会員制リゾート「リゾートトラスト」の成功要因とビジネスモデル

成功要因とビジネスモデル会員制リゾート「リゾートトラスト」はなぜ急成長したのか

リゾートトラストという会社をご存じだろうか。

「エクシブ」を始めとした会員制リゾートを手掛け、その市場では31年連続シェア1位(日経MJ調べ)と他の追随を許していない。旅館業界でも2022年には西武ホールディングスを押しのけて売上高1位に輝いている。

私たち家族も機会があって軽井沢のエクシブホテルに宿泊したことがあったが、非常に感動したことを覚えている。

豪華絢爛な外観と内観にまず圧倒された。質の高いホスピタリティに安心感を覚え、部屋の華々しさも強く印象に残った。

120㎡超のスイートルームには重厚なテーブルに大きなソファと暖炉、合計4台ものテレビ、2つのトイレを備えている。この部屋がわずか1室3万円で宿泊できる。

3人で宿泊したので、一人当たりわずか1万円で宿泊できた。この圧倒的なコストパフォーマンスから、エクシブホテルの魅力を強く感じた。

私たちを招待して頂いたオーナーは某企業の経営者で、時々こうして友人を招待しているらしい。ご自身はもちろん、社員にも福利厚生の一環として利用させているとのことだった。

このような経営者や旅行を好む層を上手く取り込んでいるのだろう。会員数は年々増加しており、2023年には19万名に達している。

成長し続けるリゾートトラストの成功要因はどこにあるのだろうか。

リゾートトラストの成功要因を端的に言うと、「ハイセンス・ハイクオリティ」「エクセレントホスピタリティ」の理念を基盤として会員のニーズを徹底的に追求したことにある。会員のニーズを拡大する形でゴルフ、メディカル、シニアライフの事業を取り入れ、深堀する形で多様な会員グレードを開発した。

リゾートトラストの成功要因・ビジネスモデル

以下、歴史やビジネスモデルを詳しく解説していきたい。

リゾートトラスト会員数

1.リゾートトラストとは

リゾートトラストの2023年3月期の売上は1,698億円であり、2024年3月期の売上は過去最高の売上額を見込んでいる。近年ますます増収を続けるリゾートトラストはどのように始まったのか。歴史をひも解いてみたい。

会社概要

商号:リゾートトラスト株式会社
創業年月日:1973年4月創業
本社所在地:名古屋市中区東桜二丁目18番31号
代表:伊藤與朗
資本金:195億9000万円
従業員数:7,943名
事業内容:会員権事業、ホテルレストラン事業、ゴルフ事業、メディカル事業、シニアライフ事業
※2024年1月現在

沿革

1973年 4月 名古屋市中区に宝塚エンタープライズ株式会社設立
1974年12月 会員制リゾートホテル「サンメンバーズひるがの」開業
1982年12月 新宿区に東京本社を開設し、二本社体制とする
1986年 4月 リゾートトラスト株式会社に商号変更
2000年11月 東京証券取引所及び名古屋証券取引所市場第一部に上場
2022年 4月 東京証券取引所プライム市場に上場

リゾートトラスト売上高

会員制リゾートの始まり

リゾートトラストの創業者である伊藤與朗氏は、宝塚不動産という主に賃貸管理を営む不動産屋の息子であった。19歳の時に父の仕事を手伝うような形で宝塚不動産に入社したが、わずか2年後に父親が亡くなった。

伊藤與朗氏は、急遽この宝塚不動産を継ぐことになった。この会社が後に宝塚コーポレーションとなり、リゾートトラストの大株主となる。この時はまだ会員制リゾート自体この世に存在しなかった。

そもそも会員制リゾートとはどのように生まれたのだろうか。その始まりは、椿山荘や箱根ユネッサンを手掛ける藤田観光が行ったものだと言われている。

「休日にリゾートホテルや旅館を宿泊しようとしてもなかなか予約が取れない」「取れたとしても料金が高く思いがけない出費となってしまう」との声に応える形で、1965年にフジタグリーンメンバーズという会員制リゾートが誕生した。

フジタグリーンメンバーズクラブでは、ゴルフ会員権と同じように「預託金」方式で会員権を購入する形をとった。

当時は田中角栄首相が打ち出した列島改造ブームで日本中が湧いており、地価上昇とともに開発意欲が高まっていた。すると、フジタグリーンメンバーズを模倣するような形で、この「預託金」方式の会員制リゾートは全国的に増えていった。

これが日本最初の会員制リゾートブームだと言われている。

「預託金」方式と「共有持分」方式

伊藤與朗氏もこの潮流に乗ろうと、遊び仲間であった公認会計士の伊藤勝康氏と共同で、1973年、現在のリゾートトラストの前身となる宝塚エンタープライズを設立した。

翌年サンメンバーズひるがのというホテルを建設し、フジタグリーンメンバーズクラブと同じく「預託金」方式の会員制リゾートを始めた。

しかし、当時はオイルショックの真っただ中である。宝塚エンタープライズはいきなり苦境に陥った。

それでも不幸中の幸いか、すでに会員を多く抱えた会社の方が状況は悲惨だった。経済不安から会員の解約が相次いだのである。リゾート管理会社の多くは、預託金返金に耐えられずに次々と破綻してしまった。

「預託金」方式では、経済不安に対するリスクを保有することになってしまう。そこで考えられたのが「共有持分」方式だ。

「共有持分」方式とは、その名の通り、建物の所有権の一部を共有という形で会員権を取得する方式である。このことにより、預り金を返金するリスクがなくなる。また、会社として不動産を保有するコストも小さくなる。

宝塚エンタープライズは、当初「預託金」方式を導入していたものの、すぐに「共有持分」方式へと移行した。あくまで推測ではあるが、リゾート管理会社が破綻していく惨状を見て「共有持分」方式へ切り替えたのだろう。

リゾート会員権預託金方式と共有持分方式の比較

リゾートトラストの発展

その後社名をリゾートトラストに変え、この「共有持分」方式を主軸に会員制リゾートを発展させていった。

具体的には、「エクシブ」シリーズ、「離宮」シリーズ、「ベイコート」シリーズ、「サンクチュアリコート」シリーズを打ち出していった。

当初の「エクシブ」は、鳥羽、伊豆、軽井沢、白浜、淡路島、琵琶湖へと建てられていったが、その共通点として交通アクセスが悪く、人里離れた場所に超豪華な施設を建てるという特徴がある。

私が行ったエクシブ軽井沢は、駅から車で30分のところにある。周りに何もない高原地帯に煌びやかな施設がぽつんとあるような印象だった。

そのような場所であれば、土地仕入れ価格を押さえることができる。用地開発の初期費用を押さえることで、建設費用の早期回収を試みたのだろう。

バブル崩壊後、リゾートトラストは経営破綻したホテルを次々と買収した。エクシブ初島はその一つである。この時期のリゾートトラストは、初期費用を押さえてコストの回収を早めることで、体力を蓄えることに注視していた。

そして、2000年以降、その蓄えた体力を吐き出すように、「離宮」シリーズを打ち出して観光地にハイクオリティなホテルを次々と建設していった。

その後にはさらに豪華な「ベイコート」シリーズ、現在は「サンクチュアリコート」シリーズを売り出している。

会員制リゾート業界では随一の存在となっており、そのシェアは70%を誇る。東急ハーベストで知られる東急不動産を圧倒的に突き放している状況である。

2.リゾートトラストの特徴

リゾートトラストの特徴は、多様な会員制、多様なグレード、ハイクオリティだ。以下、具体的に各特長と内容を述べていく。

多様な会員制

ホテルリゾート会員権にとどまらない多様な会員制を備えているのがリゾートトラストの特徴だ。現在はその他、ゴルフ会員権、メディカル会員権まで領域を広げている。

先ほど示した会員数の表は、これらの会員権を複数持つ方をダブルカウントしている。一見会員数が増加し続けているように見えるが、会員権が多種化していることも要因としてある。

高齢化した会員にゴルフ会員権やメディカル会員権の加入を促すことで、会員数の維持・増加を図ることができる。

多様なグレード

当初からA(スタンダード)、C(ラージ)、E(スイート)、S(スーパースイート)等の多様なグレードを設けているのもリゾートトラストの大きな特徴だ。

そのことにより、多様な層のニーズに応えることができる。以下が既に完売しているエクシブ鳥羽別邸の価格表だ。

エクシブ鳥羽別邸会員権価格一覧表

退職金で支払える500万円台から富裕層向けの3,000万円台と幅広い価格設定を行っていることが分かる。

また、シリーズの変遷ごとに新たなグレードが産まれ、既存のグレードとの互換性を持たせていることにも大きな特徴がある。

以下がその一覧表だ。

エクシブ・離宮・サンクチュアリコート・ベイコート会員権グレード関係図

上の図の矢印がグレード間で利用可能であることを表している。

例えば、エクシブシリーズのラージ会員とスタンダードグレード会員は、離宮シリーズのCBタイプの利用が可能となり、スイート会員は、スイートSEタイプの利用が可能となる。

また、エクシブシリーズのスタンダード会員は、サンクチュアリコート・ベイコートシリーズのベイスイート・クラブスイートの利用も可能となる。

弱冠複雑ではあるが、この互換性が既存の会員権の価値を高め、会員の維持に繋がっている。

なお、現状は上記の図の通りだが、リゾートトラストは、新しい会員権の売上状況や既存会員のニーズによって随時利用できる範囲を変更している。

ハイクオリティ

経営理念「ハイセンス・ハイクオリティ」「エクセレントホスピタリティ」を体現するかのように、圧倒的なハイクオリティとホスピタリティを感じることができる。

エクシブに代表されるホテルは冒頭に述べた通り大変素晴らしいクオリティだったが、その他の事業でもこの理念が浸透されているように思う。

私は以前、リゾートトラストが手掛けるメディカル事業である「セラヴィ新橋クリニック」の健診を受けたことがある。

綺麗で広い施設に、待ち時間が少なく洗練されたオペレーション、笑顔を絶やさない従業員の対応。それはまるでホテルの接客の様であった。

3.成功要因

リゾートトラストの大きな特徴として、会員制、多様なグレード、ハイクオリティを挙げた。これらの特徴があるからこそ、リゾートトラストは成長し続けているのだと考えられる。

では、具体的にどのようなビジネスモデル、どの点に成功要因があるのか。以下述べていきたい。

(1)会員ビジネス ~収益構造(ビジネスモデル)~

①安定した会員権収益

以下がリゾートトラストの営業利益の内訳だ。

リゾートトラスト営業利益の割合

営業利益の実に60%弱を会員権収益が締めている。会員が増え続ける構造さえ作れば、この収益を安定化することができる。

この点、リゾートトラストでは、多くの種類の会員権を設けたり、既存会員権の価値を上げることで、会員数の維持・増加を行っている。

②囲い込み

リゾートトラストでは、新しいホテルが建設される前に会員権を売り出す。基本的にはホテル建設前に会員権を完売する。このことにより、ホテル建設費用の早期回収が可能となる。

ただ、会員権は決して安くない。以下がエクシブ湯河原離宮の会員権価格の一覧だが、この会員権は現在完売している。

エクシブ湯河原離宮会員権価格一覧表

新規顧客に売り込むというよりは、多様なグレードを活かして既存会員にアップグレードとして売り込んでいくのが主流のようである。

既存の会員は裕福でハイクオリティを求めている方が多い。その声に応えるかのように、近年の「ベイコート」シリーズ、「サンクチュアリコート」シリーズでは、さらに上のロイヤルスイートというグレードを設けた。

以下が横浜ベイコートの会員権価格一覧であるが、ベイスイートが今までのスイート相当、ラグジュアリースイートが今までのスーパースイート相当と考えて頂いてよい。

横浜ベイコート会員権価格一覧表

スイート相当の会員に、「もう少しローンを組めばロイヤルスイートにグレードアップできますよ」と売り込むのである。

満足度の高い既存会員に先立って提案することで、より特別感を感じさせることができる。

③ニーズの取り込み

リゾートトラストがゴルフ事業、メディカル事業、有料老人ホームの事業へと進出した背景には、高齢化してきた会員へのニーズを取り込む意図がある。

リゾートトラストでは、「ハイセンス・ハイクオリティ」「エクセレントホスピタリティ」の経営理念のもとに、会員の為にハイクオリティな体験を提供してきた。

その体験を継続させるには、会員のニーズを常に汲み取っていく必要がある。

そこで、リゾートトラストでは、会報誌を始めとした情報提供とともにアンケートや相談窓口を設けることで、常にニーズの把握に務めている。

メディカル事業は、利用客の「健康でなければ余暇を楽しめない」と発した意見がきっかけになった。

現在は会員誌よりもタイムリーに相互のやり取りが可能になることから、RTTGポイントクラブとLINE公式アプリの加入を主軸にニーズの吸い上げを行っている。

(2)ポジショニング

時代ごとにポジショニングを移り変えていることにも特徴がある。

1990年までの別荘ニーズが高かったころは、喧騒から外れた場所でかつハイクオリティなホテルを建設した。そのことにより、ホテルで一日過ごしたいという巣ごもり需要を取り込むことに成功した。

ホテルにはキッズルーム、フィットネスジム、プール、大浴場にサウナ、和洋のレストランやバーを備えており、一日中ホテルで過ごすことができるようになっている。

2000年以降は、観光地にさらにハイクオリティなホテルを建設した。より高いクオリティを求める既存会員のニーズと、会員収益の安定化でより高いリスクを取ることが可能となったことが要因としてある。

既存会員権のグレードでも新しいホテルを利用できるように設定することで、既存の会員権の価値を上げることにも成功した。

継続的にリゾートトラストの会員でいるメリットを与え、ファンを獲得していったことが、現在の形につながった。

4.今後の展望について

ここまで、リゾートトラストの多様な会員制と多様なグレードを説明しながら、ビジネスモデルと成功要因について述べてきた。今後どのようにリゾートトラストは展開していくのだろうか。

今後のホテル戦略

2024年3月25日、リゾートトラストは新たにサンクチュアリコート高山をオープンする。このホテルは、従来の大規模で豪華さ兼ね備えたホテルではなく、中規模でテーマ性を重視したホテルである。

コロナ禍を経た後は、よりプライベートな空間を大事にする顧客層が増えるとの予測からこのようなホテルをオープンした。既存会員からも「プライベート空間を大事にしたい」というニーズがあったのだろう。

一日中ホテルにいながらプライベート空間を確保し、癒しの時間をすごすことができる。今後もこのような中規模でテーマ性を重視したホテルをオープンしていく方針だ。

海外の会員制ホテルとの提携

2023年12月、リゾートトラストはバンヤンツリーHDとの業務提携を発表した。バンヤンツリーHDは、世界20か国以上でリゾートホテルを展開している会社だ。

今後相互送客を可能にする形で提携を進めていくのだという。海外でも会員制リゾートを利用できるとなれば、現在の会員権の価値がさらに高まる。

国内にとどまらず、今後は海外を見据えた新たなニーズを発掘している。

他事業への進出

リゾートトラストは現在、最先端のガン検診を行う「ハイディック」事業に重きを置いている。この施設は、会員が優先的に最先端の治療を行う施設である。現在の会員の多くが一定年齢層以上だ。

2021年にグループ・アイデンティティ「ご一緒します、良い人生 より豊かでしあわせな時間(とき)を創造します」を制定した。このグループ・アイデンティティを守るべく、今後、ますますメディカル事業に力を入れていくだろう。

なお、この最先端のガン検診を行う施設は、2024年大阪・東京、2026年その他1か所に開業する予定である。

5.まとめ

リゾートトラストは、既存会員のニーズを取り入れる形で、多様な会員制とグレードを設けてきた。

従来リゾートホテルのみの事業が現在ではメディカル事業へと展開している。会員への価値の模索がこの事業展開へとつながっているのだと思う。

そして、この会員への価値の模索がそのままリゾートトラストの収益へとつながっている。この価値を模索する限り、リゾートトラストファンは今後も増えていくだろう。

近年ファンマーケティングと呼ばれて久しいが、リゾートトラストは、このファンマーケティングを見事に体現しているのではないかと思う。

この多様化する社会で、ファンのニーズをどのように取り入れていくのか。今後もリゾートトラストの動向を見ていきたいと思う。

参考一覧

  • 「リゾートトラスト株式会社 2023年3月期決算説明資料」
  • 日本経済新聞社(2017).「ナゴヤが生んだ『名』企業」 日本経済新聞出版社