先日、何人かの新卒と「評価面談」という名の面談を行った。といっても、厳密に言えば目的は新卒を評価することではない。
実際に行ったことは、
「新卒の上司がどの程度熱心に育成を行っているか」と「新卒の成長実感」
とのズレを聞くことだった。
これは大きく4つの領域に分かれる。
- 熱心に教育しており、新卒の成長実感もある上司
- 熱心に教育しているが、新卒の成長実感がない上司
- あまり教育に時間を割けていないが、新卒の成長実感がある上司
- あまり教育に時間を割けておらず、新卒の成長実感もない上司
すると面白いことに圧倒的に2.が多いという結果になった。
上司は新卒に「時間を割いている」わりには、当事者は成長している実感が無いと回答している。
これは結構大きな問題で、「成長実感が無い」「このままでいいのだろうか」と真剣に悩んでしまう新卒が、かなり多いことの原因とも言える。
なぜこんなことが起きるのだろうか。
上司がしていたのは基本的に「ダメ出し」のみ
更に詳しく話を聞いてみるため、上司に「何に時間を使っていますか?」と聞いた。すると多いのは、
「できていない所の指摘をして、改善をしてもらっています」
という回答だった。
まとめると、上司が行っているのは以下の3つだ。
- できていない、やれていないというダメ出し
- 具体的ではない「改善せよ」という指示
- 具体的ではない「勉強しなさい」という指示
実は、マネジメントが上手ではない上司にありがちな行動が上の3つだ。こうした上司のもとでは、部下は「ダメなことはわかるが、何をどうすれば良いのかがわからない」のだ。
この状態では部下に非常に大きなストレスがかかる。暗闇の中を手探りで歩かされて、間違った方向に行ってしまうと殴られる、といった状態を想像してもらうと良いだろう。
もちろん部下に「自分で考えろ」「任せる」と言いたい上司の気持ちもわかるが、山本五十六もこう言っているではないか。
“やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かず”
「放任」と「考えさせる」「任せる」は全く異なるものだ。まずは上司が具体的な方策を与えなければ、部下は動けない。
成長実感のためには、到達目標を明示する
成長実感を部下に持ってもらうために重要な事はただ一つ、「マイルストーン」を置くことだ。
つまり「到達の基準点」を設定する。これは、成長実感の本質が「到達点をクリアしたことがわかる」にあるからだ。
その点、ゲームは良く出来ている。ゲームはレベルアップやパラメータの上昇が目に見えるため、成長実感を感じやすい。だから目標到達が楽しくて、皆ゲームにハマるのだ。
そして、忘れてはならないのが到達点は2種類を用意すること。遠い到達地点と、近い到達地点だ。
ゲームで言うと「ゲームクリア」が遠い到達地点、「レベルアップ」や「アイテム入手」が近い到達地点となる。
近い到達地点ばかりを示しても「目的」を感じにくいし、遠い到達地点だけを示されても「ヤル気」が持たない。このバランスが、目指すべき姿であり、それが両方示されているのが所謂「教育計画」と呼ばれるものだ。
これは受験でも全く同じだ。大学受験指導をしている四谷学院は、「55段階個別指導」という形で、大きな「入試合格」という目標に向けて、細かくハードルを設定している。
したがって、成長実感を持たせるには「教育計画」が不可欠なのである。
仕事ぶりの基準は高く設定する
では「教育計画」は具体的にどのように作るべきか。大企業の人事部が作るような重厚なものは全く必要ない。上司と部下の間で以下のように簡潔なものを取り交わせばよいのだ。
- 今年中にあなたに求めること、3年後までに求めること、をいくつか紙に書いて提示する。
- 求めること一つ一つに対して、具体的にやるべきことと期限を提示する
もちろん最初から甘い目標を設定することはない。その人の長期に渡る仕事ぶりは、最初の上司の目線の高さ、高い水準を求めるかどうかに左右されるからだ。
ピーター・ドラッカーが言うように、人は、多くを求めれば、多くを実現する存在なのだ。
そして当然のことながら、高い水準を求めれば、どのようにモチベーションを保つかが課題となる。
そこで重要なのは「褒める」ことではなく、なんとかして上司と部下が力を合わせて試行錯誤し、設定したハードルをクリアさせることだ。そうすれば、人は自然についてくる。
【まとめ】
- 成長実感がない部下は多いが、一方で上司はきちんと世話をしていると感じている。
- 上司と部下のギャップを埋めるためには「マイルストーン」が必要である。
- マイルストーンは、遠い将来のものと、近い将来のもの、2種類を用意する。
- マイルストーンに沿って、やるべきことの具体的な指示を出す。
- マイルストーンを協力して乗り越えれば、部下の成長実感は高まる。