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フィードバックの方法で重視すべき点は「客観性」

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仕事で何気なく使う言葉に「フィードバック」があります。

「評価面談ではきちんとフィードバックせよ」
「結果だけではなく、プロセスもフィードバックせよ」

といった具合に、ビジネス用語として市民権を獲得した感がありますが、定義が曖昧なまま使われていることも多いと感じています。

研修中、参加者同士で互いにフィードバックするよう促すと、フィードバックとは言えない意見があることに戸惑います。

それは以下のような意見です。

1.「もっと大きな声で話したほうがいいと思いますよ。」
2.「もっと自分の意見を主張しないとね。」
3.「さっきの意見はすごく鋭いですよね。」

聞いているこちらが少しヒヤヒヤするぐらい、ストレートな意見だったりします。

1は「助言」、2は「指摘」、3は「評価」です。いずれもフィードバックではありません。

そして、助言や指摘、評価をすることの難点は、その担い手が、相手から信頼されていなければ効果が見込めないどころか、相手の心証を害してしまうところにあります。

つまり上手くやらないと、「上から目線だな」と思われてしまう。

そうした点に考慮して、「フィードバックする際は、良い点を褒めてから、改善点を指摘しましょう」といったやり方がまことしやかに言われますが、これもフィードバックではありません。褒めてから、指摘しているだけです。

こうした変化球は、確かに直球を投げるだけよりかは幾分マシです。

しかし、この手のテクニックは、何度か繰り返せば相手側にも「褒められたら、次に指摘がくるな」とわかってしまいます。

助言や評価は、どのように伝えようと、伝える側の「主観」が入っているため、非常に恣意的な行為であると言えます。

一方で、フィードバックの一番の特徴は「客観的」であることです。客観的であるが故、相手が自分で考える余地があり、受け入れやすいという点が、フィードバックが効果的とされる理由です。

今回の記事では、本来的な意味でのフィードバックについて考察します。

1.フィードバックとは

フィードバックの基本プロセスは、以下のようなものです。

  • 相手がとった言動を、事実としてそのまま伝える
  • その言動が周囲に与えた影響を伝える

このように、見たままを鏡のように映し出すことが、本来のフィードバックです。

例えば、顧客へのプレゼンテーションに課題のある若手社員がいたとします。

熱意のあまり、いつも大量の資料を作り、プレゼンの場面で説明一辺倒になってしまいがちで、質疑応答の時間や、話し合う時間がとれていない。

ありがちなのは、

「資料作成を頑張るのはいいんだけど、説明に時間がかかり過ぎている。

もう少し資料はコンパクトにして、質疑応答の時間をとったほうがいいよ。」

といった、助言、指摘、評価が入り混じったコメントです。

素直に助言を受け入れることができる若手であれば特に問題になりませんが、資料作成を否定されたという気持ちを持つ若手も出てきます。

また、フィードバックすべき対象は、若手社員とは限らず、自分より年配の社員が対象となることもあります。そのようなときに、評価や指摘で対応すべきかといった問題があります。

フィードバックでは、

「今回準備した資料は50ページあり、資料の説明には1時間かかりましたね。

結果的に、質疑応答の時間がとれずに、お客様の反応、疑問を把握することができませんでした。」

となり、事実とそれが与えた影響を伝えることになります。良かった、悪かったの評価や改善点の検討は、フィードバックをされた側に考える余地が残された形になります。

もちろん、このフィードバックは不十分で、典型的な間違いを犯しています。

 

2.フィードバックの注意点

先のフィードバックでは、「質疑応答の時間がとれなかった」という改善点にしか焦点が当たっていないため、「焦点の当て方」に主観が入っていることになります。

結局のところ、客観的ではなく、本質的なフィードバックの役割を果たしていません。

このように、どこかに恣意的な部分があれば、それは評価や指摘の性質を帯びることになりますから、フィードバックには注意が必要で、それは事実の全体を映し出すことです。

その点に注意したフィードバックは以下のようになります。

「今回準備した資料は50ページありました。

頂いた与件を共有する部分について15ページ割かれており、前回面談で得た情報が網羅されている。

お客様も安心されたようで、笑顔で頷きながら説明を聞いておられた。

資料の説明には1時間かかりましたね。

結果的に、質疑応答の時間がとれずに、お客様の疑問や追加の要望を把握することができませんでした。」

恣意性を排除するのであれば、時間だけに焦点を当てるのではなく、資料の内容にも焦点を当てなければなりません。

結果的に、フィードバックを通じて、良い点、改善点の両面について考える機会を提供することができます。

「褒めてから、指摘しよう」は間違いではありませんが、助言を受け入れさせたいという意図があるため、その意図に気づいた相手に対して効果的ではない場合があります。

大切なのは、「全体をフィードバック」することです。

しかし、このフィードバックでは客観的であろうとするあまり、どこかドライな印象が否めません。

そこで、客観性、全体感の2点に十分留意した上で、あえて感情をプラスするやり方もあります。

 

3.客観的事実に、自分の主観をのせる

自分の感情を入れるといっても、評価や指摘をしたのでは、フィードバックの良さが失われます。

主観をのせる場合は、客観的事実を伝えた後、「その言動によって、自分が受けた影響」を伝えることで、メッセージ性を高めます。

主語が「私」であるため、Iメッセージと呼ばれています。

Iメッセージを加えると、以下のようなフィードバックになります。

「今回準備した資料は50ページありました。

頂いた与件を共有する部分について15ページ割かれており、前回面談で得た情報が網羅されている。

お客様も安心されたようで、笑顔で頷きながら説明を聞いておられた。

資料作成はとても工夫してくれているので、私も安心して任せることができるなと感じています。

資料の説明には1時間かかりましたね。

結果的に、質疑応答の時間がとれずに、お客様の疑問や追加の要望を把握することができませんでした。

折角、良い資料を作ってくれたのに、時間ぎれになってしまい、少し残念だなと感じました。」

 

4.まとめ

フィードバックのポイントは以下のようになります。

  • 相手がとった言動を、事実としてそのまま伝える
  • 事実の全体に焦点を当てる
  • その言動が周囲に与えた影響を伝える
  • ときには、その言動によって自分が受けた影響も伝える

常に全体をフィードバックすることは時間がかかるため、ある程度焦点を絞ってフィードバックすることが必要とされる場面もありますし、人材育成をする上では、評価や助言は必要不可欠です。

しかし、毎日が主観のオンパレートでは暑苦しい。逆に、常に客観的な意見しか言わないのは、どこかよそよそしい。

主観と客観を「意図的に」織り交ぜながら、バランス感覚を持って人材に相対していく。それが人材育成の「妙」ではないかと思うのです。

 
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/wataru.nakagawa.18(フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)

 

この記事を書いた人
中川 渉
株式会社PIS(ピース) 代表取締役。石川県金沢市生まれ。大阪大学工学部を卒業。㈱日本エルシーエーに入社し、住宅不動産のコンサルタント、研修事業の事業部長、執行役員を務める。㈱SPRIXに転職し、ヒューマンリソース部長、コンテンツ開発部長、新規事業室長を務める。2013年に株式会社PISを設立し、管理職研修を中心に年間150~200回の研修講師を担当する。
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