクがあると話しやすい
  • 商談にアジェンダがあると、効率的に商談が進む

この“振り返り”と“法則化”が、OJTではとても重要だ。

業務を通じて様々な経験を積んでいくことになるが、その経験を上手く成長に変換できなければ、それはトレーニングとは呼べない。ただのJOBであり、業務だ。

「一を聞いて十を知る人間」と、「何度同じことをやっても上手くできない人間」の違いの本質は、“振り返り”と“法則化”にある。

OJTのステップ

新しい経験と応用

年中議事録ばかり作成していたら、どんなに質の高い“振り返り”をしても、いつか成長は止まるだろう。

成長を確認したら“新しい経験”を積ませようとするに違いない。例えば、商談の一部を任せるといった具合だ。

そのとき、議事録作成から学んだ“法則性”を、商談に“応用”してくれたら、上司の教える手間が省ける。例えば、上司がいちいち指導しなくても、アイスブレイクの内容や、アジェンダの内容を部下が自分で考える。過去の経験が次にいきる瞬間だ。

OJTでは、過去の経験と、新しい経験をつなげて考えるよう、部下を導いていくことが重要になる。全ての業務は、それぞれつながっているのだから、OJTもつなげて指導しなければならない。

OJTのステップ

上図のプロセスのように、過去の経験から得た学びが、次の経験に応用できるようになると、OJTは高い効果を発揮する。

このプロセスは、“コルブの経験学習モデル”として、広く知られているものだ。

「応用が利かない部下が多い」と嘆く管理職を多く見てきたが、そのような会社ではOJTの基本的なステップが上司・部下で共有されていないのだろう。

経験と経験を上手くつなぎ合わせて指導していくためには、どのような経験を積ませるべきか、あらかじめ計画しておく必要がある。

そこで、ここからは「経験すべき業務のリスト化」について考えてみたい。

 

3.経験をデザインする ― OJTリストの作成

OJTでは、業務を任せて経験を積ませていくことが大切になるが、任せたくても任せられない場合も存在する。

例えば、商談を任せたいが、目の前にある商談は大型商談ばかりで、新人には任せられない、といった状況は多々ある。大型商談しかない時期が続くと、新人の商談デビューはどんどん遅れていくことになる。

また、任せるかどうかの判断は、現場の管理職に委ねられているため、保守的な管理職の元では、新人の商談デビューが遅れる傾向にある。

このように、OJTは目の前の業務都合や、管理職の性格などに影響を受けてしまい、計画的に進められない面を持っている。平たく言えば、場当たり的になりやすい。

こうした問題を解決するために、経験すべき業務のリストーOJTリストの作成をおすすめしたい。OJTリストは大きく分けて2種類存在する。

1つ目は、専門分野(スペシャリティ)に関するもので、2つ目は、組織分野(リーダーシップ)に関するものだ。

1つずつ解説していく。

専門分野(スペシャリティ)のOJTリスト

職種によって積むべき経験は異なる。営業なら「商談の経験」、経理なら「決算の経験」、労務なら「給与計算」の経験を積んでいくことになる。

職種ごとに積むべき経験をリスト化したものを、専門分野のOJTリストと呼ぶことにする。

リストは自社のスペシャリストと話し合いながら作成すれば良いが、以下3つの視点を示しておく。

以下、営業職を例にとって考える。

【業務のパーツ】

新人にいきなり大きな商談を任せるのは、得策とは言えない。恐らく、業務の一部(パーツ)を少しずつ任せていくことになる。例えば以下のような業務だ。

  • 議事録の作成
  • 打ち合わせ会場の設営
  • 情報収集
  • 提案書の作成
  • 見積りの作成
  • 契約書の準備
  • プレゼンの一部分を担当 等々

この【業務パーツ】のリストに抜け漏れがあると、業務を丸っと任せたときに、例えば商談全体を任せたときに、上手くできない可能性があるため、注意が必要だ。

どんなに優秀な社員でも、一度も経験したことがない業務は、上手くこなすことができない。

【業務の広さ】

業務のパーツができるようになってくると、今度は業務を丸っと任せることが可能になる。そして業務を丸ごと任せるにしても、業務には様々な種類が存在する。例えば以下のような場面だ。

  • 一通りの商談プロセス(リスト化・アポ取得・情報収集・提案・見積…)
  • 商談の種類(新規・既存・復活)
  • 顧客の種類(大型・小型・都会・地方・海外…)
  • 商材の種類(商品A・商品B・商品C…)
  • 関係者が多い場合の対応 等々

多用な業務を積ませることで、業務の幅を広げていくよう、新人を導いていく。

業務の広さは育成上、必要不可欠と言える。なぜなら、幅広い経験が応用力の強化につながるからだ。

【業務の深さ】

同じ業務であっても、その難易度、複雑度が異なる場合がある。例えば、同じ商談であっても、何かしらのトラブルが伴う場合の対応など、業務の深さが問われる場合がある。例えば以下のような業務だ。

  • トラブル対応
  • イレギュラー対応(滅多にないケースへの対応)
  • 提案資料のナレッジ化
  • 顧客の傾向分析 等々

OJTリストを作成することで、積ませる業務を計画化することができる。

このリストは人材育成に必須であるため、管理職が個人的に作成していたり、部門ごとに作成していることがよくある。しかし、会社で統一的に作成しているケースはあまりない。

管理職の性格や、業務都合に左右されないよう、会社で統一的に作成することをおすすめする。

組織分野(リーダーシップ)のOJTリスト

営業職を極めたからと言って、営業部長や経営者が務まるわけではない。リーダーに必要なスキル・資質は異なるからだ。

リーダーに求められることは沢山ある。人材育成、業務改善、部門連携、組織全体の目標達成等。

優秀なリーダーになるために積むべき経験をリスト化したものを、組織分野のOJTリストと呼ぶことにする。

このリストを可視化している会社はほとんど存在しない。(暗黙知の中でやっている会社はある。)

しかし、管理職にもOJTは必要であると私は思う。最初から優秀な管理職などおらず、皆、経験を積みながら、色々な壁にぶつかりながら成長していくからだ。

OJTリストの作り方

作成を進める上で、2つの視点を示しておく。

【自部門の最適化】

所属する部門全体の最適化をするための業務を経験させていく。例えば、以下のような業務だ。
※ここでは、営業職が管理職になる前段階で積むべき経験の一例を記載する。

  • 会議の代行
  • 管理帳票作成の代行
  • 分析と歩留まりの改善
  • マーケティング部門(販促部門)との連携
  • マニュアルやツールの作成
  • 後輩社員の指導/評価/面談
  • プロジェクトや組織のスケジュール管理 等々

管理職になってから会議のやり方や、管理帳票の作成を一から学んでいるようでは、結果が出せない。圧倒的に経験値が不足しているからだ。

経験不足を避けるために、あらかじめ管理職になるための過程をリスト化しておき、管理職になる前に経験させていく。こうすることで、計画的に管理職を育成することが可能になる。

なぜか、必要なスキルについては高額なコンサルティング・フィーを支払ってでも明文化するのに、そのスキルを磨くために必要な経験については誰も教えてくれない、という会社が多い。背中を見て学べと。

しかし、雇用流動性が高い今、「誰の背中を見れば良いか、わからなくなっている」会社が増えていると思うのだが、どうだろうか。

【全社の最適化】

さらに視座の高いリーダーを育てるためには、関心の輪を、自部門から他部門、全社へと広げていくことが必要になってくる。視座を上げるために積むべき経験は、例えば以下のような業務だ。

  • リクルーターを務める
  • 広報活動に参加する
  • 組織横断プロジェクトに参加する
  • 部門間の調整会議を仕切る
  • 経営全体のデータを分析する
  • 経営資源を再配分する(人・金・モノ) 等々

全社の最適化リストについては、自部門の最適化リストより、さらに暗黙知となっており、そのことが優秀な部長育成、本部長育成の阻害要因になっている、と私は考えている。

例えば、部長になれば部門間の調整は、主要な業務の1つになるが、上手くこなすためには、他部門の部長とコミュニケーションがとれてる必要がある。にも関わらず、部長になるまで他部門に興味を持ってこなかった課長がそれなりの割合で存在するのだ。

部長になってから他部門理解に努めるようでは遅いのだが、実際には部長になってはじめて他部門理解を真剣に考えるようになる人が多い。

こうした事態を避けるためにも、組織分野のOJTリストについては、深く考えるようおすすめしたい。

まずは、御社で育成課題になっている階層について、集中的に考えるのが良いだろう。

OJTリストの作り方

 

4.OJTと人事制度をつなげて、ゴールを鮮明にする

上記したOJTリストを作成し運用する上で大切なのが、育成のゴールだ。

ゴールがわからず、がむしゃらに経験を積んでも成長するかもしれないが、ゴール地点がわからないマラソンなど誰も走りたがらないだろう。ゴールがあるから、過酷なレースにも耐えられるというものだ。

(OJTはマラソンのようなものだと、私は考えている。毎日が経験であり、その積み重ねがキャリアを作る。)

例えば、将来、取締役など経営陣になって欲しい人材がいたとする。あなたがトレーナーなら、どんな経験を積ませるだろうか。

新規事業を立ち上げた経験や、赤字事業の立て直しや撤退をした経験を積んでもらってはどうだろうか。赤字事業の立て直しもしたことがないのに、経営を担えるわけがない、と私であれば考える。

どんな事業にも好不調や栄枯盛衰はあるので、そこを誰かが上手にマネジメントしなければならない。

他にはどんな経験が必要だろう。

ライン部門(営業、製造、開発など)と、スタッフ部門(人事、経理、法務など)の両方を経験させてはどうだろうか。全体最適が経営陣の仕事だから、いくつか部門を経験したほうが良いのではないだろうか。

一方、課長になるために、赤字部門の立て直し経験が必要かと言われると、不要だろう。同様に、営業課長(ライン部門)になるために、経理部門(スタッフ部門)の経験は必要ない。

つまり、それぞれの等級・役職(≒ゴール)になるために必要な経験は異なる。

等級制度(役職制度)には、それぞれの等級に必要な役割・スキルなどが書いてあるはずで、それが育成ゴールとなる。よって、組織分野のOJTリストは、等級制度と連動していることが好ましい。

評価制度には、それぞれの職種に求められる成果・スキルなどが書いてあるはずで、それが育成ゴールとなる。よって、専門分野のOJTリストは、評価制度と連動していることが好ましい。

OJTリストの作り方

等級制度や評価制度を見ても、育成ゴールがわからない場合は、人事制度がないと言っているに等しい。人事制度が形骸化するのは、日常であるOJTに使える代物になっていないからだ。現場で使えないから、社員は人事制度に価値を感じないのだ。

OJTのゴールは、会社がしっかりと明示するべきだろう。ゴールが曖昧であれば、人材育成のプロセスも曖昧になり、現場任せになる可能性が非常に高い。

 

5.OJTの場面を設計し、経験から学び応用するよう促す

経験を積んだら、あとは勝手に成長してくれれば楽でいいのだが、本人任せでは上手くいかないこともあるだろう。

例えば、経験の“振り返り”は自分でやって欲しいものだが、業務が忙しいと振り返りが後回しになることもあるだろう。たまに“振り返り”をするが、習慣になっておらず、経験を生かしきれていない人もいるだろう。

仮に“振り返り”を1人でできたとしても、まさに経験不足で“法則化”が上手くできない人はいる。さらに“応用”となると、それなりにセンスもいる。

これらを踏まえれば、経験を学びに変換する作業は、上司やOJTトレーナーの重要な仕事だと言える。

では、学びに変換する作業をサポートするには、どんな場面があるか。

実はたったの4場面しかない。

①同行
②報連相
③面談(事前・事後)
④会議

これら4つの場面、つまりコミュニケーションを上手く設計するのが、OJTの効果を高める肝になる。

①同行

上司、部下で同じ経験を一緒にすれば、振り返りも容易であろう。持っている情報が完全に一致しているからだ。

一方、報告ベースのマネジメントは案外難しい。部下の報告内容の精度が低いと、指導内容を間違えてしまうからだ。

よって、まずは同行が基本で、報連相が応用となる。

蛇足だが、同行は「部下の業務を見る」と「上司の業務を見せる」の両方をセットでやらないと効果的ではない。両方やらないと、違いがわからない部下がいるからだ。

②報連相

時間的制約もあるので、同行と報連相を上手く組み合わせて、指導していくことになる。

「報連相が学びをサポートする場である」という認識がない上司、部下は結構いるのではないだろうか。

「何を学ぶつもり?」「やってみて、何に気づいた?」「次からどうする?」

上司やOJTトレーナーから、こうした質問があれば、それはOJTだ。なければ、部下にとって報連相は面倒なもの、となるに違いない。

③面談

面談と報連相は似ているが、違いはスパンだ。報連相は日常的に、五月雨式に発生するもので、振り返りのスパンが短い。一方、面談は1週間や1ヵ月間をまとめて振り返ることで、経験、学びを俯瞰するために行う。

「この1ヵ月で何を経験して、そこから何を学んだ?」「次の1ヵ月でどんな経験を積んで、何を学ぶ?」

面談時にこうした質問があれば、それはOJTだ。なければ、「あの面談、1on1は何の意味があるんだろう?」と部下が陰口を叩くようになる。

④会議

報連相や面談との違いは人数だ。「三人寄れば文殊の知恵」ではないが、“法則化”は皆でやったほうが良いものになることが多い。

皆で気づきを共有し、形式知としてまとめていく。それはマニュアルになるかもしれないし、チェックリストになるかもしれないし、勉強会の資料になるかもしれない。

会議はナレッジマネジメントの場である。ナレッジが飛び交う会議であれば、それはOJTだ。なければ「会議は時間の無駄」という意見が増えることになる。

 

①~④はどこの会社でも行っている。しかし、OJTの場として機能しているかどうかは、会社によって大きな差が出ている。

OJTの場という位置づけで、①~④の内容や頻度を整理してみてはどうだろうか。

当然だが、上司、部下が同じ認識を持って、その場に臨むことが重要になってくる。

OJTの場面・コミュニケーション

 

6.OJTトレーナーを決める

OJTトレーナーと言うと、安易に先輩社員をあてがう会社が多い。その理由は、「相談しやすい」、「教える側も勉強になる」等が挙げられる。

いわゆる「メンター制度」を導入している会社は、この考え方を採用しているケースが多い。

なるほどもっともな感じもするが、OJTの本質を考えれば、先輩社員にはできないこともあるため、注意が必要だ。例えば、OJTのスタートになる経験=業務委任は、先輩社員にはできない。

結論として、トレーナーは3人いた方が良い。1人目はトレーニー(教わる社員)にとっての「上司」、2人目は「上司の上司」、3人目は「先輩社員」だ。

上司

「上司」に求められることは以下のことだ。

・業務委任
・業務ができるようになるよう、支援すること
・成長度合いの評価

メインのトレーナーは、上司が担うべきだ。

OJTは、その多くが上司の業務を奪取する形で進行する。成長するためには、今できる業務の、1ランク上の業務を任せていくことになるが、1ランク上にいるのは上司なので、上司とのやりとりが一番大きな影響を持つ。

以下の2者はサブのトレーナーとなる。

上司の上司

「上司の上司」に求められることは以下のことだ。

・中長期の経験デザイン
・他のトレーナー(上司、先輩社員)の指導方法の確認と修正
・他のトレーナー(上司、先輩社員)の不足を補うこと

上記してきたように、OJTでは「ゴールに沿って経験をデザインすること」が大切になる。そのためには、ときには人事異動や、プロジェクトへのアサイン等を含めた大きな視野で経験をデザインしていくことが求められる。

したがって、中期的な経験デザインを描くためには、「上司の上司」が必要になる。

また、他のトレーナーにも色々と課題があるに違いない。それを修正するのも、このポジションにいる人の役割になる。

私の知る限り、「上司の上司」がOJTに関わってくる会社は極めて少ない。部下や人事部に任せっきりというのが実情だ。しかし、OJTはもとより、人材の発掘という観点でも、「上司の上司」の関与は必須だ。

先輩社員

「先輩社員」に求められることは以下のことだ。

・相談にのる事
・「上司」の指導を補足すること

「上司」や「上司の上司」には言えないこと、聞けないことがある。基本的に上下関係は緊張関係にあるため、相談にのるのは、斜め上にいる先輩社員が良いだろう。

また、上司たちの説明が難しかったり、時間的制約があって言葉足らずになることがある。そうしたときに、同じ目線で先輩社員が補足することは、トレーニーにとって大きな意味を持つ。

 

7.疑似体験で不足を補う

OJTリストの発想はシンプルなものだが、運用となると、案外難しい。

例えば赤字部門の立て直しを任せたくても、全部門が黒字であれば任せることはできない。

新人に商談を任せたくても、業績が最悪なら、任せている場合ではないだろう。

OJTは経営環境の影響を強く受けてしまうため、運用が思った通りにいかない。

「上手くいかないな、、、」とぼやいている間に、繁忙期や人事異動があると、いつのまにかOJTリストは忘れられてしまうのだ。

まずは中期的に運用し機会を待つ/作ることが大切だが、他にも手はある。本当の体験ではなく、疑似体験を積んでもらうというやり方だ。

疑似体験をどこまで準備できるか。実は、これが、トレーナーの腕の見せ所だ。

例えば、赤字部門を任せることができないとしたら、過去に赤字部門の立て直しを経験した人に聞く。人脈があれば、立て直し中の会社を見学することもできるかもしれない。

それもできないなら、書籍や研修のケーススタディで学ぶという手段もある。

疑似体験でも、何も情報がないよりは、かなりマシと言える。

疑似体験には、直接体験より優れた点が1つだけある。疑似体験は、時間がかからない。

OJTと疑似体験

 

8.OJT研修の進め方

OJTの目的、進め方を共有する研修をOJT研修と呼ぶことにする。

本記事の一番最初に問題提起したように、そもそも「OJTとは?」が共有されていない会社では、まずはOJTの目的、進め方を共有する必要がある。

OJTの実質的な内容について、組織内で共有できていなければ、OJTはこれまで同様、現場に丸投げになってしまい、OJTがOJTではなく、単なるTrainingになったり、単なるJOBになってしまうからだ。

OJT研修のカリキュラム

そのカリキュラムは以下の①~⑦ようになる。これらは、そのまま本記事の1~7にあたる。

①OJTの意義を共有する(なぜOJTなのか?)
②OJTの基本的なステップを学ぶ
③OJTリストを作成する
④OJTのゴールを確認する
⑤指導場面を設計する
⑥OJTトレーナーを選定する
⑦不足を疑似体験で補う

本記事を読んで、1~7の順番に違和感があれば、進める順番をアレンジしてみて欲しい。本来、4は2の位置に来るべきものだが、伝わりやすさを意識して、4に配置している。

尚、トレーナーとトレーニーで研修内容を分ける必要はないだろう。まずは共有言語を作るところから始めて欲しい。

むしろ、階層別で行うより、部署単位で行ったほうが研修の効果は高い。OJTリストの作成・共有1つとっても、部署単位でやったほうが進めやすいからだ。

 

さいごに

上記してきた内容は、基本編であり応用編ではない。応用編としては、以下のようなものが考えられるだろう。

・振り返りを深めるコーチングの仕方
・オンラインにおけるOJTの進め方

といった細部のやり方や、環境にこだわることもできるし、

・OJTからOJD(On the Job Development)へ
・業務経験(OJTリスト)と人事データベースの紐づけ
・ジョブ型人事において、OJTはどうするべきか?

といったように、発展させたり、俯瞰したりすることもできるだろう。

実際に、書籍やセミナーのタイトルには、OJTの応用編にあたるものが散見される。

しかし、まだOJTの目的、進め方が共有できていない場合は、基本編から行うことをおすすめしたい。

基本があって、次に応用がくる。

 

参考:【人事の悩みが発覚】96%の企業がOJTに課題を感じていると回答!【社会人向け学習動画サービス「Schoo」自社調査】