「できることからコツコツやる」とは、目の前の退屈な仕事を漫然とこなすこととは全く異なる。

だれしも新人の時先輩から「できることからコツコツやれよ」というアドバイスを受けたことがあるだろう。私も同じように言われた記憶がある。

しかしこの「できることからコツコツ」は誤解を招きやすい表現ではないか、という危惧を最近感じている。

なぜなら、仕事を初めて間もない方に「コツコツやれよ」というと

「結果が出るかどうかわからない、しかもつまらないことに、貴重な時間を使えません。」

と反発をされることがあるからだ。私も同様に、新人の時

「なんか、期待されていないみたいで嫌だな」
「もっと大きな成果の出る仕事をやってみたいな」

と思い、「コツコツやるのは性に合いません」と言いたかった記憶がある。

だが、結論から言えばこれは完全に的はずれな考えである。「できることからコツコツやる」とは、目の前の退屈な仕事を漫然とこなすこととは全く異なるからだ。

例えばある会社の営業部を想像して欲しい。

ここに二人の新人がいる。AさんとBさんとしておこう。二人は入社時期も同じ、今までやってきた仕事も同じだ。

唯一異なるのは、Aさんは「目の前の仕事をコツコツやる」タイプなのに対して、Bさんは「目の前の仕事を漫然とこなす」タイプだということだ。

さて、彼らは上司からアウトバウンドマーケティング、要するにテレアポをするように命令された。AさんもBさんも気乗りはしない。

「テレアポってどうやってやるんだ」
「緊張する」
「嫌なことを言われるのが怖い」

そんなふうに考えている。

だが、Aさんは「とにかく結果が出るまでコツコツやろう」と決心して、テレアポを始めた。Bさんも同じように、「命令だから、とにかくこなそう」と思い、テレアポを始めた。

初日、Aさんはテレアポを目標の100件行い、1件のアポイントを取った。一方でBさんも目標の100件をこなす。BさんはAさんより電話がうまく、結果的に2件のアポイントを取ることができた。

AさんもBさんもアポイントが取れてはいるが、目標のアポイント率は電話件数に対して5%、まだまだふたりとも改善の余地はある。

2日目、Aさんの結果は0件、Bさんは1件のアポイントを取った。

3日目、Aさんは1件、Bさんも1件のアポイント。

そして1週間後、Aさんは2件のアポイントを取った。Bさんも2件、彼らは頑張っていたが、目立った成果は上がっていない。AさんもBさんも必死になって頑張っている。

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そして1ヶ月後、彼らは毎日テレアポをやっていた。結果を見ると、Aさんは3件獲得する日がポツポツ出てきている。Bさんは変わらず、1〜2件が続く。

彼らのやり方を見ると、Aさん、Bさんそれぞれに特徴がある。

Aさんは、顧客の反応によって幾つかのシナリオを用意し、それぞれのシナリオによるアポ率の目標値を定めている。また、電話をする時間帯も決まっており、毎日決まった時間に、決まった件数を必ず遂行する。さらに、テレアポの記録を綿密に取っており、後でその記録とシナリオを照合し、シナリオを1週間に1回、書き換えている。

Bさんはなかなか気分が乗らないのか、電話をする時間帯にはばらつきがあり、時には夕方に客先から返ってきた後、慌てて電話をかけている。また、電話の記録はつけているが、目標値やシナリオは持っておらず「なんとなく自分が良いと思った方法」で電話をかけ続けている。

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そして3ヶ月後、彼らはまだテレアポを続けていた。

驚くべきことに、Aさんは、たった20件の電話で2件のアポイントを取るようになった。

彼に聞くと、「この時間帯なら、このシナリオで、このターゲットに電話すればかなりアポが取れます」という。一日のアポ件数のノルマを達成したAさんは、悠々と別の仕事をするようになり、商談の質も上がった。

Bさんはというと、相変わらず100件の電話をかけている。そして結果も変わらず日に1件〜2件と言った具合だ。Bさんはやる時とやらない時にムラがあり、結果として電話の件数そのものを稼いでも、アポは増えていない。

そして、Aさんは、それからちょうど2ヶ月後、全社でNo1の成績を上げ、社長から表彰を受けた。

「秘訣は?」と周りの人に聞かれると、彼は「いやー、愚直に頑張っただけですよ」という。

周りの人たちは、「確かにAさんは、コツコツ頑張っていたからな」と納得した。

そして、同時に「なぜBさんも毎日頑張っているのに、成果が上がらないのか」と不思議に思ったのだった。

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だが、我々は知っている。AさんとBさんの結果に差が出たのは、必然であると。

つまり、「できることからコツコツやる」は、「最初はできなかったことを、ひたすら改善を続けることでできるようにしてしまう」行為のことである。漫然と続けることは、コツコツ頑張っていることにはならない。

Aさんを目指すか、Bさんにとどまるか。どちらを選ぶも、それほど労力は変わらないが、結果は大きくちがうのだ。

今でも会社には「できることからコツコツやれ」と指導する先輩社員が数多くいる。

しかし、上の話からすればこれは舌足らずである。おそらく言い方としては、

「つまらない仕事と思うかもしれないが、「成果の出し方」の訓練ができる仕事だ。改善を続けて目標達成を追求しなさい」

と言う方が遥かに良いだろう。そうすれば、

「結果が出るかどうかわからない、しかもつまらないことに、貴重な時間を使えません。」

と言われることはないだろう。

 

この記事を書いた人
安達裕哉
経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。世界4大会計事務所の1つである、Deloitteに入社し、12年間経営コンサルティングに従事する。1000社以上の大企業、中小企業にIT・人事のアドバイザリーサービスを提供し、8000人以上のビジネスパーソンに会う。自身の運営するブログ「Books&Apps」は月間PV数180万以上。
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