年間休日日数と有給休暇取得率の動向|中小企業が取るべき施策と改善事例

年間休日日数と有給休暇取得率の動向|中小企業が取るべき施策と改善事例

少子高齢化や人材不足の影響で、働きやすい職場環境の整備は中小企業にとって重要な課題となっています。

こうした背景を受け、2019年には「働き方改革関連法」が施行され、企業には年5日の有給休暇取得が義務付けられました。

違反した場合は、労働基準監督署からの是正指導や従業員1人当たり30万円以下の罰金が科される可能性もあります。

有給休暇や休日数の充実は、いまや「採用力」と「定着率」に直結するテーマです。

マイナビが実施した「転職動向調査2025年版」でも、転職理由の上位に「休日や残業時間などの待遇への不満」が挙がり、転職先を選ぶ基準としても、給与・勤務地に次いで「休日や残業時間が適性範囲内で生活にゆとりができるか」が重視されています。

本記事では、こうした社会的背景と求職者ニーズをふまえ、中小企業が自社の休暇制度を見直すために必要な知識、最新データや改善事例をご紹介します。

自社の現状を客観的に把握し、今後の施策を検討するきっかけとしてご活用ください。

1.年間休日日数とは?定義と実務上の考え方

年間休日日数とは法定休日と法定外休日を合計した日数を指します。

年間休日日数=法定休日+法定外休日
法定休日は、労働基準法により「毎週少なくとも1日、または4週で4日以上」の付与が義務付けられており、年換算では約52日となります。一方、法定外休日の付与日数は任意です。

そのため、この定義だけみると「年間休日日数の最低ラインは52日」と理解されることもありますが、実務上は所定労働時間との関係も踏まえる必要があり誤りです

企業には、「1日8時間・週40時間以内」という法定労働時間の上限があり、約98%の企業が所定労働時間を1日7~8時間に設定しています。

この所定労働時間を前提とすると、週40時間を超えないためには仮に1日7時間労働の場合、年間で67日程度の休日が必要となります。

これは、法定休日の52日を大きく上回ります。

  • 年間休日日数の最低ライン≠法定休日を基にした日数(52日)
  • 年間休日日数の最低ライン=所定労働時間と法定労働時間の上限を基に計算した日数

実務では、所定労働時間を基に年間休日日数の最低ラインを算出し、それを満たす形で法定外休日を設計することが重要です。

年間休日日数はどのように決まるのか?

例えば、下表のように1日の所定労働時間を「1日8時間、週40時間」とした場合、年間労働時間の上限は2085.71時間となります。

これを所定労働時間の8時間で割ると、年間労働日数の上限は260日です。

365日から260日を引くと105日になることから、所定労働時間が8時間の場合、年間休日日数の最低基準は「105日」になります。

8時間を所定労働時間にしている企業も多いことから「105日」は年間休日日数の一般的な目安として多く用いられています。

1日の所定労働時間が8時間の場合計算式
1年の週数は約52週365 ÷ 7 ≒ 52.14週
年間労働時間数の計算上の上限は2085.71時間(365 ÷ 7) × 40 ≒ 2085.71時間
年間労働日数の上限は260日2085.71 ÷ 8 ≒ 260日
年間休日日数の最低ラインは105日365 − 260 = 105日


もし、所定労働時間が7時間で、変形労働時間制を採用していれば、年間労働日数の上限は298日となり、年間休日日数の最低基準は67日になります。

1日の所定労働時間が7時間の場合計算式
1年の週数は約52週365 ÷ 7 ≒ 52.14週
年間労働時間数の計算上の上限は2085.71時間(365 ÷ 7) × 40 ≒ 2085.71時間
年間労働日数の上限は298日2085.71 ÷ 7 ≒ 298日
年間休日日数の最低ラインは67日365 − 298 = 67日


つまり、就業時間の設定や勤務形態によって年間休日の最低基準は変わり、年間休日日数が105日未満になる場合もあります。

年間休日数ごとの働き方の違い

求人票などに記載される年間休日の日数だけでは、実際の勤務スケジュールを具体的に把握するのは難しいかもしれません。

そのため、下記の表で代表的な年間休日日数(105日、110日、120日、125日)について、一般的に想定される働き方のパターンを例示しました。

年間休日数想定される勤務形態の例休日の内訳
105日週休二日制(隔週土曜出勤)+祝日・年末年始など一部休み78日(週休1.5日×52週)+祝日・長期休暇など
110日完全週休二日制(毎週土日休み)+祝日一部出勤または長期休暇の圧縮土日休み104日+祝日・長期休暇から一部を調整
120日完全週休二日制+祝日休み土日104日+祝日16日前後
125日完全週休二日制+祝日休み+長期休暇土日104日+祝日16日前後+長期休暇5日以上

年間休日に含まれるもの・含まれないもの

よくある誤解として、「年次有給休暇も年間休日日数に含まれるのでは?」という点があります。しかし、年次有給休暇は年間休日日数には含まれません。

休日とは企業が労働義務を課さない日であり、就業カレンダー上で前もって決まっています。

一方で、休暇とは労働義務がある日を、申請によって労働義務を免除した日を指します。

そのため、年末年始休暇や夏季休暇は、「会社全体の休日」としてカレンダーに組み込まれていれば、「年間休日」に含みます。

年次有給休暇や産前・産後休暇、育児休暇、介護休暇、慶弔休暇などは個別の事情で申請を行って取得するものであるため、年間休日数には含みません。

2.有給休暇取得率とは?計算方法を解説

有給休暇取得率とは、企業が付与した年次有給休暇のうち、実際に従業員が取得した割合を示す指標です。政府は、2025年までに取得率を70%まで引き上げることを目標としています。

計算式は「全雇用者の有給休暇取得日数計÷全雇用者の有給付与日数計×100」で求められます。前年度からの繰り越し分は、付与日数には含めず、取得日数には含めて計算します。

有給休暇取得率=全雇用者の有給休暇取得日数計÷全雇用者の有給付与日数計×100

社員5人の企業の有給休暇取得率の例を挙げています。今年度の付与日数合計が64日、今年度の取得日数合計が47日だった場合、47÷58×100=81.0%がこの企業の有給休暇取得率になります。

3.年間休日日数と有休取得率の傾向

年間休日日数に関する最近の動向(2024年調査)

厚生労働省の「令和6年就労条件総合調査」によると、企業平均の年間休日日数は112.1日で、労働者平均は116.4日でした。企業規模別では、

  • 30~90人規模:111日
  • 100~299人規模:113.6日
  • 300~999人規模:115.9日
  • 1000人以上:117.1日

と、中小企業であっても、110日を超える企業が多数派です。また、企業規模が大きい程、年間休日日数も増える傾向にあります。

年間休日日数では、「120~129日」の企業が最も多く35.8%、「100~109日」が28.4%、「110~119日」が22%となっており、週休二日制が全体として定着しつつあることがうかがえます。

なお、30~99人規模の中小企業でも、「100日以上」が85%であり、「120~129日」が33.2%に達しています。

企業規模に関わらず、110日以上の企業が半数を超えている中で、109日以下の企業はむしろ少数派になりつつあるといえるでしょう。

「2024年 企業規模別 年間休日日数の比較表。従業員数ごとに69日以下から130日以上までの休日数分布を示し、年間休日の平均日数(全企業平均112.1日)も記載。従業員1,000人以上の企業は年間休日120日以上が多数を占め、中小企業との違いが明確にわかる。出典:厚生労働省 令和6年就労条件総合調査。」

有給休暇取得率に関する最近の動向(2024年調査)

全企業平均の取得率は65.3%で、企業規模別では次のとおりです。

  • 30~90人規模:63.7%
  • 100~299人規模:62.8%
  • 300~999人規模:66.6%
  • 1000人以上:67%

30~99人規模の方が100~299人規模と比べてやや高いのは、少人数だからこそ柔軟な対応がしやすいことや、取得状況が管理しやすいといった側面があるかもしれません。

30~99人規模では計画的付与制度がある企業が、ない企業に比べて2.8ポイント取得率が高いという結果が出ています。

ただ、全体としては、どちらも65%を超えており、制度の有無によって取得率に大きな差は見られません。

「2024年の企業規模別有給休暇取得率の比較表。従業員数別に、有給休暇の計画的付与制度の有無ごとの取得率を示す。全体平均は65.3%で、1,000人以上の大企業が67%と最も高く、100〜299人規模の企業では62.8%と低い傾向。出典は厚生労働省『令和6年就労条件総合調査』。」

年間休日日数に関する年次推移の傾向

過去20年間で、企業の年間休日は全体的に増加傾向にあります。

2004年には1企業当たりの平均年間休日日数は104.7日でしたが、2024年には112.1日と約8日増加しました

特に年間休日が「120~129日」の企業は、2004年の23.8%から2024年には35.8%へ大幅に増加しています。

一方で「100~109日」は2004年の29.1%から28.4%にやや減少し、「90~99日」以下の企業も着実に減少しています。

このことから、企業規模に関わらず年間休日の底上げが進んでいることがわかります。

「年間休日数の年次推移(2004年~2024年)の統計表。企業規模全体における休日数分布の変化を、69日以下から130日以上までの区分で表示。2024年には年間休日120~129日の企業が35.8%で最多。1企業あたりの平均年間休日は112.1日、労働者1人あたりでは116.4日と過去最高水準。出典は厚生労働省『就労条件総合調査』。」

1000人以上の企業

2004年時点ですでに「120~129日」が54.1%と半数を超えています。

また、100日以上の休日がある企業の割合がいずれの年も94%以上であることから、週休二日制が一般的であり、祝日休みや夏季休暇などがある企業が標準になっています。

「年間休日数の年次推移(2004年〜2024年、大企業・従業員1,000人以上対象)。年間休日数を69日以下〜130日以上の範囲で分類し、割合の変化を示す。2024年時点で最も多いのは120〜129日(51.7%)、次いで110〜119日(27.6%)。企業平均年間休日は117.1日、労働者1人あたりでは119.4日で過去最高水準。出典は厚生労働省『就労条件総合調査』。」

300~999人規模の企業

「120~129日」が最も多くを占めており、次いで「110~1119日」が増加傾向にあります。

99日以下の企業は2004年の11.4%から2024年には4%に減少し、休日日数の底上げが進んでいることがわかります。

「年間休日数の年次推移(従業員300〜999人規模の企業、2004年〜2024年)。年間休日数を69日以下から130日以上まで区分し、各年の割合と平均休日数を表示。2024年は『120〜129日』の企業が44.9%と最多で、平均年間休日数は1企業あたり115.9日、1人あたり117.4日。出典:厚生労働省『就労条件総合調査』。」

100~299人規模の企業

「120~129日」が最多である点は変わりませんが、割合は3割~4割程度と、より大規模な企業と比べるとやや低めです。

ただし、「110~119日」の企業が増加しており、「100~109日」との差は2004年の11ポイントから2024年には4.8ポイントに縮まっています。

99日以下の企業も22.5%から7%へ大きく減少しており、今後も休日数の増加が期待されます。

このことから、週休一日制から週休二日制へ移行し、さらに祝日休みや夏季休暇、年末年始休暇などを拡充させようと取り組む企業が増えていることが推察されます。

「年間休日数の年次推移(100〜299人規模の中小企業、2004年〜2024年)。年間休日数を69日以下〜130日以上の区分で示し、各年の割合と平均休日数を掲載。2024年は『120〜129日』が39.3%で最多。企業平均休日数は113.6日、労働者1人あたりでは114.7日。出典は厚生労働省『就労条件総合調査』。」

30~99人規模の企業

2023年までは「100~109日」が最多でしたが、2024年には「120~129日」がそれを上回りました。

一方で、99日以下の企業が15%存在しており、週休1日が継続されている企業も一定数見られます。労働環境整備や働き方の多様化が今後の課題といえるでしょう。

「年間休日数の年次推移(30〜99人規模の小規模企業、2004年〜2024年)。年間休日を69日以下〜130日以上の範囲で分類し、各年の分布と平均休日数を表示。2024年は『120〜129日』の割合が33.2%で最多。企業平均休日は111.0日、労働者1人あたりでは112.2日。出典:厚生労働省『就労条件総合調査』。」

有給休暇取得率に関する年次推移の傾向

企業規模を問わず、有給休暇取得率は長期的に上昇しています。

2004年には全体平均で47.4%と半数を下回り、2018年は51.1%と14年間での成長率は3.7ポイントでした。

2019年の「年5日の取得義務化」以降、企業の取り組みが加速し、2020年には56.3%と前年から3.9ポイントも上昇。2024年には65.3%に到達しました。

1000人以上規模・300~999人規模の企業

大企業では取得率が高く、2024年時点で1000人以上の企業は67.0%、300~999人規模では66.6%と、2年連続で60%後半を維持しています。

100~299人規模の企業

取得率は62.8%と全体平均よりやや低いものの、着実に向上しています。

2014時点では44.9%だった取得率が、10年で17.9ポイント改善しており、制度整備などの取り組みの効果が表れています。

30~99人規模の企業

2024年の取得率は63.7%と100~299人規模の企業よりもやや高めです。2014年の42.2%から10年間で21.5ポイント上昇しています。

「企業規模別の有給休暇取得率の年次推移グラフ(2004年〜2024年)。従業員規模ごとに、30〜99人、100〜299人、300〜999人、1,000人以上、および全体平均の取得率を折れ線グラフで比較。全体的に上昇傾向がみられ、特に2020年以降の伸びが顕著。2024年には1,000人以上の企業が最も高い取得率を示す。出典:厚生労働省『就労条件総合調査』。」

「企業規模別の有給休暇取得率の年次推移表(2004年〜2024年)。全体平均および、1,000人以上、300〜999人、100〜299人、30〜99人の企業規模ごとの取得率を比較。2024年時点で全体平均は65.3%、1,000人以上では67.0%、30〜99人規模でも63.7%と上昇傾向。出典:厚生労働省『就労条件総合調査』。」

計画的付与制度の普及状況

年5日取得義務化とともに注目された「計画的付与制度」の導入率も変化しています。

2019年時点では22.2%だった導入率が、2020年には43.2%に上昇。2021年に46.2%でピークを迎えた後はやや減少し、2024年には40.1%となっています。

導入により取得が促進される一方で、制度があることで、付与日数以上の取得を控える場合もあります。

制度設計や運用面での問題から、一度導入した後に取りやめた企業もいることが統計からもわかります。

「企業規模別・年次有給休暇の計画的付与制度を導入している企業の割合推移(2004年〜2024年)。企業規模別に1,000人以上、300〜999人、100〜299人、30〜99人に分類し、それぞれの制度導入割合を表示。2024年の導入率は全体で40.1%、1,000人以上は42.6%、30〜99人企業では40.3%。2020年以降は全体的に導入率が急上昇している。出典:厚生労働省『就労条件総合調査』。」

年間休日日数に関する産業別の傾向

産業ごとに年間休日日数や有給休暇取得率に大きな差があることも注目すべき点です。

例えば、「学術研究、専門・技術サービス業」、「情報通信業」では、年間休日が「120~129日」の企業が7割を超えています。

一方で、「宿泊業・飲食サービス業」ではその割合がわずか3.5%にとどまっており、産業間で明らかな差があります。

これは、営業日数が多く定休日が少ないこと、営業時間が長く交代勤務が必要であることなど、業務特性に起因しています。

「小売業」や「生活関連サービス業・娯楽業」なども同様の理由から休日数が少ない傾向です。

「運輸業・郵便業」についても、社会インフラとして年中無休の体制が基本であること、繁閑の季節変動が大きく慢性的な人手不足により休暇が取りづらいといった要因が影響しています。

これらの産業では、交代制・シフト制勤務が一般的で、全社一斉の休日が設けにくい傾向があります。

「2024年の産業別年間休日日数の比較表。製造業、建設業、情報通信業、医療・福祉、運輸業、金融業、サービス業など各業種ごとに、年間休日数の分布と平均休日数を掲載。年間休日が最も多いのは『情報通信業』で平均122.3日、最も少ないのは『運輸業・郵便業』の103.5日。業種による休日日数の差が明確に表れている。出典:厚生労働省『令和6年就労条件総合調査』。」

有給休暇取得率に関する産業別の傾向

有給休暇の取得率も同様で、全産業平均が65.3%であるのに対し、「宿泊業・飲食サービス業」は51%と低い水準にとどまっています。

一般的には企業規模が大きいほど取得率が高い傾向にありますが、産業によってはこの傾向が当てはまらない場合もあります。

例えば、「宿泊業・飲食サービス業」「教育・学習支援業」「医療・福祉」などでは、1000人以上の企業よりも、30~99人規模の企業の方が高い取得率である場合もあります。

これは、産業の特性や現場でのマネジメントの違い、組織風土などの影響を受けていると考えられます。

このように、有給休暇の取得率は単に企業の規模だけでなく、産業や職場体制、業務形態によって大きく左右されることを理解する必要があります。

「2024年の企業規模別・産業別有給休暇取得率の比較表。業種ごとの平均取得率と、従業員規模(1,000人以上、300〜999人、100〜299人、30〜99人)ごとの取得率を表示。最も高い取得率は『素材関連業(72.4%)』、最も低いのは『複合サービス事業(55.0%)』。小規模企業ほど取得率が低い傾向も見られる。出典:厚生労働省『令和6年就労条件総合調査』。」

4.改善のための施策と事例

年間休日日数や有給休暇取得率は、働きやすい職場づくりを進めるうえで、非常に重要な指標です。

特に年間休日が少ない建設業や小売業、宿泊業などでは、「年間110日以上」を目標に設定することで、採用力の強化や応募率の向上につながります。

また、有給休暇取得率が70%を超える水準であれば、求職者にとって魅力的に映り、社員の定着率向上にも効果が期待できます。

ただし、人員体制の制約や業務の属人化、業務量の多さといった現実的なハードルにより、「増やしたいが増やせない」、「取らせたいが難しい」といった悩みを抱える企業も多いでしょう。

このような課題に対応するためには、制度の整備と並行して、業務の効率化やマネジメント体制の見直し、組織風土の改革など総合的なアプローチが求められます。

以下では、年間休日日数と有給休暇取得率の改善に向けて実際に成果を上げた企業事例と取り組みのポイントを紹介します。

年間休日日数を増やす4つの施策

①一斉休日の拡大
会社全体での夏季休暇や年末年始休暇など、計画的な休業日を増やす方法です。

スーパーや百貨店でも年始の1月1日〜3日を休業とする動きが広がっています。急激に増やさず、段階的に導入することで業績や現場への影響を抑えながら中長期的に年間休日日数を増やすことができます。

石川県の上田運輸(運輸業)では、2022年度の年間休日111日から、2024年度には115日へと段階的に増やしています。

②固定休(休館日)の導入
毎週の店休日や休館日を設定する方法です。

長野県のあぶらや燈千(宿泊業・飲食サービス業)では毎週水・木曜日を休館日とすることで、年間休日を105日まで増加しました。

休館日を設定することで、社員がプライベートの予定を立てやすくなっただけでなく、土曜日などの繁忙日に人員を集中させる運営も可能になりました。

③週休3日の導入
月に1~2回、週休三日制を導入する方法です。

神奈川県の建新(建設業)では、月2回の週休三日制により年間休日を132日へと拡大しました。

愛媛県のサカワ(製造業)でも、繁忙期を除き月1回の週休三日制を導入し、休日数を135日まで増やしています。

「繁忙期を除く」、「社員を2チームに分けて会社全体は休業しない」、「業績が悪化したり有給消化率が落ちたりしたら中止する」といった条件を付けることで、経営や現場の不安にも対応しています。

④変形労働時間制の導入
年単位や月単位の変形労働時間制を活用することで、繁閑に応じた休日配分が可能になります。

京都府の綿善(宿泊業)では、年単位の変形労働時間制を導入することで、年間休日日数を83日から105日に増やしました。

公休とあわせて最大14日の連続休暇も取得可能になり、採用や定着に良い影響を与えています。

有給休暇取得率を上げる3つのアプローチ

①組織風土の改善
「周囲が休まないから休みづらい」という空気を払拭するには、経営層や管理職の関わりが不可欠です。

農業機械メーカーで有名なクボタでは、労働組合と社長が連名で取得率100%を呼びかけ、制度の整備も並行して行うことで、2021年に取得率110.5%を達成しました。
ノバレーゼ(ブライダル・飲食サービス業)では、管理職の評価指標に有給休暇取得率を組み込み、達成できなければ賞与を減額する制度を導入しました。

結果、「部下を休ませる」意識が徹底され、2013年度の44.1%から制度導入後の2015年には91%へと大幅に改善しました。

他にも連続休暇を有意義に過ごした場合に表彰する。部門やチームで連続休暇予定表を作って人員調整を行うことや、飛び石連休の合間を「取得促進日」にあて、長期休暇取得を推奨するなどの取り組みも有効です。

②温存志向への対策
突発的な家族の病気や介護に備え、有給休暇を「取らずに残す」傾向がある場合、特別休暇の導入が効果的です。

神奈川県のダッドウェイ(小売業)では家族構成に関係なく取得できる「ファミリーサポート特別休暇」を導入しました。

年次有給休暇を当年度に5日以上取得していることを要件として、最大で年9日が付与され、時間単位で取得が可能です。

冠婚葬祭や誕生日、災害・事故被害の復旧、リフレッシュなど様々な目的で取得することができます。

年次有給休暇を温存しなくても、いざというときに使える特別休暇があることで、有給の活用が進み、取得率は70%を超えています。

有給休暇の積立制度を導入することで、温存傾向の社員の不安を解消している企業もあります。

東京建物(不動産業)では、失効する有給休暇を最大60日まで積み立て、育児や介護、傷病・指定難病治療などを理由とした休暇が必要な際に取得できるようにしています。

リスク対応としての備えを別途確保することで、有給休暇の積極取得が促進されています。

③業務の属人化解消
「自分がいないと業務が止まる」という状況をなくすために、標準化や多能工化が重要です。

茨城県のトレンディ茨城(運送業)では、業務の標準化やICT化を行い、動画でのマニュアル作成や配送ルートの一本化、クラウド型のドライブレコーダー兼運輸日報システムの導入等を行っています。

加えて、インフルエンザによる業務停滞をきっかけに、多能工化も進めました。

その結果、誰かが休んでも他の従業員が代わりを務められる環境が生まれ、2017年は16.4%だった有給休暇取得率が2019年には80.4%まで大幅に向上し、離職者も大幅に減少。採用力の強化にもつながっています。

このように、年間休日と有給休暇の改善には「制度」「運用」「風土」の3つの視点から取り組むことが必要です。

業種や企業規模に応じた工夫を重ねることで、持続可能な働き方が実現できます。

5.まとめ

年間休日日数や有給休暇取得率は、採用活動や人材の定着に直結する指標になっています。

求職者の関心も高く、改善に取り組むことで、企業の魅力を伝える力が格段に向上します。

本記事で紹介してきたように、近年では中小企業を含め、年間休日の水準や有給取得率は着実に改善しています。

一方で、業種や企業規模によってはいまだに週休1日が常態化していたり、有休が取りづらい雰囲気が残っていたりするのも現実です。

休暇制度を改善するには、制度面の見直しだけでなく、現場の声を踏まえた業務改善や、管理職の意識改革、組織風土の改善も欠かせません。

人手不足の中で「休みを増やす」ことに不安を感じる方も多いかもしれませんが、少しずつ改善した企業の事例からも、着実な成果につながっていることが分かります。

まずは自社の現状を客観的に見つめ、どこを目指すのかを共有しましょう。そのうえでどこから改善すべきか、優先順位をつけて取り組むことが重要です。

参考

  • 坂和寿忠(2024)「月1回の週休3日制度を導入し年休135日になった結果社内にどんな反応がおきたか」,<https://www.sakawa.net/blog/202405/7966>,2025年5月28日アクセス