褒め方の極意

社員を褒めて、モチベーションを上げる。

社員を「褒めること」は管理職の仕事に含まれるのか。この点については賛否両論があり、褒めることを潔しとしない管理職は結構いる。

いろいろな意見があってよいのだが、クライアントを20年も観察していると、業績を順調に伸ばしている経営者には、優れたモチベーターが多いと感じる。

経営者の義務ではないかもしれないが、できたほうが経営にプラスになるんだろう。

そこで本記事では、私が見てきた優秀なモチベーターたちの「褒め方の極意」をこそっと紹介してみたい。

1.褒めて欲しいところを、褒める。

優秀なモチベーターは、何となく目についたことを褒めてみる、みたいな下手なことはしない。

褒めれたときに、こんな感想を持ったことはないだろうか。

「見て欲しいところはそこじゃないんだよなー。否定するのもあれなんで、まぁいっか。」

褒めてもらっているんだけど、ピントがズレているので、何だか素直に喜べない。

これではモチベーション向上にならないので、優秀なモチベーターは、社員が一番褒めて欲しいところ、ど真ん中を最初から狙って褒める。

これが効く。

褒めて欲しいところの引き出し方はシンプルで、社員の苦労話をじっくり聞く。普段無口な社員でも苦労話ならよくしゃべる。みんな苦労話は聞いて欲しいのだ。

質問をしながら、その社員が「何を一番頑張ったのか」、「自分なりに成長を感じているのはどこか」などを引き出していく。そして、それを褒める。

褒め方というと、どうしてもHowに目がいきがちだが、何を褒めるか、Whatに焦点を当てるのも大切だ。

2.周囲が受けている影響を伝え、褒める。

優秀なモチベーターは、簡単に否定されるような褒め方をしない。

社員の良かった点をそのまま褒めるのではなく、その社員の言動が周囲に良い影響を与えていることを伝え、褒める。

「●●なところがすごいですよね。」と褒められて、少しこそばゆく感じたことはないだろうか。ときには、「いやいや、そんなに大したことないんだけど。」と、褒められたことがスッと心に入ってこないこともあるでは。

腑に落ちない理由は簡単で、他者からの評価と、自己評価が一致していないからだ。評価が一致しなくても、嫌な気はしないだろうが、嬉しさは半減するに違いない。

褒め方としては「(あなたが)新しいことを貪欲に学ぶ姿を見て、周囲の若手も学ぶ習慣がついてきた。」のように、その社員が周囲に与えているプラスの影響を伝える。

「(あなたが)お客様に誠実に向き合うところ見て、同僚の■■さんがすごく勉強になると言っていたよ。」のように、周囲の発言を伝えるのもよいだろう。(内輪では三角ホメと呼んでいる)

周囲が勝手に影響されていることなので、本人には否定のしようがない。

ポジティブな影響について伝えるので、影響された人たちも同時に褒めていくことになり(先の例では、若手が学ぶ習慣をつけたこと)、一石二鳥な褒め方だ。

3.何を褒めるつもりか、予告してから褒める。

褒めるのが下手な人の言い分に多いのが、「そもそも褒めるポイントが見つからない」や、「それぐらいのことで褒めたら、そこで満足してしまうのではないか?」といったものだ。

確かに、目を凝らしても、社員の成長した点や改善した点が見えてこないことがある。

しかし、優秀なモチベーターなら、褒められないことを部下のせいにはしない。いつだって、優秀な人間は自分に矢印が向いている。

褒めるポイントがなければ、自分で作ってしまう。

「ちょっとぐらいじゃ褒められない」と言うのであれば、何をしたら褒めるのか、こちらが明確にすればよいのだ。

「来週のミーティングで、●●について確認するからね。1週間で■■の状態までもっていってね。」

「■■までもっていけたら、すごくいいよ。でも▲▲の状態で終わってしまったら厳しいからね。」

このように予告しておき、次のミーティング時にできていたら褒める。

「予告して褒める」の一種は、言わずとしれた目標設定と達成だ。目標を立てて、達成したら褒める。目標というと少しハードルが高く感じてしまうこともある。そのようなときは、小さな行動を計画して、できたら褒めていくのだ。

 

以上、優秀なモチベーターの褒め方を紹介してきた。

ご紹介した、優秀なモチベーターである経営者たちは、現在も取引があるので定期的にお会いしている。

私自身、この経営者たちとのミーティングが楽しみで仕方ないのだから、社員たちもきっと楽しいにちがいないと思うのだ。

是非、「褒め方の極意」を実践してみて欲しい。