目標管理のNGワード

資本主義に生きる、私たち経営者の仕事は、今より良い状態を作り上げることだ。

  • 今より効率よく商品を作り、コストを下げる。
  • 今よりサービス品質をあげて、顧客満足度を上げる。
  • 今より売上、利益をあげて、社員の給料を上げる。

では、今より良い状態とは、どのような状態なのか。この状態を、わかりやすく表現したものを目標と呼ぶ。

マネジメント、人事制度を考える上で、避けて通れない言葉だ。

  • コストを今より●●円下げよう。
  • 顧客満足度を今より●点上げよう。
  • 利益を今より●●円上げよう。

利益を1,000万円増やすより、1億円増やすほうが大変なので、よりよい計画、より多くの努力が必要になる。つまり、目標によって、私たちの日々の行動は変わってくるはずだ。

1億円の利益目標に対して、実績が9,500万円なら、もうほんのひと頑張り、ひと工夫すれば目標に到達できそうだ。実績が1,000万円なら根本的にやり方を変える必要があるだろう。

このように、定量的に表現された目標であれば、計画を立てることができるし、終わったあとに具体的な振り返りができる。それゆえ、「目標は定量的に表現しよう」と研修でお伝えすることになる。

改善の祖、ウィリアム・エドワーズ・デミングも、こう言っているではないか。

「測定できないものは改善できない。」

測定できなければ、今より良い状態に導けない、と。私もそう思う。

人事制度のコンサルティングをしていると、必ずぶち当たるのが「上手く目標が設定できない」問題だ。

目標設定できない人たちの言い分は、概ね以下に集約される。

  1. 定量化したいけど、よい指標が思いつかない。(管理系の部門に多い)
  2. 過去のデータがないので、妥当な水準がわからない。(マネジメント経験が浅い人に多い)
  3. 定量化したくない。何でもかんでも数字にすればよいわけではない。(デザイン系、開発系の部門に多い)

何かしら問題があたったとき、解決の筋道はいくつかある。よくあるのは、「答えを教える」「答えの出し方を教える」というもの。

一方で、案外有効なのは「これは間違い」とNGパターンを教えることだ。日本人の性格が影響しているのかもしれないが、正解より、間違いを教えたほうが解決にたどりつきやすいことがよくある。

そんなわけで、クライアントには、目標を立てるとき以下のNGワードを使わないようにお伝えしている。目標を曖昧にするワード群である。

意識する 強化する 最適化する 調整する 深める
改善する 検証する 探る 努める 見直す
拡大する 検討する 推進する 徹底する 目指す
確立する 構築する 高める 展開する 養う
共有する 試みる 対応する 図る 連携する
円滑に 機敏に 柔軟に 戦略的に 定期的に
大幅に 継続的に 積極的に 総合的に 徹底的に

一度、社員が提出してきた目標管理シートを添削してみて欲しい。表にあるようなワードを使った目標は、曖昧であることが多いはずだ。

これらのワードは、ニュアンスを伝えるには便利なワードだが、便利な反面、具体性に欠ける。

こうしたNG集を使ったマニュアルは、他分野では結構ある。安全マニュアル、品質マニュアルなどが該当する。マニュアルを読めば、「こうせよ」という指示以外にも「これはするな」と書いてある。

御社で目標管理マニュアルを作成する際に、NGワードも掲載してみてはどうか。