リーダーシップとマネジメントの「違い」「優劣」「分担」

リーダーシップとマネジメントの違いは何だろうか。

いや、その前に、そもそも分けて考える必要はあるだろうか。

結論として、リーダーシップとマネジメントを分けて考える意味はある。リーダーシップとマネジメントが別のものであるとすれば、今の自分、もしくは自分のチームに、どちらが不足しているか判断するための指針になる。

自身が初めて管理職になった頃には、今ほどリーダーシップに関する情報はなかった。チームの成果を最大化するために、懸命に努力したが、今思えばその努力のほとんどがマネジメントに関するもので、バランスを欠いていたように思う。思い起こせば、リーダーシップは強いが、マネジメントができずに成果を出せていなかった管理職もいた。

リーダーシップとマネジメントは車の両輪。当時の自分たちは常に片輪走行をしている状態だった。片輪走行していることに、早く気付ければ、もう少し楽に結果を出せたと思う。そこで今回は両輪の違いを明らかにし、能力開発の指針を探っていきたい。

1.リーダーシップとマネジメントの違い

(1)ピーター・ドラッカーによる比較

マネジメントの祖であるピーター・ドラッカー曰く、

マネジメントとは物事を正しく行うことであり、リーダーシップとは正しい事を行うことである。

7つの習慣で有名なスティーブン・コビー曰く、

マネジメントは手段に集中しており、どうすれば目標を達成できるかという質問に答えようとするものである。
一方、リーダーシップは、望む結果を定義しており、何を達成したいのかという質問に答えようとするものである。

両者の定義に共通していることは、リーダーシップはWhatを問うものであり、マネジメントはHowを問うものであるということ。言葉の定義は難しい。簡単に理解するためには、たとえ話が有効だ。

 

(2)リーダーシップとマネジメントの例え

建築物に例えてみるとどうなるだろう。

どんな家が欲しいかを示すのが、リーダーシップ。(What)
 
実際に家を作るのが、マネジメント。(How)
 
設計図面やパース、スケッチを作って、未来を描く。これがリーダーシップ。(What)
 
実際に基礎を作り、柱を立て、現実のものにする。これがマネジメント。(How)

 
簡単にしてみると、全くの別ものであることがわかる。設計図面やスケッチを書くには、建築家としてのスキルが必要だ。柱を切るには、大工としてのスキルが必要だ。

そして、どちらも必要であることがわかる。図面がなければ大工は動けないし、大工がいなければ家は建たない。こう考えたらどうだろうか。

建築家がリーダーで、
大工の棟梁がマネージャー。

 
整理ができれば、今の自分、自分のチームにどちらの要素が欠けているかを考えることができる。

自身が管理職になりたての頃は、どんなチームにしたいかというビジョンがなかった。つまり図面やスケッチがなかった。ひたすら、生産性を追求していた。つまり、どうすれば綺麗に木材が切れるか、木材をどこに置けば工事がスムーズに進むかといったことばかりに気をとられる毎日だったように思う。

 

2.リーダーシップとマネジメント、どちらが重要か?

(1)ウォーレン・ベニスによる比較

ウォーレン・ベニスは南カリフォルニア大学リーダーシップ研究所の初代所長だ。曰く、

  1. マネージャーは「管理」し、リーダーは「革新」する。
  2. マネージャーは前例の「模倣」で、リーダーは常に自らが「オリジナル」である。
  3. マネージャーは「維持」し、リーダーは「発展」させる。
  4. マネージャーは「秩序に準拠」し、リーダーは「秩序を創り出す」。
  5. マネージャーは「短期的視点」を持ち、リーダーは「長期的な見通しを持つ」。
  6. マネージャーは「いつ、どのように」を、リーダーは「何を、なぜを」問う。
  7. マネージャーは「損得」に、リーダーは「可能性」に目を向ける。
  8. マネージャーは現状を「受け入れ」、リーダーは現状に「挑戦」する。
  9. マネージャーは「規則や常識通り」に行動し、リーダーは最善の結果の為なら、「規則を破ることも辞さない」。
  10. マネージャーは「能吏」であり、リーダーは「高潔な人格」が求められる。

 
この比較は面白い。しかし、リーダーシップを強調しており、漠然とした読み方をすると、リーダーシップがマネジメントより重要であると感じてしまう。何となく、リーダーのほう格好が良い。

しかし、建築物の例にあったように、リーダーシップとマネジメントに優劣はない。建築家と大工の棟梁に優劣はない。どちらも家づくりに必要な役割だ。

上から2番目にある「模倣」と「オリジナル」について。オリジナルのほうが聞こえは良いが、模倣も重要だ。大工の見習いは、まず先輩大工の模倣から始める。木材を正確に切れるようになってはじめて、図面通りの家が完成する。のこぎりのひき方がオリジナルである必要はない。むしろ、代々先人たちが培ってきたスキルを学ぶべきだろう。

 

(2)順番

注意すべきことがあるとすれば、「順番」があることだ。それも明確に。図面がない状態では、家づくりは始められない。チームが路頭に迷っているときは、リーダーシップが必要になる。

いつも同じ家を作るのであれば、リーダーシップは要らない。以前と同じ図面を見れば良い。効率よく、正確に工事を進めるためには、マネジメントが必要になる。

 

(3)希少性

希少性についても注意が必要だ。私の知る限り、優秀なリーダーと優秀なマネージャーでは、前者のほうが明らかに希少性が高い。理由は色々考えられる。

  • マネジメントスキルのほうが先に普及した。
  • 農耕民族である日本人にはコツコツ改善するスタイルが向いている。
  • リーダーシップは目に見えない。マネジメントは見える。学習のしやすさが異なる。
  • リーダー業務とマネジメント業務では、後者のほうが時間がかかる。つまり人手が必要になる。

希少価値が高いほうがキャリア開発上は有利だ。収入に限定して考えれば、リーダーシップに軍配が上がることになる。

有名な建築家と言えば、安藤忠雄や黒川紀章(故人)がいる。世界でも名を馳せている。では、大工の棟梁の名前を挙げることはできるだろうか。業界人でなければ難しいだろう。リーダーシップ崇拝論にはこうした背景があるように思う。

 

(4)必要となるタイミング

今の自動車には安全のために、エアバッグがついている。最初にエアバッグを構想した人は偉大だ。交通事故から命を守る装備を作れないか。この問いかけを行い、答えを出す過程がリーダーシップだ。

構想通りのエアバッグを作る過程がマネジメントになる。品質が良いものを、効率よく量産することが求められる。

今、日本が世界に誇るエアバッグ・メーカーのタカタが苦境に立たされている。大量にリコールを起こし、利益が一瞬で吹き飛んでしまった。品質不良はマネジメント不足が原因だ。今、タカタが見直すべきはマネジメントプロセスであると思う。構想は素晴らしくとも、それを実現することができていないからだ。

元々、タカタはシートベルトを製造していた。ホームページによれば、「安全をつくる仕事」がタカタの仕事だ。次に何を作るべきか(What)を考えたから、他社に先駆けてエアバッグを開発し、今の地位を築くことができた。

リーダーシップは、新しいことを始めるときに必要だ。
マネジメントは、新しいことを確実に行うときに必要だ。

両者に優劣があるのではなく、必要とされるタイミングが異なるということだ。

 

3.役割分担

(1)役割分担は可能か

役割分担は可能だ。可能というより、むしろ必要だ。建築家が10人いても、大工の棟梁がいなければ、良質な建築物を量産していくことはできない。逆もまた然り。

ソニーで働く友人が面白いことを言っていた。

「ソニーに新卒で入るような人は、学生時代にリーダーをしていた人ばかりで、皆が自分の意見を持っている。一見素晴らしいことだが、自己主張が強い人が多いから、会議一つやってもなかなか意見がまとまらない。」

人の話を聞く、人の意見をまとめるのもリーダーシップの要素であるから、この話は役割分担を議論するには不適切な事例かもしれない。それでも、リーダーシップ崇拝論に対して一石投じるには十分な事例であると思う。

今のチームを適切に診断する必要がある。欠けている役割を、自分が演じるか、誰かに任せる。

 

(2)責任はどちらが重いか

部長と課長では、部長のほうが責任が重い。では、リーダーシップとマネジメントとでは、どちらの責任が重いだろうか。タカタのエアバッグで考えてみよう。

部長がリーダー役でエアバッグ作ろうぜ、と言い出した。課長がわかりました、と言ってマネージャー役でエアバッグを量産した。マーケットでニーズがなくて売れなかったら、どちらの責任が重いだろうか。この場合はリーダー役の部長ということになる。

逆だったらどうなるだろうか。課長がエアバッグ作りましょうよ、と言いだした。部長がそれいいね!と賛同してエアバッグを量産したが、売れなかった。どちらの責任が重いだろうか。課長が言いだしっぺだから課長のせいにしたくなるところだが、意思決定権が部長にあれば、やはり部長の責任ということになるだろう。

リーダーシップは誰が発揮しても構わないが、責任は上から順にとるという原則は変わらない。何となく、部長がリーダーシップを発揮したほうが納まりが良いというぐらいの違いしかないはずだ。

 

(3)今、自分はどちらを演じるべきか

それは状況による。

少しくどいかもしれないが、新しいマーケットに打って出るような変化が必要であれば、リーダー役を演じるべきだろう。今のマーケットで生産性を上げる必要があれば、マネージャー役を演じるべきだ。

 

4.リーダーとマネージャーの育成

リーダーを育てるためには、優秀なリーダーでなくとも良いかもしれないが、最低限、リーダーシップをきちんと理解しなければならない。できれば範を示したほうが育成しやすいだろう。逆もまた然りで、マネージャーを育てるためには、良いマネジメントをやって見せられたほうが良い。

ここでも希少性が問題になってくる。優秀なリーダーのほうが少ないから、優秀なリーダーを育てるためには、後進の学習材料となるべく、自ら範を示す必要性が出てくる。優劣はないが、希少性は常に育成上のボトルネックになる。

少し話はそれるが、自分より立場が低い人のビジョンを、自チームのビジョンとして採用できる、懐の深いリーダーがいる。それができれば組織が飛躍的に拡大していくことになる。リーダーの中のリーダーもいるということだ。

 

5.大工の棟梁にリーダーシップは不要か

図面通りに作ることはマネジメントに当たる。

では、大工の棟梁がこう考えたらどうなるだろう。

「大工仕事を一つの伝統芸能として、後世に伝えていくべきだ。」
「大工の地位向上を意図して、協会を作りたい。」
「大工のスキルを海外でも普及させたいから、海外拠点を出したい」

と言い出したら、それはマネジメントだろうか。明らかにリーダーシップだ。

リーダーシップとマネジメントの違いをわかりやすくするために、建築家と大工で話を進めてきたが、表面的なことに囚われてはいけない。二項対立は理解のためには便利だが、わかりやすさは時々誤解の原因となる。

本質を間違えないようにするために、大工のリーダーシップについても書いておくことにする。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。
 
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この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。

 

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